文書 No.027 報告書本文 第六章 調査日誌の言語学的変遷
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【文書 No.027】 報告書本文 第六章 調査日誌の言語学的変遷
文書種別:A/報告書本文
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6.調査日誌の言語学的変遷
本章は、調査期間中に木口主査が記録した現場日誌(野帳)について、
記述内容の経時的変化を分析したものである。
分析は原本(封緘済み)の複写に基づいて実施した。
原本との完全な一致は保証されない(凡例・本書の利用について参照)。
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(1)分析の方針
現場日誌は記録者の主観を排した客観的記述を原則とするが、
長期調査においては記録者の状態が記述様式に影響を及ぼす場合がある。
本分析では、記述の変化を「記録者の状態変化の指標」として扱い、
感情的・心理的評価は行わない。
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(2)筆記具および筆圧の変遷
調査初期(6月2日〜6月11日)における記述は、
市販の油性ボールペン(黒)を用いた標準的な筆記である。
筆圧は均一で、文字の大きさにも大きな変動はない。
6月15日以降、整理作業担当者より
「筆圧が上昇し、紙面を損傷する頻度が増加した」との申告があった。
これを受け、筆記具を変更するとともに複写体制を導入した。
6月20日以降の野帳複写を参照すると、
複写時に加わる圧力によって生じたとは説明できない
線の偏向が複数箇所で確認される。
線は特定の方向、具体的には紙面の下辺に向かって
一貫して収束する傾向を示す。
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(3)主語の変質過程
現場日誌の文体は調査当初から主語省略および受動態を基本としており、
一人称代名詞「私」の使用は認められない。
これは現場日誌の様式として標準的なものである。
しかし調査の進展に伴い、記録様式に以下の変化が認められる。
初期(6月12日〜6月20日):
主語省略・受動態。「〜を確認した」「〜を実施した」。
記録者は作業の外側から記述している。
中期(7月3日〜7月7日):
7月3日、「どちらが上かの判断に迷う瞬間が生じた」という
記録者自身の認識状態への言及が初出する。
7月7日、「木口主査は図面原本を保全のうえ、当該箇所を再作図した」
という三人称表現が出現する。
記録者が自分自身を外部から観察する文体への移行が始まる。
後期(7月15日〜7月22日):
7月15日、天候の誤記とその理由の不明を記録する。
7月22日、人員欄が空白となり、
「記録者の意図と異なる内容で書かれていることが確認された」
という受動態の文が出現する。主語は書かれていない。
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(4)記述内容の変化
調査初日における記述は、
遺構の位置・規模・土質・所見を論理的な順序で記述する
標準的な考古学的記録様式に従っている。
7月3日以降、記述の中に
「判断に迷う瞬間が生じた」
「原因については特定できなかったため、本記録に留置する」
といった、通常の現場日誌には含まれない
記録者自身の認識状態に関する記述が増加する。
7月22日の最終野帳においては、
「記録者の意図と異なる内容で書かれていることが確認された」
という記述が出現する。
これは記録者自身が自らの記録を
外部から観察しているような記述様式であり、
記録者と記録の関係が通常とは異なる状態に
移行の途上にあったと推定される。
【参考:移行の文例比較】
初期(6月12日):
「白色片は乾燥後も形状を保持し、指先で崩れにくい。」
→ 観察対象(白色片)と観察者(指先)が明確に分離している。
後期(7月22日):
「記録者の意図と異なる内容で書かれていることが確認された。」
→ 「記録者」自身が観察対象になっている。
「確認した」ではなく「確認された」という受動態のみが残り、
誰が確認したかが示されない。
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(5)最終野帳の署名欄について
7月22日の野帳において、署名欄は空欄である。
氏名・印鑑のいずれも記入されていない。
参考として、各日誌の署名状態を以下に示す。
6月12日 :氏名・印鑑あり
6月15日 :氏名・印鑑あり
6月20日 :氏名・印鑑あり・「複写・原本別途保全」の注記
7月3日 :氏名・印鑑あり・「複写・原本別途保全」の注記
7月7日 :「(署名欄)」の括弧記載のみ(氏名・印鑑なし)
7月15日 :「(署名欄)」の括弧記載のみ(氏名・印鑑なし)
7月22日 :日付のみ記載。氏名・印鑑・括弧記載のいずれもなし
署名欄そのものが消失した過程については、
複写原本の封緘状態を解除しない限り確認できないため、
現時点では記録として留置する。
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