tozanndou
ドガッ。
あっぶな!あと一秒手をつくのが遅れていたら、枝と私が一体化するところだった。
控えめについている上腕二頭筋に力を込め、微かに震える手足に叱咤激励を送りながら立ち上がる。
ふぅ〜、ひやっとしたぜぇ!
愛娘の危機にうちのとっつぁんはどんなリアクションを見せてくれるのかなぁ?もしかして数十年ぶりに全力疾走、、、とまではいかなくても久々に驚いた顔が見られるんじゃ?
と控えめに周囲を見渡すと、そこには藪の中に消えてゆく愛しき父の姿が。
っおーい!早い早い!もう少し娘を気遣って?大丈夫の一言くらいあってもいいじゃない!確かに多少転んだくらいじゃ壊れない丈夫な出来ですけど、ハートは繊細だからね?
ため息とも息切れとも区別がつかない何かを吐き出すついでに、しばし足を止めることにした。父が見えなくなればそこにあるのは森と私だけである。
「きれい」
木々は日光から私を守るように柔らかく覆いかぶさり、夏の終わりに独特の、落ち着いた緑を宿していた。サワサワと木の葉が擦れる音と、遠くに聞こえる山鳥の声に耳を傾けているうちに心身の震えが治まっていくのを感じた。
今日は久々に休みが被ったため、普段から運動をしない私でも登れる山に父が連れてきてくれたのだった。
父は普段から休みのたびに近隣の山にのぼり山荘を管理する団体にも所属しているらしい。定年退職したら、毎日違う山に登っていつか日本中の山を制覇したいと少年のように瞳を輝かせて語る父は、いつもより身近に感じた。
だからって、鍛錬の成果を今ここで見せつけなくても!!
たまの娘との逢瀬なんだからちょっとくらいおしゃべりしながら歩いたっていいのに。
この歳になって転んだことに対する八つ当たりか、はたまた自分を顧みてくれない親への反抗心か。
プリプリしながら薮へ消えた背中を追う。
その時だった。
「うわぁぁあぁぁおぉぉおぉうぅぅ」
落下する赤い帽子の髭おじさんのような奇声とともに、ドダダダダダダ!という重量感のある足音が激しく斜面を降っていく音がした。
周りに私以外の人間は1人しかいないことは確認済みだ。
私は口角をあげこういった。
「大丈夫〜〜〜???」




