第一話 国王の逝去
五彩国の四つの領土に、大きな鐘の音が響き渡った。
体調を崩し、長く病の床に臥せっていた国王の逝去を知らせる鐘だ。
その知らせを受け、政治の中心である黒領へ四つの領土の司祭たちが集まり、会議が始まった。
各地から司祭が集まるまでに、すでに丸一日以上が経過している。
武力を重視し、軍事を担う紅領。
魔術によって国を治める紫領。
農業によって国を支える黄領。
そして、交易によって国を支える緑領。
それぞれ異なる役割を持つ四領の司祭たちは、同じ円卓を囲み、国王亡き後の「魔女の儀式」について議論を交わしていた。
議題は、亡くなった王の生まれ変わりを迎えるため、古くから行われてきた「魔女の儀式」を再び執り行うかどうかだ。
国王が亡くなると、速やかに各領土から魔女の候補者を集め、その中から王の生まれ変わりの魂を宿した子を懐妊させる。
それが、古くから五彩国に伝わる王位継承の仕来りだった。
しかし、前回の王の生まれ変わりが誕生してから、すでに七十年以上の歳月が流れている。
長い年月の中で、魔女という家系そのものが曖昧になってしまった領土さえある。
「今さら、昔の仕来りを持ち出す必要があるのでしょうか」
そう口にする者もいた。
だが、四領には簡単に廃止できない事情があった。
王の生まれ変わりを自領から出した領土が、その後の国政を主導する。
それが、今なお残る古い習わしなのだ。
現在、国の政治を執り行っているのは、前回の国王の生まれ変わりが誕生した紅領である。
しかし、紅領が政治の権力を握っていたこの七十年間、近隣諸国との争いは絶えず、多くの犠牲が出ていた。
各領の司祭たちは、そのことを苦々しく思っていた。
外交を得意とする緑領は、特にその傾向が強い。
そして何より、次の王を自領から出すことができれば、国政の主導権を握り、領土をさらに発展させる好機となる。
それぞれの思惑が交差した末、司祭たちはついに結論を出した。
「……魔女の儀式を行う」
こうして、七十年以上の時を経て、再び各地の魔女を探すことが決まった。
会議が終わると、四領の司祭たちはそれぞれ行動を開始する。
緑領の司祭であるソウゲンは、一人の青年に会うため、緑領大使館を訪れていた。
四領の司祭たちは普段、それぞれの領土を治めているため、政治が行われる黒領には各領の大使館が置かれているのだ。
「ゲンシンはいるか?」
司祭が尋ねると、奥から一人の青年が姿を現した。
「はい。お呼びでしょうか?」
青年の名は、ゲンシン。
普段は領地で政務を執る司祭が、わざわざ自分に会いに来た。
それだけで、ゲンシンは胸騒ぎを覚えた。
(国王関連のことに間違いないな)
その予感は的中していた。
ただし、この後に告げられる話が、ゲンシンですら予想しない方向へと話は進んでいった。




