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11.手のひらの上で

前回までのあらすじ

玉水はこなかった。

『Jcasino』の閉店まで椅子に座って待ち続ける事になった仙斗は落ち込みながら店を出た。

駐車場に着くが車はない。

桂樹が乗って行ったのだろう。

普段ならタクシーで帰るのだが、仙斗は歩いて帰って行く。

その背中は何を考えていたのか。


翌朝、報告する仙斗に桂樹は「そうか。」とだけ答えた。

初めての事でもあり混乱する仙斗

「どうするの?」

「今日は店に行かなくていい。『お前の担当』のトラブルだろ?店の方は俺がフォローしておくよ。」と突き放すかのように出ていった。


どうすればいいのか。仙斗は玉水を探してあてどなく飲み屋街をさまよい歩く。

だが玉水は見つからなかった。

飲み屋街だけで1平方キロはある。ぷらぷら歩くだけで会えるわけもない。


3日目に桂樹は言った。

「これで利息は30万円だな。あの時きっちり払わせといたら借金0で改心してたかもな。」

仙斗は何も言えない。この事態は自分のせいでもあるのだから。


仙斗は店員に尋ね客に尋ね目撃の噂があればそこへ行きと玉水を探した。

あの時、玉水の前に若い客が来た。

あいつは何度も仙斗を見ながら電話していた。

そして桂樹は玉水を依存症野郎と呼んでた。

何度もやらかした可能性がある。


なんで気づかなかったのか。

あの若い客は偵察だ。桂樹はそれを知ってて店に行かず、俺に張り込みさせてたんだ。

探す相手は2人に増えた。


「おい。」

9日目の夜ついに若い男を見つけた。

逃げようとする男を路地裏に引き摺り込み壁に抑えつける。

「玉水の家はどこだ。」

「知らないです。」

「俺の顔見て逃げてて今更何言ってんだ。」


無言になる男に少し低い声で脅す。

「玉水がトランクに入れられそうになった話を聞いたろ。それを許したのが俺だ。なのにあいつは裏切った。あいつはお前も仲間と言ってたな。次にトランクに入るのはお前も一緒かな。」

カマをかけたら効果的だった。


男は200mほど先のマンションを指差した。

「家はほんとに知らないですけど居るとこは知ってます。あのマンションの403号室です。あそこでポーカーの場を開いてます。」

『Jcasino』とは500mほど離れた場所だ。

そしていつも停めてる駐車場の50m先で向こうから駐車場は見える。


俺を裏切ってそんな近いとこにいる。

つまり俺が駐車場に停めてたり探してたりしてたのは見えてたはずだし、知って隠れてたということだ。

仙斗は血の温度が上がった気がした。

「じゃ行こうか。」

男のジャケットの背中を持つ。

「今度逃げようとしたら確実にトランクだからな。」


2人がマンションの前に着いた時、仙斗の背中に硬いものが押しつけられた。

「はい、そこまで。」

あまりの驚きに聞き慣れた声である事に気づかなかった。

血が上って周りが見えていなかったことに後悔しつつ両手を上げる仙斗。


桂樹は爆笑した。

「ノリが洋モン映画だな。」

驚いて振り向く仙斗に背中に当てていたセカンドバッグを見せる。


そして連れてる若い男に声をかけた。

「ごめんな。びっくりしたろ。ただお前玉水に頼まれて俺が居ないかどうか『Jcasino』に確認しに来たろ。」


店に偵察に来た話はしていないのに何故知ってるんだ。

仙斗は驚きと混乱で上った血が下がるのを感じた。


桂樹は若い男の肩を抱き話している。

「そーゆー事されると困るんだよねー。そんな頼みは断ってもらわないとウチが舐められてると思われちゃう。なのでお仕置きさせてもらったんだ。玉水の件はもう終わってるから帰っていいよ。ただ2度とそんな事しないでね。あんなヤツに巻き込まれて怖い思いするのは嫌だろ?」

男はブンブンと頭を前後にヘッドバンキングしている。

男が帰って行く背中を見ながら桂樹は、「詳しい話は家でする。とりあえず帰るぞ。」と混乱したままの仙斗を車に乗せた。


リビングでソファに座る2人。桂樹がボトル置きからマーテルコルドンブルーを出し、バカラグラスに氷を入れる。

今回は仙斗に「飲むか」とは聞かない。


そして濃さを確認するかのように一口飲み、仙斗に顔を向けた。

「そのまま乗り込む根性持ってるとは思わなかったな。」


評価されたことが嬉しいような恥ずかしいような心持ちの仙斗は、それを隠すかのようにぶっきらぼうに答えた。

「なんで止めたんだよ。」

桂樹は両手のひらを上に向ける。

「計画性が無さすぎるからだ。成し遂げたいなら脳から汁出るほど考えろ。乗り込む先には玉水は居るのか?他に人は居るのか?」

仙斗は恥ずかしい思いに包まれ下を向く。

正直に「知らなかった。」と呟くように答えるしかなかった。

桂樹はタバコに火をつけふかす。

「だから俺の言う事に素直に従ってトランクに放り込んでれば良かったんだよ。まぁそれは今回の事で分かっただろうからもういい。」


桂樹は両膝の上に両肘を置き手を組む。

そして前屈みに組んだ手の影になるよう口を寄せると少し低い声で話を続ける。

「場所を知ったら次はそこに標的は居るか。他の敵は何人居るか。そもそもそこは自宅なのかどうか等の現状把握が大事だ。ポーカーやってて満員なら1テーブル10人程度の計算だ。つまり人の出入りも多い。いきなり借金取りが来れば向こうもプライドがある。トラブルになった時に味方は居ないぞ。場を持ってるなら家と往復するんだから家を見つけりゃそちらの方がコトは早い。」


確かに桂樹は自分の周りが全員味方の状況で玉水を捕らえた。

何もかもが未熟だと思い知らされた仙斗。

「これから張り込んで家を探るよ。」

それを桂樹はあきれたように見る。

「火がついたら手のつけようがなくなるのは兄貴譲りだな。家は分かってるからいい。」


桂樹はとっくに玉水の状況を全て掴んでいて仙斗の行動を試していたのだ。

「第一玉水は家にも場にも居ない。あいつの実家が崖崩れで潰れて両親共に重体になったらしく、病院に見舞いに行ってるよ。」

唖然としている仙斗に桂樹は微笑む。

「9日であそこまで行ければ及第点だ。よく頑張ったな。だが今度から俺に歯向かうなよ。」


部屋に戻った仙斗は自らの無力感に打ちひしがれると同時に手のひらの上で転がされていた疲労感にベッドに倒れこむ。


明日は休みだし、さくらも劇団の集まりがあるらしくキャバも休みだ。


家に居たら鬱になりそうだし久しぶりに1人でBAR巡りでもしよう。

そんな事を考えていた。

街の真ん中で両手あげている人が居て後ろに人がくっついていたらそれだけでもう近寄れませんね。

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