14話
sideシデン
「これで邪魔者はいなくなったなァ!!!おい!!!」
「ガアアアアァアアアアアア!!!」
獲物が逃げたことに対する怒りか、シデンにさらに圧をかける。
「ハッハッハァ!!!」
その圧を押し潰すかのように、男は嗤う。
改めて現れた獣の姿を捉えた。ゴブリンをそのまま大きくしただけじゃありえない太くなった腕、足、体の至る所に肉が付き、筋肉となっていた。そして何より妙な特性を持っている。
(殴りつけただけで冷気が武器と体を襲う。フロストベアを喰った影響か?)
まさしく本来のゴブリンとはかけ離れた能力を持っている別の魔物である。冷気で体が震え、木刀を持つ手は滑り落としそうになる。連撃を入れればさらに動きが鈍化し、三連撃で通常の身体能力の7割程低下する。攻撃が当たった時でも同様の効果があった。シデンはもう、一度も当たるわけにはいかない。
(厄介だ。折を見てトンズラしようと思っていたが、とても目を離してくれそうにねぇ。何よりいちばんマズイのは)
シデンは自分の手に持つ得物を見た。
(コイツがもう限界だ。耐えれて2発ってとこか。)
愛用していた木刀の耐久が限界に達していた。冷気による耐久値の低下、レベル的にも格上への敵にもう十数回は打ち込んでいる。それでも効いている様子は無い。
(となると、コイツらか。)
シデンは腰に差している2本の剣に思いを馳せた。
(クソ、忌々しい枷だぜ。)
遥か東の神に心で中指を立てつつ、状況を整理し使える物を探そうとするが、獣は腹を空かせていた。
「ガアアアアアアアア!!!」
「ハッハッハァ!!!」
シデンは極限に集中し、襲い来る脅威を去なす。
見ろ、視ろ!!
(迅雷流、漆の雷──雷龍天落『らいりゅうてんらく』!!!)
雷が落ちる様な轟音がシデンの周りに響く。振り下ろす獣の両腕がシデンの両脇に叩きつけられ、すかさずガラ空きになった頭部に一撃を繰り出そうとした。
「貰ったァ!!」
(迅雷流、壱の雷──紫電い──)
瞬間、自らが持つ得物が泣き、感覚を失う。
(ああ、すまな───)
「ガアアアアアアアアアア!!!」
無情に、獣が吠える。
男の笑い声が、消えた。




