表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/25

「負けてたまるか!俺の飯は最高なんだ!」

ギルドとリョウは、ゼノンの陰謀に対する具体的な対抗策を練り始めた。

まず、ギルドはゼノンの流す噂にある偽の屋台や毒に対して、正式な通達と警告を発した。

ギルドマスターのグラハムは、町の広報機関を通じて、

「リョウの屋台が提供する料理は、ギルドが厳重に衛生管理と品質検査を行っており、一切問題ない」

と公表した。

さらに、偽の屋台を発見した者には報奨金を出すと情報提供を促す発表をし、市民からは情報提供が相次いだ。


そして、エリナの潜入捜査が成果を上げ始めた。

数日後、エリナはいくつかの証拠を持って戻ってきた。

「ゼノン商会は、確かに偽の屋台を使って粗悪品を流通させ、リョウ様の屋台の信用を貶めようとしていました。また、獣人への差別を煽るデマも、彼らが裏で操作していることが判明しました。これです!」

エリナが提出した証拠は、ゼノン商会の裏帳簿の写しや、雇われた者たちの証言だった。


そこには、偽のホットドッグの仕入れ値や、デマを流すための報酬が克明に記されていた。

グラハムは証拠を見て、顔を真っ赤にした。

「許しがたい!これほどの悪事、断じて許容できん!」

しかし、直接的な証拠は掴めたものの、ゼノンが貴族の有力者と繋がりがある可能性も考慮し、ギルドは慎重な対応を求めた。


「いきなり逮捕に踏み切るには、まだ決定的な証拠が足りない。それに、彼が貴族と繋がっている場合、迂闊に動けば我々も危険に晒される。リョウ殿、しばらくは辛いかもしれんが、彼の悪事を白日の下に晒すための、さらなる決定的な一手を打つ必要がある。もう少し我慢してくれ」

グラハムはそう告げた。


リョウは、歯がゆい思いだったが、エリナとギルドがこれほど協力してくれていることに感謝した。

そして、この状況で自分に何ができるかを考えた。

(ゼノンは、俺の「食」の信用を貶め、獣人への偏見を煽った。ならば、俺は「食」の力で、その信用を取り戻し、偏見を打ち破ってやる!見てろよ、ゼノン!)

リョウは、グラハムとエリナ、そしてリオンとガウルに顔を向けた。

「ギルドマスター、エリナさん、リオン、ガウル。ありがとうございます。俺、考えました。ゼノンが何をしようと、俺は最高の『食』を提供し続ける。そして、俺の『食』の力で、獣人への偏見を打ち破ってみせます!俺の屋台で、認識を変えてやる!」

リョウの瞳には、強い決意の光が宿っていた。


彼は、ゼノンの陰謀に屈することなく、むしろそれをバネにして、さらに高みを目指すことを誓った。

「リョウ、俺たちも手伝うぞ!いくらでも手伝ってやる!」

「ああ、俺たちの力、見せてやるぜ!やっちゃおうぜ、リョウ!」

リオンとガウルも、リョウの決意に呼応するように、拳を握りしめた。

彼らの絆は、この困難を乗り越えるたびに、より一層強固になっていくのだった。

リョウの屋台は、エクレアの都市で、ただの商売の場を超え、人々の偏見を打ち破り、種族間の理解を深めるための、新たな戦いの舞台となっていった。



エリナの潜入捜査は着実に成果を上げていた。

彼女はゼノン商会が出す偽の屋台の証拠だけでなく、獣人差別を煽るデマを流すための具体的な指示書や、その裏でゼノンと結託している貴族を割り出し、フリストル男爵から金銭のやり取りを示す証拠を掴んだ。

フリストル男爵は、領主アルベールとは対立関係にある保守派の貴族で、新たな文化や技術の導入を嫌い、旧体制の維持を望む者だった。

エリナはそれらの証拠をギルドマスターのグラハムと執事セバスチャン、そしてセバスチャン経由で領主アルベールに報告した。


その報告を聞いたアルベールはグラハムを領主の館に呼び、奥の間で経緯を説明させると怒りを滲ませていた。

「ゼノンめ、まさかフリストル男爵と組んで、そこまで卑劣な策を弄していたとは……!リョウ殿の商売を妨害するだけでなく、市民の間に差別を煽るなど、断じて許される行為ではない!」

グラハムは静かに頷いた。

「フリストル男爵が関与しているとなると、我々も慎重にならざるを得ません。彼には一定の勢力がありますから、迂闊に動けば反撃の機会を与えてしまいます。厄介ですね……」

アルベールは腕を組み、思案した。

「決定的な証拠で、彼らを一網打尽にしたいところだが……何か良い手はないものか」


その頃、町ではリョウの屋台が一時的に客足を減らしていたが、リョウは諦めずに最高の「食」を提供し続けた。

「負けてたまるか!俺の飯は最高なんだ!」

そんな彼の姿を見て、一部の市民が動き始めていた。

「この間、リョウさんの屋台の近くで、変な奴が唐揚げを配ってたんだ。あれ、味が全然違ってて、ちょっと変だったんだよ!吐きそうになったぜ!」

「近所の子供が、あそこの変な屋台のジュースを飲んでお腹を壊したって言ってたわ!リョウさんのところはいつも清潔なのに!」

これまでリョウの「食」に魅了されてきた市民たちは、ゼノンが流す悪質な噂と、リョウの屋台で提供される「本物の味」のギャップに気づき始めていたのだ。


彼らは、リョウの屋台に足を運んでは、自分たちが目撃した「不審な行動」や「偽の屋台」に関する情報を、リオンやガウル、あるいはエリナにこっそり伝えるようになった。

「リョウ、市民が協力してくれてるぜ!すげぇ、俺たちも負けてらんねぇな!」

ガウルが目を輝かせて報告した。

「ああ、俺の『食』は、間違ってなかったんだ……!みんな、ありがとう!」

リョウは、市民の温かい心に感謝した。


ギルドは、これらの市民からの情報も集約し、ゼノンとフリストル男爵の悪事をさらに具体的に突き止めていった。

偽の屋台がどこから材料を仕入れているか、どの場所でデマを流しているか、そしてフリストル男爵の私兵が裏で関わっていることまで、徐々に明らかになっていく。

ゼノンたちの悪行の全貌が、白日の下に晒されようとしていた。



集まった証拠は、ゼノンとフリストル男爵の悪事を裏付けるには十分だったが、貴族の断罪には、より公衆の面前で、明確な「落ち度」を示す必要があった。

そこで、グラハムとアルベールは、一計を案じた。

ギルドマスターのグラハムは、領主アルベールに提案した。

「リョウ殿の屋台は、まさに『新たな食』の象徴。ならば、その『食』の力で、ゼノンとフリストル男爵を追い詰めてみてはいかがでしょうか?彼らが一番嫌がる方法で!」

アルベールは興味を示した。

「ほう、面白そうだな!具体的には?」


「『食のバトル』を催すのです。リョウ殿とゼノン商会に、特定の食材を使って料理を競わせる。審査員は、アルベール様、そして私、それに町の有力者の方々。もちろん、フリストル男爵も審査員として招きます。逃げ場はありません!」

グラハムの目に光が宿る。

「その場で、リョウ殿の料理が『本物』であること、そしてゼノンの粗悪な『偽物』が、いかに人々に害をなすかを示す。そして、もしゼノンが負ければ、彼の商会の不正と、フリストル男爵の関与を、一気に白日の下に晒すのです!これぞ、正義の鉄槌です!」

アルベールはグラハムの提案に深く頷いた。

「面白い。その手で行こう!リョウ殿なら、きっとこの危機を乗り越えてくれるはずだ。彼の『食』の力は、私が見込んだ通りのはずだ!」


リョウは、ギルドマスターから「食のバトル」の計画を聞かされた時、一瞬戸惑った。

しかし、ゼノンとフリストル男爵の悪事を許すわけにはいかない。

そして何より、リオンとガウルを含めた獣人たち、そして自分を信じてくれた市民たちのために、この戦いに勝つ必要があった。

「分かりました、ギルドマスター。俺が、必ず奴らを打ち破ってみせます!俺の『食』の力、見せつけてやります!」

リョウは、胸に秘めた決意をグラハムに伝えた。


リオンとガウルも、リョウの隣で静かに闘志を燃やしていた。

彼らの獣人としての誇りも、この戦いにかかっているのだ。

「リョウ、俺たちも手伝うぜ!ぶっ潰してやろうぜ!」

「必ず勝って、奴らを見返してやろう!」



数日後、エクレアの町の中心広場に、特設の舞台が設置された。

中央には調理台が二つ用意され、観客席には多くの町人たちが集まっていた。

審査員席には、領主アルベール、ギルドマスター・グラハム、そして憎々しげな顔つきのフリストル男爵、商会ベリルのオーナーであるゼノンと町の有識者の数人が座っている。

エリナは、ギルド職員として舞台の進行役を務めていた。

「これより、エクレアの食の未来をかけた、特別な食のバトルを開始します!両者、準備はよろしいですか!?」

エリナの声が広場に響き渡る。


挑戦者は、もちろんリョウの屋台。

対戦相手は、ゼノンの商会が雇っている腕利きの料理人だ。

フリストル男爵は、この食のバトルがゼノン商会を正当化し、リョウの屋台を潰すための舞台だと思っているため、余裕の笑みを浮かべていた。

「せいぜい足掻くがいい、小僧め!」

そして、エリナが、今日の食バトルのお題を発表した。


「本日のお題は、このエクレアでも広く栽培され、人々に親しまれている、黄金の粒――トウキビィーです!」

エリナが示したカゴの中には、瑞々しいトウキビィーが山と積まれていた。

リョウは、その聞き慣れない「トウキビィー」という名前に、一瞬首を傾げた。

しかし、目の前に積まれたカゴを見て、その瞳を大きく見開いた。


(これは……!日本の”とうもろこし”にそっくりじゃないか!?まさか、異世界でこんな食材に出会えるとは……!)

リョウは、思わず一本の粒を指で押し潰し、口に運んでみた。

(うん、間違いない!この甘み、このプチプチとした食感!まさに”とうもろこし”だ!これは面白い。色々な料理が作れるぞ!俺の出番だ!)

リョウは、ニヤリと笑みを浮かべた。


ゼノン側の料理人は、トウキビィーを見て眉をひそめた。

トウキビィーは、通常は家畜の飼料か、茹でてそのまま食べるのが平民の食べ方が一般的な調理法で、貴族や上流階級への料理の食材としてはあまり注目されていなかったからだ。

「なんだ、こんな地味な食材か……」


しかし、リョウは違った。

彼の頭の中には、トウキビィーを使った無限のレシピが瞬時に広がる。

甘くて香ばしいトウキビィーの風味を最大限に引き出す料理。

そして、人々に驚きと感動を与える「食」。


「リョウ、頑張れ!俺たちがついてるぜ!」

リオンとガウルがリョウを力強く応援する。

リョウは、観客席を見渡した。

そこには、自分を信じてくれる多くの市民の顔があった。

そして、その中には、獣人族の姿もちらほらと見えた。


彼らの期待に応えるためにも、そしてゼノンとフリストル男爵の悪事を断罪するためにも、リョウは最高の「食」を創り出すことを誓った。

いよいよ、食のバトルが始まった。

リョウは、静かに、しかし確かな手つきで、トウキビィーの調理に取り掛かる。

さあ、どんな料理が出てくるのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ