23話
sideアリス
聖歌を歌い始めた時から、アリスは自身から溢れ、暴れ出す魔力を必死に制御していた。その点聖歌は膨大な魔力の消費先として上手く機能してくれて、それからは楽になった。だがそれでも人の身には過ぎる魔力量であり、その魔力に晒されている間、自我が薄くなるような感覚がある。これほどの魔力を調整せず、ぶつ切りの様に中断すれば、下手したら魔力爆発で森一帯更地と化していた。
実は、たまに聞こえるバカ共の話声で自我が保ててただなんて、アリスのプライドにかけて絶対に本人達には言えないだろう。
少年達を庇い、吹き飛ばされ、眠り、沈んでいた彼女の意識は少しずつ覚醒していった。
(あれ、私どうして寝て、痛っ)
少女は腕から来る痛みに意識が覚醒すると同時に、思い出した。
(そうだわ。思い出したわ。私庇って──)
周囲を見渡す。
(どこいったのかしら。決着はついたの──)
獣の咆哮が少し離れた所で聞こえる。
(そう、まだ戦っているのね。私も)
アリスは獣の声の方に足を進め、開けた場所に出る。
「グルァアアアアアア!!!」
「うおおおおおおおお!!!」
そこには片腕の獣と、笑いながら不格好に剣を持つロードが戦っていた。
(なんで、ロードが剣で──)
そう思ったのも束の間、ロードはシデンのように剣で戦っていた。
(・・・凄い。)
ロードは格上相手にギリギリ食らいつくように剣を振るう。でもそれも長くは持たなかった。
「避けろ!ロォオオオド!!!」
「グルァアアアアアアアア!!!」
「ぁが──」
「──」
(ロード!!)
咄嗟に声を出そうとして、喉に痛みが走る。聖歌の反動を思い出し、アリスは急いでポーチに入れていた聖水を飲み干す。
「─これでまだ歌える───っ」
喉が回復した安堵と共に思い出す。自我が薄れていく恐怖を。自分が自分じゃ無くっていくような恐怖を。
「──ぁ」
少女の声はまた、縛られた。恐怖という名の鎖によって。
──私がワタシで────
「グルアアアアアアア!!!」
追い討ちの様に更なる恐怖が降り注ぐ。そして、数秒後の彼らの末路を想像して思う。
震えは止まった。
──ふん、簡単じゃない。
覚悟の決めた力強い瞳で言い放つ。
「自分がどうこう知ったこっちゃないわ!私が歌いたい時に私は歌う!!だって私はアリスなんだから!!!」
──私を食えるものなら食ってみなさい!
『 』
少女は謳う。




