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転生探索者のすべき事  作者: 寿司
第一章

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43/50

役目

7:15 p.m.


『妖は藪に

     鎮め鎮めと祈る夜に

               魔は名を失ふ』


聖都全域に声が響く。同時に、黒色の半円状の幕が街の一部を覆い、街全体を照らした街灯が消える。さらには街の一部が崩れているのを見て、都市長 新倉 恒一(アサクラ コウイチ)とノアが動く。


『教会は私が騎士隊を連れて向かおう。君には王女の護衛を願いたい』

「ういうい。送った方がいいっすか?」

『良い。急いでくれ』


さて、始まったな。つっても天啓によれば俺ちゃんのすべき事はシンプル。

三節刺突散弾魔法テラガ


「よお――今からアンタらを殺す。理由は言えねぇ」


襲撃に来た奴らと、護衛している近衛の生き残り。そして王女サマ、コイツら全員を殺す事だ。


ノアの殺気を察知したのか、襲撃者と近衛の騎士達が攻撃を加える。


◾️式五節 完全防御魔法アクセラレイト


『何故だ!何故あの時全力を出さなかった!これ程までの力を持っていれば、あんな雑兵一瞬で――!!』

「お疲れさん」


――多重無詠唱 三節蒼炎熱波魔法フレアガ 四節回転弾倉魔法テラド


部屋を焼き尽くし土を高速で土の弾丸を全方位に射出する。大多数が炎か弾丸に貫かれ、動かなくなった。


「運命点ってやつか。で?後何回凌げんだ?王女様」

『役目を...果たす時が来たのですね。民と王族に上下の差は無く、役目が違うだけだと。いつか起こる厄災に対して、民の代わりに代表として討たれるのが、我らの役目だと』

「...死んだ後は楽にしな」


諦めたように独り言を話す王女を、ノアは焼き殺した。一瞬にして焼いた為、恐らく苦痛は少なかっただろう。


帝国の王族をここで殺す事が――彼の役目《すべき事》。


「結局、舞台の上で踊るしかねぇのさ――俺も――アンタも」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『妖は藪に

     鎮め鎮めと祈る夜に

               魔は名を失ふ』



踊ってる...舞か?まあ良い。どっちにしろ詠唱中に妨害が入ればただじゃ済まないだろ!恐らく切り札封じてるのはアイツだ。切り札さえ使えればコイツら全員ぶち殺せる。周囲の被害なんて知った事か...まずはアイツから殺す。


『させへん!』


瞬間、男が街角から現れる。銃火器に特殊部隊のような防具で武装している。

遮蔽物に隠れたて思考する...そりゃアイツらも袈裟男の護りを固めてるよな。


それに銃を乱射...音的にトンプソンか...なら


「....六十発。打ち切ったよな」


糸を射出して立体機動を行い、舞うように高度を上げる。

トンプソンの装弾数は最大六十発...魔改造してるとしても、今はリロードタイムだろ!


『やめっっ』

「次があるなら機関銃は打ち切らない方が良いぞ...じゃあな」

 

口の中に手を入れて体勢を崩す。


「見えざる刃」

ひふぁねぇなぁ(効かねぇ)..!ブアァ!!』


何度も頭を後頭部を壁に叩きつける。一瞬痙攣した後、男は動かなくなった。


対策メタだろ?そんなもん想定済み...で、アイツらが銃を持ってるって事はどうせイスが絡んでる。つまり、見えざる刃をあの程度の対策で済ます訳ねぇ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺の女神の寵愛(チート)をこんなにも早く切らされるなんて...傲慢が言っていた事は決して過剰評価では無かったのかもしれない。彼女の体格で己の切り札を封じらながらこの人数と戦闘が成立しているなんて異常だ。


傲慢が言ってた事が脳裏によぎる。探索者《柴田》の真の強さは戦闘力では無いと。

運命へ抗い、少しでも良い結末へ導く生存欲。それが彼女の強さだと。だが傲慢は『今の彼女には崇高な意思なんてなく、ただの記憶を失った少女ですよ。強い意思"なんてありません』


「ならなんでこうなってんだよ!!」


人間同士の戦いで勝負が分かれるのは、初見殺しと武器、人数と体格差だ。

彼女は何の優位も持ち得ていない。人数も、情報も、手数もフィジカルも負けている...ならば何故、死へ抗える!!


前世の記憶も強さも失った女が、何でここまで戦える!!


「鏡子、合わせろ!!」


俺の特殊能力はまず...前世からの付き合いの神秘殺し。

簡単に言えば物理に証明出来ない攻撃は効かない。魔術も、魔法も...俺の前では意味がねぇ。これだけでも対柴田戦で選ばれる条件、見えざる刃の対策がある事を満たしている...がこれだけじゃ俺は選ばれなかっただろう。重要なのはもう一つ。


女神の寵愛(チート)申請名 残機。


効果は文字通り、ストックが尽きるまで何度も俺の複製体を召喚出来る。

ストックは生き物を殺したらチャージ可能。基本的に大きな生き物を殺せばより多くの残機が獲得出来る。


この二つの異能があったらから...俺だけ生きて、選ばれたんだ...クラスの皆を生き返らせる為に...この為に生まれたんだ!!


「◾️◾️◾️◾️◾️を使って得た九十九の残機を...今、ここで使い切る!」


物陰や建物の上や広場に、様々な銃で武装した男が大量に現れる。統率が取れた動きで射撃を始める。その圧倒的物量の前では、常人ならひとたまりもないだろう。加えて言えば、神崎やローランと連携しながら全身武装した人間が、百人殺しにかかってくるなんて、常人どころか人間なら"戦闘"は成立しない。何故なら五感をフルに生かしても、大規模破壊が可能な技か、圧倒的な...それこそどんなダメージすらも通さない鋼鉄のような体がなければ、一方的な蹂躙になる。いくら柴田という人間が強いと言っても、不可能だ。"難しい"や"メタ"じゃない。両方持ち得ない柴田では、戦いの土俵にすら上がれないからだ。


「俺達に告げる!命を振り絞れ!!」


同時にこの残機という寵愛は、人間にとって致命的な弱点を抱えている。

それは、自己乖離と蘇った自分との同一証明である。


銃弾を空中でかわしながら、柴田は落ちるようにして神崎と殴り合った。神崎の拳を受けて流して投げ飛ばし、瓦礫を巻き込み建物の上に落下すると、同時に銃声が鳴り響く。事前の打ち合わせ通り、銃弾ではダメージが通らない神崎を巻き込みながら射撃を行う。


『ア"ア"ア"―――ァ"ァ"!』


神崎の体を無理やり盾にしながら銃撃を凌ぎ、ワイヤーのように足から糸を射出する。首を貫き、物理法則に従って頭部を後ろに倒しながら倒れかけるが、糸がそれを許さない。己を鼓舞する叫び声を上げながら糸を巻き取り、足で蹴り込む。



また、人を壊した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


これは蹂躙じゃない。戦闘だ。そう言わんばかりに、柴田は神崎を利用し盾とする。

ギリギリだが、"戦闘"は成立していた。



確かに俺も傲慢イスを相手に、三対一で戦っ(リンチし)た。そんな事は分かってる。別に卑怯とは思わない...問題は


『達に告げる!例え俺が死のうとも、"俺達"は終わらへん!俺の為やない。皆の為に―――命を振り絞れ!!!』


啖呵を切っている金髪の男を見てから、俺は何で生きようと足掻いているのか分からなくなった。

あの超人男はどんな目的かなんて知らなかったが、目の前のコイツは個人の目的が、大義がある。じゃなかったらあんな啖呵は切れない。


対して俺には...本能でしか戦う理由なんてない.....まただ。またこれだ。また迷いが増してきた。


【私が貴方を救ってあげる】

【それを人は、傲慢と言うのでしょう!!】

【今から――貴方にとってひどいことをさせます】

【そうして生きた方が!生きる意味を見出せるでものでしょう!!】

【俺みたいになるな】


ああ、まただ...またあの声が


『うあああ―――あああ!!!』

「しまっ!!」


長い思考によって、凶弾への反応が遅れる。


反応は不可、十速は使い切った。身体強化ストレングスじゃこの大勢から回避なんて出来ない。


――死







『人生相談して差し上げましょうか?レディ?』


|中世後期頃の紳士服を着たローランが、時計を持って建物の上に姿を現す。同時に疑問が生まれる。自分と目の前の男以外、まるで時が止まったように静止している。水も、銃弾も、他の人間も全て制止した世界が、そこにはあった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【無欠の投擲】


コスト:少量の魔力 詠唱:無し 効果;即時


呪文の使い手が短い文句を唱えて物を投げると、それが正確に目的の地点に落ちる。ただそれだけ。

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