第三話 消えた通路 ※毎週日曜更新
今回の第三話では、物語が一気に動きます。
セントラルでの異常事態、謎の男ルージュ・ファング、そしてレイフォール区で起きていた“もう一つの事件”。
仲間のレオンに何が起きたのか――。
緊迫した展開が続きますが、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
【本部・緊急会議室】
アルトとイリスが本部へ戻ると、アレサとヴァルカ、そしてノヴァがすでに待っていた。
アレサ「戻ったか。二人とも無事でよかった。……状況を聞かせてくれ」
アルトは深く息をつき、落ち着いた声で話し始めた。
【アルト&イリスの報告】
アルト「まず……スプロットが大量に出てきた。あれだけの数が一度に現れたのは初めてだ」
ヴァルカ「セントラルでスプロットの大量発生……嫌な流れだな」
アルトは頷き、次の報告へ移る。
アルト「それと……“ルージュ・ファング”と名乗る男が現れたんだ」
アレサ「ルージュ・ファング……?」
イリスは肩を押さえながら続ける。
イリス「双剣の使い手で、スプロットをまとめて斬り捨てるほどの腕前だった」
アルト「相当な実力者だ。魔術師とは関係ないと思う」
ヴァルカ「つまり、セントラルの“魔術師”とは別の存在……?」
アルト「うん」
ヴァルカ「お前が相手でも苦戦しそうなのか?」
アルト「そうだね。奴の本気はまだ底が見えない。暫く交戦したんだけど、それから“時間だ”と言って消えた。何かの計画だったのかも」
アレサ「……厄介な相手だな」
アルトは静かに拳を握る。
イリス「アルト……」
【アレサの報告(レオン行方不明・敵幹部との遭遇)】
アレサは深く息を吸い、静かに、しかし押し殺した怒りを滲ませて口を開いた。
アレサ「……レオンの件だ。俺が見たことを、全部話す」
室内の空気が一気に張り詰める。
アレサ「レイフォール区に着いた時、住民がスプロットに連れ去られそうになっていた。レオンと協力して殲滅したが……問題はその後だ」
イリス「……その後?」
アレサ「スプロットが“逃げた”。まるで俺たちを誘うように、地下通路へ走っていった」
アレサ「追った先の奥には……巨大な“祭壇”があった。市民が拘束され、子供まで連れ去られていた」
ノヴァ「…………」
アレサ「ああ。そして――そこで奴らに遭遇した」
アレサの声が低くなる。
アレサ「黒ローブの男……“シャドウ”。強力な魔力操作を使う魔術師だ。レオンが応戦したが、奴は空間を歪ませるような魔法まで使ってきた」
ヴァルカ「空間操作級……? そんな魔術、存在するのか?」
アレサ「さらに……幹部級の怪物“オークグラットン”も現れた。戦車を砕くという巨大アームを持つ化け物だ。だが相手はレオンだ、そんなに心配は要らなかった」
アレサ「だが、子供たちを連れたスプロットが奥へ逃げ、レオンはそれを追った。その瞬間だ」
アレサは拳を握りしめ、悔しさを噛みしめる。
アレサ「通路が……急に“消えた”。さっきまで続いていた道が、一瞬で“壁”になった。まるで最初から存在しなかったみたいに」
アルト「……消えた?」
アレサ「ああ。そして同時に……レオンのシグナルが途絶えた。今も反応は戻っていない」
ノヴァ「……もう数時間、完全に沈黙……」
イリス「アルト……」
アルトは静かに目を閉じ、深く息を吸った。
アルト「大丈夫だ。あいつはそんな簡単に死ぬ男じゃない」
アレサはわずかに頷く。
アレサ「……ああ。だが敵は、俺たちが想像していた以上に大きい組織だ。シャドウ、オークグラットン……あれは序列の一部にすぎないかもしれない」
ヴァルカ「まずは情報を整理しよう。敵の正体、目的、そしてレオンの位置……必ず手がかりはあるはずだ」
本部の空気は重く沈みながらも、その奥には確かな“決意”が宿っていた。
【レイフォール区・少し前】
地鳴りが心臓の鼓動のように周期的に響いていた。
レオンとアレサは無言のまま区の中心へ向かって歩く。
レオン「一体何が始まろうとしているんだ」
アレサは周囲を見渡しながら低く息を吐いた。
アレサ「黒ローブの男といい、エネルギーキューブを盗む奴ら……恐ろしい組織であることは否定できない」
レオン「もうすぐ中心だ」
その時だった。
――カン……カン……
金属が落ちるような音が路地の奥から響いた。
アレサ「……今の、聞こえたか?」
レオン「ああ。行くぞ」
二人は音のする方へ駆け出した。
【レイフォール区・裏路地】
薄暗い裏路地に光はほとんど届かず、霧が足元を這うように漂っていた。
アレサ「……誰かいるか!」
返事はない。
ただ、霧の奥で“何か”が動いた。
レオン「アレサ、構えろ」
アレサは斧を構え、レオンは剣に手を添えた。
霧の中から――
ギギギギ……
黒い影がゆっくりと姿を現した。
アレサ「スプロット……!」
レオン「数は三体か。行くぞ!」
レオンが踏み込み、アレサが横から援護する。
レオンの剣が一体を斬り裂き、
アレサの斧がもう一体のコアを貫く。
アレサ「残り一体!」
レオン「任せろ!」
レオンが踏み込み、剣を振り抜いた――その瞬間。
スプロットはまるで“逃げるように”後退し、路地の奥へ走り出した。
アレサ「逃げる……? スプロットが?」
レオン「追うぞ!」
【地下通路入口】
スプロットが飛び込んだ先は、古い建物の裏にある“地下通路の入口”だった。
アレサ「こんな場所に……通路なんてあったか?」
レオン「いや、地図にはない。だが――行くしかない」
アレサ「了解」
二人は通路へ足を踏み入れた。
【地下通路】
通路は異様なほど静かで、壁には古い配管がむき出しになっていた。
アレサ「……嫌な感じがするな」
レオン「気を抜くな。スプロットが誘ってる可能性もある」
アレサ「誘う……?」
レオン「“罠”の可能性が高い」
【レイフォール区・地下祭壇】
階段を降りた瞬間、空気が変わった。
重い。肌が刺されるような魔力の圧。
地響きはさらに強くなり、まるで“心臓の鼓動”のように周期的に響いていた。
アレサ「……ここ、何だ……?」
レオン「魔力濃度が異常だ。気を抜くな」
視界が開ける。
そこには――巨大な“祭壇”があった。
中央には黒い紋様が刻まれ、
その周囲には数十人の市民が集められている。
子供の泣き声が石壁に反響した。
アレサ「……っ! 子供まで……!」
レオン「スプロットの仕業か……!」
スプロットたちが二人に気づき、襲いかかる。
ギギギギギ……!!
アレサ「来るぞ!」
レオン「まとめて来い!」
レオンの剣が閃き、アレサの斧が風を裂く。
黒い霧が次々と弾け飛ぶ。
アレサ「レオン! 市民を奥へ連れていってる奴らがいる!」
レオン「逃がすか!」
奥の通路へスプロットが市民を押し込んでいく。
追うレオンの前に――黒いローブの男が立ちはだかった。
ゆらりと揺れる黒い布。
フードの奥の表情は見えない。
ただ“笑っている”気配だけが伝わる。
シャドウ「私の名はシャドウ。歓迎しよう、パレットバトラーズ」
アレサ「お前が……!」
レオン「“シャドウ”か」
シャドウは杖を軽く振った。
瞬間、空気が歪む。
ドッ!!
見えない衝撃波が走り、祭壇の石床が砕け散った。
アレサ「魔力操作……!」
レオン「来いよ。相手してやる」
レオンが踏み込み、シャドウと激突する。
剣と杖がぶつかり、魔力の火花が散る。
シャドウ「くぅ……速い!」
レオンの連撃に押され、シャドウは後退する。
アレサはスプロットをなぎ倒しながら叫ぶ。
アレサ「レオン! 奥の通路が――!」
シャドウ「おい! 見えてるだろ! 早くしろ!」
シャドウは逃げるように後退した。
レオン「逃がすか!」
レオンは即座に追った――
その瞬間。
通路が“消えた”。
さっきまで続いていた道が、一瞬で“壁”になった。
アレサ「……っ!? 通路が……!」
レオンの姿は、もうどこにもなかった。
アレサ「レオン!!」
返事はない。
ただ、冷たい石壁だけが残っていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
レオンの消失、シャドウの登場、そして地下祭壇の存在――
敵の規模が一気に見えてきた回でした。
アレサの悔しさ、アルトの静かな怒り、イリスの不安。
それぞれの感情が動き始め、物語も大きく加速していきます。
次回は、レオンの行方を追うために本部が動き出します。
新たな手がかり、そして新キャラも登場予定です。
引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。




