19話
シデンの技を抵抗することなく受けた獣は全身から一斉に血を吹き出し、獣は膝をついて動かなくなる。同時に左腕は肩ごと地に落ち、他の炭化した部分の損傷も甚大だった。
「す、凄いなこれは。」
『 』
「そうだ、シデンは!?」
シデンを探すと獣の傍で倒れていた。体はもう言うこと聞かないみたいに震えるだけで動かない。
「シデン!!」
ロードは急いで駆け寄ってシデンの無事を確かめた。手に持っていた剣は見るも無惨なボロボロの鉄屑と化している。
「やったよシデン。君がやったんだ!」
「・・・ああ。やったんだな。」
シデンを支えアリスの方へ戻ろうと振り返った。シデンの体はアリスに回復してもらったとはいえとっくに限界を迎えている。意識朦朧のままロードの言葉に応えた。
「君のおかげで僕もアリスも助かったんだ。皆、助かったよ。」
「・・・ああ。」
駆け寄ってくるアリスも見えた。無事聖歌の儀を終えたらしい。金の髪を靡かせこちらに向かってくる。
「アリス!シデンは無事だよ!」
「──げ─」
「?」
アリスは声の出ない口をそれでもと目一杯伝わるように口を開き、喉を酷使する。武器を捨て、体力も限界だったがそれでも、ロードとシデンに向かって足を走らせる。
微かに聞こえた、泣きそうになるくらい悲しい歌。嫌な予感がしたアリスは誰よりも早く動き出していたのに、それでも間に合わない。
盾を片手に駆け寄ってくるアリスにロードは違和感を感じた。アリスの視線がこちらに向いていない事に気付く。
絶望の音がした。
「グォォオオ・・」
「──っアリス!!来ちゃダメだ!!!」
シデンの体を引きずって足を早める。それでも、絶望の音は大きく、重く、身体にのしかかる。
(──振り向くな、動け、動け動け動け動け動けぇ!!!!)
「オオオオオオオオオ!!!」
後ろで破砕音が爆発するように響く。
全力で足を動かすロードの頭に酸素が回らず、視界が明滅する。
(足が───)
体が恐怖を思い出し、一瞬足が震え、もつれ、倒れた。
視界が僅か後ろを捉え、振りかぶる獣の横薙ぎにどうする事も出来ずそして───黄金の髪の少女が、獣の前に立ち塞がる。
ロードよ、どうしようもない愚か者よ。君はいつまで同じ過ちを繰り返すんだい。




