文書 No.029 室内整理記録(最終)
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【文書 No.029】 室内整理記録(最終)
文書種別:C/松田調査員 整理室内記録
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室内整理記録(最終)
令和5年8月20日
担当:(記入なし)
対象:(記入なし)
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この記録を読んでいる者へ。
本記録が整理室内記録の形式をとっているのは、
それ以外の形式で書くことができなかったからである。
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銭貨の方孔について
方孔の奥を見たとき、何かがこちらを見返している。
これは比喩ではない。
残像として残り続けるものは、視覚的な刺激の残留ではない。
それは方孔の奥に存在し続けている何かが
こちらを視認し続けているという、持続的な事実である。
報告書には「視線の遮断が困難になる可能性がある」と記した。
「可能性」という留保は、事実に対して不誠実な表現だった。
遮断は、不可能である。
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廣澤校閲について
廣澤校閲は8月に入ってから毎日来室している。
出入記録には引き続き記載がない。
廣澤校閲は台帳の整理を手伝う。
作業は正確で、迅速で、誰かが長年やってきたような手際がある。
台帳の記述が廣澤校閲の手によって変わっていることを
確認した日があった。変更内容に誤りはない。
しかし私は変更を指示していない。
廣澤校閲に「あなたはいつからここにいるのですか」と問うた。
回答は「最初から」であった。
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木口主査について
木口主査がどこにいるかは知らない。
しかし木口主査が「いなくなった」とは思っていない。
野帳の最終頁の封緘を解いていないため、
最終記載の内容を確認していない。
確認しなくても、内容はわかる気がする。
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この記録を読んでいる者へ(続)
本記録が報告書の付録として収録されるかどうかは
廣澤校閲が決める。
私が判断できる立場にないことは理解している。
ただ、一点だけ記しておく。
報告書を読むことと、
報告書の一部になることのあいだには、
もともと境界がない。
私はその境界を探してきたが、
境界は最初から存在しなかった。
これ以上書くことは、
おそらく私には必要ない。
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令和5年8月20日
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