第二話 候補者
緑領大使館の一室。
ソウゲンは、目の前に座るゲンシンをじっと見つめていた。
「単刀直入に言おう。お前が、緑領の代表として魔女を探しに行くのだ」
「……え?」
突然の言葉に、ゲンシンは思わず聞き返した。
「司祭様は、冗談がお上手でいらっしゃる」
「冗談ではない。本当のことだ」
ソウゲンは真剣な表情で答える。
「各領から魔女を探す者が出ることは知っておるな?」
「はい。それは聞いています。しかし、自分が行くとは……」
「わしは、お前を選んだ」
ゲンシンは言葉を失った。
自分はあくまで緑領の外交官。各地を飛び回り、他領との交渉を行うことが役目だ。
そんな自分が、次の王を産む魔女を探す。
あまりにも現実味のない話だった。
「なぜ……自分なのですか?」
ゲンシンが尋ねると、ソウゲンは静かに答えた。
「お前が、何故ここで外交官をやっているのかは知っておるぞ」
「……」
「両親のこともある。争いに巻き込まれ、多くの犠牲が出た。だからお前は、これ以上争いで命を失う者を増やしたくないと思っておるのじゃろ?」
ゲンシンは黙ったまま、拳を握りしめた。
それは、誰にも話したくなかった自分の過去だった。
「だったら、これはお前自身の手で未来を変える好機だ」
ソウゲンは立ち上がると、ゲンシンの肩に手を置いた。
「自ら各地へ出向き、思いを託せる魔女を見つけ出せ。そして、その者とともに新しい王を誕生させるのだ」
「……自分に、そんなことができるのでしょうか」
「できるかどうかではない。お前には、それを成し遂げるだけの勇気がある」
しばらく考えた後、ゲンシンはゆっくりと顔を上げた。
「……わかりました」
その返事を聞き、ソウゲンは満足そうに頷いた。
「それでは急いで緑領へ戻り、捜索を開始するんじゃ。魔女の儀式まで、残された日は少ないぞ」
古くからの言い伝えでは、死者の魂は四十九日を過ぎると霊界へ旅立つとされている。
それまでに、何としても魔女を見つけ出さなければならない。
ゲンシンは一刻も早く緑領へ戻るため、すぐに身支度を始めた。




