第二話 セントラル騒乱と赤い影 ※毎週日曜更新
第1話では、アルトたちの“いつもの日常”が少しずつ崩れ始めました。
そして第2話では、ついに強烈な新キャラが登場します。
書いてる本人も「こいつ絶対トラブル起こすやつだ…」と思いながら筆を進めました。
テラの空気が変わり始める瞬間を、ぜひ楽しんでください
【本部・緊急会議室の直後】
会議室を出ようとしたアルトとイリスを、レオンが呼び止めた。
レオン「アルト、イリス。少し頼みたいことがある」
アルト「ん? なんだよレオン。説教ならもう十分だぞ」
イリス「アルト……黙って」
レオンは苦笑しつつも、すぐに真剣な表情へ戻る。
レオン「セントラルテラ区の追加パトロールだ。爆発の後で市民が落ち着いていない。“黒いローブの人物”の目撃情報も気になる」
アルトの顔から軽さが消えた。
アルト「……つまり、まだ何か潜んでるってことか」
レオン「可能性は高い」
イリスは小さく頷く。
アルトは拳を軽く打ち合わせ、いつもの調子を取り戻した。
アルト「任せとけって。セントラルは俺たちが守る」
イリスが装備の準備に向かったあと、アルトはふと足を止め、窓の外へ視線を向けた。
遠くのセントラルテラ区には、まだ爆発の名残の煙が薄く漂っている。
街の光が揺れ、どこか落ち着かない。
手すりに寄りかかり、街を見下ろす。
昼間の子供たちの笑顔が脳裏に浮かんだ。
「アルトー! 遊ぼー!」
「またねー!」
その声と、さっき聞いた悲鳴が頭の中で交錯する。
アルト「……俺たちでテラの平和を守らないとな」
ぽつりと呟く。
シャドウマーケットの噂が頭をよぎる。
アルト「シャドウマーケット復活? いやいや、そんなバカな……」
苦笑しながらも、レイフォールの不気味な気配とセントラルの爆発は現実だ。
アルト「……考えても仕方ねぇか」
空を見上げて笑う。
子供たちの笑顔、レイフォールの静けさ、セントラルの混乱――全部が胸に刺さる。
アルトは拳を握った。
イリス「アルト、準備できたよ。行こ?」
アルトは振り返り、いつもの笑顔を浮かべる。
アルト「おう! 任せとけって!」
二人は並んで歩き出し、セントラルテラ区へ向かった。
【本部・司令室】
その頃、本部では警報が鳴り響き、赤いライトが点滅していた。
オペレーター「レイフォール区より緊急シグナル! 反応速度が異常に早いです、原因は不明!」
ヴァルカ「……またレイフォール区か。今までのパトロールじゃ影も形も掴めなかったのに……これは、ただ事じゃないぞ」
モニターには白い霧のような光が街路を覆い、地面が微かに震えている映像が映っている。
レオンがすぐに前へ出た。
レオン「行く。アレサ、来てくれ」
アレサ「了解。すぐ動けるよ」
ヴァルカは眉をひそめ、二人に近づく。
ヴァルカ「……気をつけろよ。今回の反応、何かが違う。何が起きてるのかも分からん」
レオンは力強く頷く。
レオン「このまま放っておくわけにはいかない」
アレサ「急ごう。シグナルがここまで早いのは初めてだ」
ノヴァは無言のまま、モニターを見つめていた。
【セントラルテラ区・夜】
ネオンが揺れ、街の喧騒が少しずつ落ち着き始めた頃。
アルトとイリスは爆発現場周辺の聞き込みを続けていた。
イリス「……黒いローブの人、やっぱり何人も見てるみたいだね」
アルト「魔術師だの何だのって話は眉唾だけどよ。まぁ、何かが動いてるのは確かだな」
イリスは不安げに唇を噛む。
イリス「ほんとに、何が起ころうとしているんだ……」
アルトは険しい顔で周りを見渡す。
二人は避難誘導をしながら通りを進む。
アルト「こっちの通りは危ない! 駅の方へ!」
イリス「怪我してる人は僕が誘導します! こっちです!」
市民たちが散り散りに避難していく中、街の奥から妙な金属音が響いた。
カン……カン……カン……
イリス「……今の音、嫌な感じ……」
アルト「ああ。行くぞ」
二人が音のする方へ向かうと――
闇の中から複数の影がゆらりと姿を現した。
【スプロット出現】
アルト「……スプロットかよ!」
イリス「えっ!? 数多すぎない??」
スプロットたちは黒い霧のようなエネルギーをまとい、ギギギ……と不気味な音を立てながら迫ってくる。
アルトは長剣を抜き、刃を構えた。
アルト「イリス、後ろの通りを塞げ! 市民を逃がす!」
イリス「わ、分かった!」
イリスは素早く後退し、弓を構える。
光の矢が弦に宿り、次々と放たれた。
シュッ、シュッ、シュッ!
矢は正確にスプロットのコアを射抜き、黒い霧が散る。
アルトは前へ飛び込み、長剣を振り抜いた。
ザシュッ!
一体が真っ二つに裂け、黒い粒子が舞う。
イリス「アルト、右から三体来るよ!」
アルト「任せろ!」
アルトは地面を蹴り、回転しながら三体を一気に斬り払う。
だが――
イリス「ま、まだ来る……っ!」
通りの奥から、さらに数倍のスプロットが現れた。
アルト「くそっ、湧きすぎだろ!」
イリス「市民は逃がした! あとは……倒すだけだよね!」
二人は背中合わせになり、迫り来る群れに立ち向かう。
イリスの矢が雨のように降り注ぎ、
アルトの剣が光の軌跡を描く。
その瞬間――
【ルージュ・ファング登場】
――ズバァッ!!
スプロットの群れが、一瞬で真っ二つに裂けた。
イリス「えっ……?」
アルト「おいおい……なんだよ今の斬撃……」
闇の中から男が歩み出る。
鍛え抜かれた体。
腰に下げた二本の双剣。
獣のようにしなやかな歩き方。
そして“戦いを楽しむ者”の目。
ルージュ・ファング「よぉ。なんか面白そうな音がしたから来てみたら……お前ら、結構やるじゃねぇか」
アルト「……誰だよ、お前」
ルージュは豪快に笑い、双剣を抜いた。
ルージュ・ファング「いいねぇ。丁度遊び相手を探してたんだよ」
イリス「遊び……?」
ルージュ「今日は退屈でな。戦いってのはエンターテインメントだ!」
イリスが矢をつがえた瞬間――
ルージュの姿が消えた。
イリス「っ……!」
次の瞬間、イリスの弓が弾かれ、身体が横へ吹き飛ばされた。
イリス「アルト!ウワーーーー……!」
アルト「イリス!!」
イリスは壁に叩きつけられ、肩を押さえて苦しむ。
ルージュ・ファング「弓で剣士に近づくと危ないぜ?」
アルトの目が鋭く光る。
アルト「……てめぇ……!」
アルトが飛び込み、長剣を振り下ろす。
ルージュは双剣で受け止め、火花が散る。
ガキィィン!!
ルージュ「ほぉ……いいじゃねぇか。なかなかの剣筋だ! 気に入った。お前の名前聞いといてやるよ! 俺はルージュ・ファングだ」
アルト「光栄だね! 俺はアルトだ!」
アルトは連撃を叩き込む。
ルージュは双剣で受け流し、時に弾き、時に斬り返す。
金属音が爆発音のように連続し、火花が雨のように散った。
ルージュ「ハハッ! いいぞアルト!もっと来いよ!」
アルト「言われなくとも!」
アルトの剣が横薙ぎに走る。
ルージュは紙一重で避け、逆に双剣で斬り返す。
アルト「っ……!」
頬に浅い傷が走る。
アルト「こいつ、相当強い!」
ルージュは楽しそうに笑った。
ルージュ・ファング「まずまずといったとこか!ふっ。もっと遊んでいたいところだが、今日はただの挨拶。そろそろ約束の時間なんでな!」
アルト「逃げる気かよ!」
ルージュ「逃げる? 違ぇよ。“続きはまた今度”ってだけだ」
赤い風が巻き起こり、ルージュの姿が霧のように消えていく。
ルージュ・ファング「また遊ぼうぜ、アルト。次はもっと楽しませてくれよ」
アルト「待て!!」
手を伸ばすが、ルージュは完全に消えた。
アルト「イリス! 大丈夫か!?」
イリス「イッタァ……でも急所は外れてる……(ほんと死ぬところだった)」
【ヴァルカからの無線】
その直後、アルトの通信機が激しく鳴る。
ヴァルカ『アルト! イリス! 聞こえるか!』
アルト「ヴァルカ!? どうした!」
ヴァルカの声はわずかに乱れていた。
ヴァルカ『レオンが……レイフォール区で……行方不明になった!!』
アルト「……は?」
イリス「レオンが……?」
ヴァルカ『レイフォール区のシグナルが……完全に途絶えた!』
アルトは拳を握りしめ、歯を食いしばる。
アルト「……レオン……!」
夜のセントラルテラ区に、不穏な風が吹き抜けた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ルージュ・ファングという強烈な存在が現れ、アルトたちの前に新たな壁が立ちはだかりました。
そしてレオンの行方不明――。
テラの均衡が崩れ始める中、次回はレイフォール区の“真相”に少しだけ触れていきます。
続きもぜひお付き合いください。




