26話
『──以上が報告となります』
「ご苦労様、追加報酬を出しておくよ。」
『ありがとうございます、では』
「うん、良い冒険を」
報告をまとめた書類に目を通す。よく綺麗にまとまっている書類だった。
「ここ半年で冒険者の失踪が4件。普通のギルドなら違和感無いんだろうけど、ここヴェネステラじゃおかしな話だねぇ」
『妙か?』
「うーん、うん。ウチの職員に限って適正外のランクの冒険者に無茶な依頼は提示しないはずなんだ。ある程度の安全性を確認した上での依頼、だからこそ僕たちは良い冒険を提供できている。それでも死ぬ時は死ぬし、さらなる冒険を求める人達がいる。その人たちの気持ちを尊重するのも僕たちの仕事だ。ただ─」
鋭い金色の目は4枚の書類を睨む。
「─これは冒険じゃ無い。無謀、無茶、予想外の連続。こうも続くと流石に僕の目と耳は誤魔化せない」
『それらの関連性は何だ?』
「4件ともに冒険者の失踪。依頼主はそれぞれ別口。担当したギルド員もそれぞれ別。依頼前後で調査した冒険者もそれぞれ別」
『違和感無い様に思うが?』
「僕が何年この椅子に座り続けてると思ってるんだ。ここヴェネステラじゃ殆ど起きない関連性が一つある。それは─ダンジョン外での失踪だよ」
『それは、妙だ』
「ヴェネステラはダンジョン都市。外部の依頼で稼ぐよりダンジョンの方が実入りはいいんだ。外部の難易度の低い依頼を受けるのはまだ初心者のFからDの冒険者達。そんな彼らが犠牲となった」
金の瞳を瞼の裏に深く隠し、思考を巡らせる。
「失踪の起きた現場へ高ランクの冒険者を向かわせて確認させた。報告はいずれも異変無し。モンスターの影もなく、荒れた様子もない。その一帯が全くもって綺麗だった。綺麗すぎるほどに」
『それらの依頼に教会は参加していない。聖女の浄化でもこれだけ綺麗にはならん』
「痕跡という痕跡がないのがもはや状況証拠と言える。何より手帳ごと綺麗に消えた。辿る事も不可能。ここまでギルドを、ヴェネステラを出し抜けるのは常人の範疇でできる事じゃない。おそらくダンジョンか、『神格』が絡んでいる。あるいはそのどちらもか」
『•••そういうことか』
「何か知ってる?」
『─先日聖女が拾った』
「何だって?」
『”─星が降る”、随分とご機嫌だったそうだ』
白い猫の瞳と金の瞳が交わる。
「それは、穏やかじゃないねぇ」
男は渇いた喉にコーヒーを通す。部屋に静粛が訪れ、わずかに立ち込める湯気とほろ苦い空気のみが満たされていく。




