24話
『 』
「グァアア!?」
「アリス!!」
──アリス。
ロードとシデンが黄金の光に照らされ回復していく。聖域に獣も含めた全員が効果範囲になっていた。光に照らされ、ロードは死の淵から意識を戻し、シデンも動けるようになる。獣は全身の傷から灰になり始め、あまりの激痛で手当たり次第に暴れていた。
「完全復活、では流石に無いね。」
「アリスにそこまで無理はさせられねぇだろ。」
「でもここで踏ん張らなきゃ──」
「漢じゃねぇわな!!行くぞ、ロード!!!」
「ああ!!シデン!!!」
『 』
少年たちは聖歌で癒されてる中、動く度に激痛に晒される。既に限界は遠の昔に超えていた。だが、自分たちを支え、応援してくれる少女がまだ頑張っている。
ならば、だからこそ、なればこそ、動く理由なんてそれで十分だろう。
さぁ───行こう。
「俺が杖で─」
「僕が剣で─」
「「俺(僕)の代わりに理想のその先を見せてみろ!!!」」
自分の夢を、親友に託して。
魔力を失った少年は、目の前で膨大な魔力を杖に注ぎ、自分より迅く走る友を羨ましく思う。僕にもそれがあったはずだと。それは僕の物のはずだと。
──ああ、そうさ。羨ましいさ。妬ましいさ。でも彼は僕を相棒と呼んでくれた。僕の英雄はそう呼んでくれたんだ。それだけで十分さ。十分なのさ!
「グルァアアアアアア!!!」
「ハァア!!!」
獣は聖なる光に焼かれながら腕を振るう。その軌道上に立つ少年を、後ろの少年が追い越すように、青眼に映る光の先へ剣を置き、弾く。
枷を嵌められた少年は、後ろから剣をねじ込み弾く、二本の剣を持つ青眼の友に怒りを覚える。見せつけやがってと。俺ならもっと上手く使えると。
──ああ、そうだ。ムカつくし、イラつくぜ。でもこいつはあの時笑って言ったんだ。俺が英雄だって。笑わずにいられないだろ。でも、悪くねぇって思ったんだ。そんだけで、十分だ!
「うおおおらぁあああああ!!!」
杖を持つ少年は己の怒りを力に変えた。体勢を崩した獣の顎を蹴り上げ、吹き飛ばす。そして既に、剣を持つ少年は飛ばされる獣の先へ駆けていた。最後のピースを刻む為に。杖を持つ少年も獣を追い、駆け出す。全てを終わらせる為に。
そして───剣は深く大地に刻み込まれた。
「シデン!!!」
陣の端に立つ少年は、杖に貯まる魔力を解き放つ。
「これで───終わりだぁあああ!!!」
陣が魔力で光り、中心にいる獣は荒れ狂う業火に身を焼いた。
発動した魔術は、第7階位儀式魔術『インフェルノ』
過剰にも思える魔力が注ぎ込まれ、その威力を遺憾無く発揮した。
「グルァアアアアアアァァ!?」
獣は業火の中、終ぞ己の願いは叶わず、体を燃やし、倒れた。体の端から灰になっていく。
獣の慟哭は、同胞には届かない。
魔力を全て注ぎ込んだシデンは堪らずその場で倒れるように座り込む。
「──もう、なんにも残ってねぇ。」
「僕も、───アリス!?」
ロードはアリスが倒れるのが見え、激痛に苛まれる体にムチを打ち、走り抱きとめる。
「おい、大丈夫か!?」
「アリス!!」
「──ええ、大丈夫だわ。なんたって、私はアリスなんだ、から─」
掠れた声で応え、ロードから体を離し立ち上がろうとする少女はまたもフラつき、堪らずロードは支えた。
「無茶すんじゃねぇよ。でも、助かったぜ。」
「全部終わったよ、だからゆっくり休んでいいんだ、アリス。」
「──そう、終わったのね。そう、よかったわ。」
少女は魔力と体力を使い果たし、酷く疲れてはいたが、満足そうに意識を眠りの海に沈める。
「今回1番の功労者だな。アリスがいなけりゃとっくに死んでた。」
「ああ、そうだね。さすが僕らのリーダーだ。」
「ああ、最高のリーダーだ。」
やがて業火は消え、森は静粛に満ちていく。聖域の残り香が辺り一面を黄金で照らし続けていた。三人の顔は安堵に染め、体を休める。長い戦いは漸く幕を下ろすのだった。




