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シリウス・ステラ・フォール  作者: 佐藤羊
理想を友へ
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17話

sideシデン


シデンは吹き飛ばされてから木の幹にぶつかり動けなくしていた。


(あー、ダメだこりゃ。)


シデンの体はあちこち骨が折れており、とても戦闘を続行出来る状態では無い。幸い、敵の能力のお陰で出血部位の止血は済んでいた。


(無理すれば1回は振れるが、でもそんな一振させてくれる様な敵じゃねぇわな。)


重い足音が近づいてくる。獣は散々邪魔された事に怒り心頭だった。


「へっ、格下の人間様にメチャクチャにされた気分はどうだ?」


「ガアアアアアアアア!!!」


「そりゃ何よりだ。」


(さて、こんだけ怒ってりゃ最後に隙くらい見せんだろ。)


だが、獣は近くにある手頃そうな丸太を手に入れ振り回している。


(マジか、ここで得物持つんかよ。最悪だな。)


獣は馴染んだのを確認したのかこちらに振りかぶった。


(まぁ、俺みたいなモンが誰かを庇えて死ねるんなら、そんな悪くねぇかもな)


「ガアアアアアアアア!!!」


シデンが覚悟決めた時


『 』


少女の歌が聞こえた。





「ガああああ!?」


「─嘘だろ。」


振り上げられた丸太は獣の側に落ち、獣は頭を抱え苦しみ出した。

先程邪魔だと追い出したはずの少女が戻って来て、その少女の周りが眩い黄金に照らされる。


「この歌、まさか聖歌か?」


(おいおい、だとしたらアリスは『聖女』ってことに──。)


とある童話があった。その童話は、悪い竜を退治するため、勇者そして聖女が二人で倒すという物語だ。この時、聖女が用いたのは勇者を応援するために聖歌を歌ったとされ、後にも先にも一人で聖歌の儀を用いられたのはこの童話のみであった。


(普通、聖歌の儀は30人の熟練シスターで行われるはずだ。一人の魔力と生命力じゃ一節すら歌えねぇって。)


聖歌を歌い続けるアリスを中心にした黄金の円にシデンが触れた。


「グォオオオ!」


「なんだ、こりゃ。」


自分の体が少しずつ回復していく。

聖歌の効果は術者本人を中心に聖域を展開し、内なる物を浄化し回復の効果を与える。

獣は聖域を嫌うように離れていく。


「こりゃすげぇな。」


シデンは体を動かす分には支障ないほどに回復した。助かりはしたが、なんで帰ってきたのか。それを問いただそうとした。


「おいアリスなんで───」


『 っ』


「おいアリス!」


歌っているアリス自信が苦しそうな表情を浮かべている。

そんな最中にも、人間に対して怒りと執念の炎に焼かれる獣が、黙って見ている訳がなかった。


「ガアアアアアアアア!!!」


「なっ!?」


獣は周りの気をへし折り、アリスに向かって投げてくる。


「冗談じゃねぇ!!」


あの苦しそうなアリスは一体なんだ。丸太を避けるにはアリスを運ぶしか、もしそれで聖歌を中断してしまった場合のリスクは───

シデンは一瞬の逡巡で、だが答えが見つからず剣の柄に手をかける。ここで抜いた場合、この後動けるのか。


「根性見せろよ、俺!!!」


シデンがそう決意した瞬間──


──炎の弾丸がアリスを襲う丸太を粉砕した。

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