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第四話 レオン不在 パレットバトラーズ崩壊の一週間

レオンが消えた瞬間から、街の歯車は狂い始めた。

影は増え、仲間は倒れ、敵は笑う。

たった一週間で、レイフォール区は地獄に変わった。

そして――最悪は、まだ始まったばかりだった。

【レイフォール区・一週間後】

レオンが消えてから一週間。


その間、レイフォール区では異常な現象が続いていた。


スプロットの数が――増えている。


以前は数体出れば大騒ぎだったはずが、

今では十数体、時には二十体以上が同時に現れることも珍しくなかった。


アレサは斧を振り下ろしながら歯を食いしばる。


アレサ「……くそっ、また増えてやがる!」


黒い霧が弾け、スプロットが崩れ落ちる。

だが倒しても倒しても、次の影が湧き出すように現れる。


ノヴァ「アレサ、右……」


アレサ「分かってる!」


二人は背中合わせに戦いながら、押し寄せるスプロットの群れを必死に食い止めていた。


市民の避難は間に合っていない。

悲鳴が遠くで上がり、建物の影から子供が泣きながら走り出す。


アレサ「ノヴァ! あの子を!」


ノヴァ「……」


ノヴァの魔力弾がスプロットの足を撃ち抜き、

アレサが斧で止めを刺す。


だが――


この一週間、状況はずっと“じり貧”だった。


倒しても倒しても敵は減らない。

むしろ増えている。


まるで誰かが意図的に“供給”しているかのように。


アレサ「……レオンがいれば、もっと楽に片付くのに」


ノヴァ「…………」


その時だった。


通信機から緊迫した声が響く。


『――シャドウを確認! レイフォール区北側、旧工場跡!』


アレサ「……シャドウだと!?」


ノヴァ「……アレサ」


アレサ「ああ!」


二人はスプロットを振り切り、全力で駆け出した。


【旧工場跡】

崩れた鉄骨が並ぶ廃墟の中央に、

黒いローブの男が静かに立っていた。


シャドウ「……来たか。パレットバトラーズ」


アレサは斧を構え、怒りを隠さずに叫ぶ。


アレサ「シャドウ……! レオンをどこへやった!」


シャドウはフードの奥で笑ったように見えた。


シャドウ「教える義理はないな」


アレサ「ふざけるな!!」


アレサが踏み込む。


だがシャドウは杖を軽く振るだけで、

見えない衝撃波がアレサを弾き飛ばした。


ドッ!!


アレサ「ぐっ……!」


ノヴァ「アレサ……」


ノヴァが魔力弾を放つが、

シャドウは指先で軽く弾き、霧のように消す。


シャドウ「弱いな。レオンがいないと、ここまで脆いか」


アレサ「……言わせておけば!」


アレサが再び突っ込もうとした瞬間――


ズシンッ!!


地面が揺れ、巨大な影が現れた。


オークグラットン「ハハハ! また会ったな!」


ノヴァ「……!?」


アレサ「オークグラットン……! 上等だ……!」


【激突】

アレサはオークグラットンのアームを斧で受け止め、火花が散る。


ガギィィン!!


オークグラットン「力だけは褒めてやる!」


アレサ「光栄だね! その余裕、いつまで続くか見ものだよ!」


ノヴァは後方から魔力弾を連射し、アレサの動きに合わせて援護する。


ノヴァ「アレサ……」


アレサ「了解!」


アレサが左へ跳び、

ノヴァの魔法がオークグラットンの足元を爆破。


オークグラットン「ぐっ……!」


アレサ「今だ!!」


アレサの斧がオークグラットンの肩に深く食い込む。


シャドウ「《マナ・シフト》」


紫の魔力が走り、アレサの斧が弾かれた。


アレサ「っ……!」


シャドウ「グラットン。情けないやつめ」


オークグラットン「うるせーな! お前からやってやろうか!?」


ノヴァが大きく魔力を溜める。

空気が震え、地面が光る。


ノヴァ「《アーク・バースト》!!」


巨大な光の奔流がオークグラットンを直撃し、その巨体が後方へ吹き飛ぶ。


アレサ「よし……!」


シャドウ「甘い」


シャドウが杖を振ると、オークグラットンの周囲に黒い魔法陣が展開される。


オークグラットン「ハハハ! 助かったぜ!」


アレサ「くそっ……!」


オークグラットンがアームを振り上げる。

その動きは、先ほどよりも速い。


シャドウ「《強化》を施した。次は……避けられまい」


アレサ「ノヴァ、下がれ!!」


だが間に合わない。


オークグラットン「《クラッシュ・インパクト》!!」


ズドォォォンッ!!


衝撃波が地面を割り、

ノヴァの身体が吹き飛んだ。


ノヴァ「――っ!!」


アレサ「ノヴァァァ!!」


ノヴァは瓦礫に叩きつけられ、崩れ落ちる。


ノヴァ「……スマ……ナイ……」


アレサ「喋るな!!」


シャドウ「ここはもう崩壊する。さらばだ、パレットバトラーズ!」


オークグラットン「生きてたらまた会おう! ハハハ!」


二人は黒い霧に包まれ、姿を消した。


アレサはノヴァを抱きかかえ、震える声で叫ぶ。


アレサ「ノヴァ! しっかりしろ!!」


ノヴァは意識を失い、

そのまま戦線離脱を余儀なくされた。


アレサは空を睨みつけ、歯を食いしばる。


アレサ「シャドウ……オークグラットン……絶対に許さねぇ……!」


レオン不在の一週間。

その中でも最悪の夜が、静かに幕を下ろした。


【パレットバトラーズ緊急会議】

本部の会議室は、いつもよりも広く感じた。


椅子は六つ。

だが座っているのは――四人だけ。


アレサ、アルト、イリス、ヴァルカ。


レオンの席は空白のまま。

ノヴァの席には白い布がそっと掛けられていた。


アレサは深く息を吸い、皆の視線を受け止める。


アレサ「……報告する。レイフォール区の地下構造は、完全に崩壊した」


イリス「崩壊……?」


アレサ「ああ。あの“祭壇”があった場所は跡形もない。通路も、部屋も、魔力痕すら……ほとんど消えていた」


ヴァルカ「……消された、ということか。敵が証拠を隠滅した可能性が高いな」


アレサは頷き、続けた。


アレサ「そして……レオンのシグナルは依然としてゼロだ。転移の痕跡も、追跡可能な座標も残っていない」


イリスは唇を噛み、震える声で言う。


イリス「レオン……本当に……どこに……」


アルトは静かに手を伸ばし、イリスの肩に触れた。


アルト「大丈夫。レオンは生きてる。あいつは……そういう男だ」


イリスは小さく頷いたが、目の奥の不安は消えない。


アレサは続ける。


アレサ「そして……ノヴァだが」


部屋の空気がさらに重く沈む。


アレサ「現在、メトロポリス区の医療施設で治療中だ。オークグラットンの《クラッシュ・インパクト》のダメージが深刻で……しばらく戦線には戻れない」


イリス「そんな……ノヴァまで……」


ヴァルカ「治療の見込みは?」


アレサ「命に別状はない。だが……魔力回路の損傷が大きい。完全回復には時間がかかる」


アルトは静かに目を閉じた。


アルト「……これで、俺たちは四人か」


アレサ「レオン不在、ノヴァ離脱。戦力は半減したと言っていい」


ヴァルカ「そのうえ、スプロットの数は増え続けている。この一週間で市民被害は倍増だ。このままでは……街が持たない」


イリス「どうして……どうしてこんなに増えてるの……?」


アレサ「原因は……シャドウだ」


アルト「シャドウ……また現れたのか」


アレサ「ノヴァと二人で向かったが……奴は“確信犯”だ。スプロットを増やし、街を疲弊させ、俺たちを削っている」


ヴァルカ「敵の目的は“消耗戦”か。こちらの戦力が落ちたところで……本命を動かすつもりだな」


アレサ「さらに……オークグラットンも健在だ。前回の戦闘でダメージを与えたが……奴はシャドウの魔術で強化されていた」


イリス「二人同時……今の私たちじゃ……」


アルト「だが、逃げるわけにはいかない。レオンを取り戻すためにも……ノヴァのためにも……街を守るためにも」


アルトはゆっくりと立ち上がった。


アルト「……作戦を立てよう。敵の目的、行動パターン、スプロットの増加原因……全部洗い直す。レオンの位置も、必ず突き止める」


ヴァルカ「シャドウの魔術体系、オークグラットンの強化痕……何か手がかりがあるはずだ」


イリス「私も……できることをする」


アレサは深く頷き、最後に言った。


アレサ「レオンが戻るまで、俺たちが踏ん張るんだ」


その言葉に、全員が静かに頷いた。


レオン不在。

ノヴァ離脱。

敵は増え続け、街は疲弊している。


残された四人の瞳には、確かな“闘志”が宿っていた。


レオンがいなくなった一週間は、パレットバトラーズにとって残酷な現実でした。

彼がどれほど戦線を支え、どれほど皆の心の中心にいたのか。

年長者はその強さに甘え、若手はその背中を“当たり前”だと思っていた。


けれど、レオンがいないだけで街は崩れ、仲間は倒れ、敵は笑った。

スプロットの異常増加も、シャドウの再来も、オークグラットンの強化も――

すべてが、レオン不在の隙を狙ったかのようでした。


彼はただの戦力ではなく、パレットバトラーズの象徴であり、希望そのものだったのだと、残された四人は痛いほど理解します。


そして、今回の章を通して、読者の皆さんにも少しでも伝わっていれば嬉しいです。

レオンというキャラクターが、どれほど特別で、どれほど頼もしく、どれほど“心を掴む存在”なのか。


そういった気持ちが、作品づくりの中で自然と滲み出ればいいなと思って書きました。

レオンが戻ってきた時、この物語は必ず大きく動き出します。

その瞬間を、どうか見届けてください。

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