7話
3人一行は冒険者ギルド『ヴェネステラ支部』の前で止まり、話し合っていた。
「そもそも教会のシスターが冒険者ギルドに行って依頼を受けていいのかよ。」
「問題ないわ!六神聖理教会はモンスターの討伐は推奨されてるし、この都市ヴェネステラは教会に手伝うようお願いされてるのよ!」
「聖職者はいつだって人員不足だって冒険者側から聞いてるもんね。」
「じゃあまぁそれはいいわ。んで、」
シデンは2人に圧をかけつつ、特にロードを睨むように言った。
「お前ら戦えんの?」
「問題ないわ!」
「・・・。」
シデンの言葉にロードは俯く。
「僕は・・・。」
「・・・ふん、そんなんじゃとても命預けられねぇな。」
自身無さげなロードと、それに苛立つシデン。二人の間に大きな溝を感じたアリスはキョトンと首を傾げた。
「アンタ達喧嘩でもしたのかしら?」
「─してないよ。大丈夫。」
「喧嘩する土俵にすら上がって来れなかったからな。喧嘩にすらなってねぇよ。」
「ふーん。そういうことね。」
アリスは冒険者ギルドの扉の前にたって2回手を叩いた。
「ちょ、アリス!」
「?」
「喧嘩両成敗だわ!!」
そう告げた途端、両開きの扉が勢いよく開く。
「ようこそこの混沌渦巻くヴェネステラ冒険者支部へ!ギルドはいつでもぉ!誰でもぉ!歓迎よぉー!」
野太い声と共に現れたのは2メートルを超え、筋骨隆々な肉体美を持つ、オカマであった。ロードとシデンは思わず引きつった顔を浮かべ妙な汗を流す。
「ごめん皆!カール様に早く戻ってきてくれって頼まれてたんだ!!」
「お、俺も別の用事思い出したわ!そんじゃな!」
二人は息を合わせるように別々の道へと走って逃げていく。
「それでぇ?ウチの神聖なギルドの前で喧嘩してる悪い子ちゃんはぁ、誰かしらぁ?」
「こんにちはエリナリーゼ様!今日も大変お美しいわ!」
「あらやだありがとう♡そしてこんにちわぁ、今日も元気いっぱいねアリスちゃん♡どうかしたの?」
「あの二人が喧嘩してて困ってるわ!」
「了・解♡」
エリナリーゼは走っていく二人を見比べ、標的をシデンへと定めた。
「レディ、」
体を四足歩行の獣が構えるように深く沈め
「GO」
巨体が飛んだ。
「嘘だろ速───」
「まずは1人ね♡」
「ぶっ」
回り込んだエリナリーゼはシデンをギルドの方へと吹き飛ばす。
「アラ、いい反応するじゃないの。」
シデンはいつかの仕込み刀をエリナリーゼの拳と体の間に滑り込ませていた。そして、その役目を終えたように刀は砕け散る。
「さて、もう一人の可愛い子ちゃんへ、GO!」
こちらを振り向きもせずただ走っていく白髪の少年へとエリナリーゼは飛んでいく。
「アラ」
後ろを振り返らず高速で動くエリナリーゼの軌道上から直角で外れるロード。だが──
「甘いわね坊や!」
空中で空気を蹴るようにして進路をロードへ変えた。
「そんなの有───」
「ふふ、やっぱり見えてるのね。」
「ぃっ───」
ロードも同じく回り込まれギルドの方へ吹き飛ばされていく。ロードがギルド前に着いた瞬間、エリナリーゼも現れる。
「おかえりなさいエリナリーゼ様!」
「ふふ、ただいまアリスちゃん。この子達すっごい優秀ね。将来が楽しみだわ♡」
「フフン、それほどでもあるわ!」
2人をそれぞれ片手で持ち上げ、見比べるように見てから舌なめずりをした。果たしてどちらの意味の将来なのかを聞き出す者は誰も現れず、アリスとエリナリーゼはギルドの中へと入っていった。
「さぁ!悪い子にはお仕置だわ!」
お仕置はまだ、始まっていなかった。




