27話
「アリス、魔力切れた!どうしよう!?」
「グギャギャ!」
魔道具の魔力が尽きた少年はモンスターから逃げ回り、
「でらぁああ!」
「グギヨォアアアア!?」
「へっ、たおした、ぞ──」
群れのボスを倒した少年は剣が折れ、倒れ伏す。
一人は魔道具の魔力を使い果たし、一人は神に縛られて激痛に倒れる。そんな二人を眺め、少女は言った。
「コスパ最悪だわ!」
シリウス・ステラは今───資金不足に陥っていた。
「こちら報酬の25万シルでございます。皆様の健闘をお祈りしております。良い冒険を」
少女は金の入った袋を眺め、目の前のバカ二人に改めて言う。
「コスパ最悪よ!これじゃメリーおば様のパイを毎日買えないわ!アンタ達どうにならないのかしら!」
「つっても、ボスには剣じゃねぇと倒せねぇし」
「僕は魔道具の魔力が尽きてから剣で戦おうとしてもシデンが危なっかしいからやめろって使わせてくれないし」
「隣にいたら目の前の敵に集中出来ねぇんだから仕方ねぇだろ」
「シデンだってまだ取り巻き残ってるのに剣使っちゃってさ。僕達大変だったんだよ?」
「だってお前が───」
「君だって───」
「うるさあああい!!!」
少女は怒りに身を任せ、責任を押し合いつけ始めたバカ共を睨みつける。バカ二人は思わず身をビクつかせた。
「アンタ達分かってるのかしら!?ロードの魔道具の充魔に5万!シデンの毎回ポキポキ折る剣で6万!ポーションの補充とかその他もろもろの雑費で1万!いったいいくら残るのかしらね!」
「13万」
「お前計算早えな」
「─だまりなさあああい!!!」
「「っ」」
((こえぇええ))
少年二人は思った。顔を赤くし、黄金の髪がまさに怒髪天を衝きそうな勢いの少女は、先日の獣より恐ろしいと。
「さっきの討伐依頼C+よ!?ボスも討伐したのに25万は割に合わないわ!」
そう言って机を叩きつけ、少女は言った。
「アンタ達、剣と杖禁止よ!!!」
「何もあそこまで怒らなくてもなぁ?」
「いや、流石にこれはマズいよ」
「ノリ悪りぃな。お、あれ食おうぜ」
広場で歩くシデンは鼻と胃袋を刺激する香ばしい匂いの先へと指差す。
「今さっきアリスに言われたばかりじゃないか。僕たち今金欠。無駄遣いはダメだよ」
「腹の足しにすんなら無駄遣いじゃねぇだろ。ロードも食おうぜ!」
ロードも漂う香ばしい香りに心が揺れ、「もー、しょうがないなー」と満更でもなくシデンの意見に乗っかった。
「おっし決まり!おっちゃん!串焼き10本くれ!」
「多すぎだよ!?」
二人は広場のベンチに座って串焼きを口一杯に頬張る。胡椒が程よく焼け肉汁の旨みと合わさりどちらの頬も溶けていた。
「うんめぇ」
「美味しいねぇ」
「もっと買ってくるか」
「今ので2000シルだよ。これ以上はホントにダメ」
「つっても体がよォ、肉を求めんだよォ」
「だったらもっと稼がないと。装備も新調して、もっと高ランクのクエストやダンジョンに挑める様になればもっと美味しいご飯やいい宿で寝たり出来るよ」
「やっぱ金かァ」
「お金だねぇ」
二人は遠くの空を見る。その先にはこの都市よりも大きな幅の天を突き刺す塔が見えた。「お金のためだけじゃない」とロードは切り出す。
「─僕は、僕の夢のためにも高ランクダンジョンで未知の魔術書とか手に入れたいんだ。もしかしたら魔力がなくなった原因も解決出来て、また魔術を使える様になるかもしれない」
ロードは自分の冒険者手帳を掲げて自分のステータス欄を見る。
─ 筋力:153 知力:622 □□□ 敏捷:123 幸運:102 魅力:91
そこにはもうずっと虫食いみたいに消えた自分にあったはずの『魔力』へ想いを馳せる。
「もうずっとなのか?」
「うん、もう4年くらいかな。ずっと無いんだ、魔力」
「4年前かー、何があったんだ?」
「それがよく思い出せ無いんだよね。神父様に聞いてもよく分からないって」
「神にもわかんねぇのか」
「神様だよ、アリスに怒られるよ?」
「うっせ、俺にこんな忌々しい枷付けた奴らなんざに敬えるか」
「シデンもよく分からないよね。聞いた事ないよ。神様から枷を付けられた人。いつから?」
「7年前だ。神が俺の力を恐れて付けたんだろうよ。人に神が超えられると思ってビビってんだ」
「神様相手に恐れ知らずだね。僕シデンのそういう所凄いと思うけど同時に怖いや」
「お前はビビリすぎなんだ。すっげぇモン持ってんだから自信持てよ」
「何をさ。魔力無いし、今まで頑張って磨き上げたスキルだってもう使えないよ」
「その眼があんだろ」
「─僕の眼、か」
ロードは改めて自分の冒険者手帳を見る。今までそこも虫食いになっていたスキル欄に出た新スキル。
「『天青眼』。今の所はシデンの言う天穴?っていうのが僕に見えてるんだよね」
「人が一生かけ頂に手を伸ばしてようやく見れる光だ。それが見える魔眼なんて聞いた事もねぇ」
「僕も聞いた事無いし、ユニークスキルなのかな」
「ユニークスキル?」
「世界に一つしかないスキルの事だよ。大体の一般的なスキルは神父様の聖書や図書館のスキル辞典に載ってるけど、少なくともスキル辞典には載ってなかったかな」
「へぇ、じゃあ本当に良いモン持ってんじゃん」
「そうだけど、これ魔術に意味あるのかな」
「は?」
「いやだってさ、天穴見えた所で魔術的に意味あるのかなって、僕剣使えないし」
「前ブンブン振り回してたじゃねぇかよ!」
「君が剣使うなって言ったんじゃないか!」
「危なっかしくて見てらんねぇんだよ!」
「それを言うなら君だって魔力を使った剣での擬似魔術は辞めるんだね!構築力は中々のモノだけど、構築速度が遅すぎて一人じゃ使えないし出力する時だって4割ほど魔力をロスしてる!なんて勿体無い!!」
「テメェは剣持っても無理な体の動かし方で簡単に自分で痣を作りやがるじゃねぇか!悪い時には骨も折る!そんな奴に剣なんて振らせられるかよバーカ!!」
「なっ、あ、アホー!」
「バカバカバーカ!」
「アホアホアーホ!」
二人は呼吸する時間すら惜しみ何度も子供の様に罵り合う。息を荒げ、互いに睨み合いながら息を整えた。
「ハァ、決めた。俺がお前に剣を教える。そんでその対価に─」
「僕が君に魔術を教える。丁度僕も同じ事を考えていた所だよ」
「やるからには世界2位の剣士にしてやる。逃げんじゃねぇぞ」
「根を上げても辞めないから。世界2位の魔法使いにしてみせる」




