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第十六話 混沌の坑道、三者三様の極限

北・南・中央――三つの戦場が同時に限界へ突き進む。

アレサは槍筋を読み切り、スパインを追い詰める。

イリスは光で影を裂き、シャドウの逃走を封じる。

そしてアルトの前には、最悪のタイミングで“レオン”が現れる。


それぞれが、それぞれの理由で退けない。

坑道全体が震える中、三つの死闘が交錯し始める。

【北側坑道:アレサ、巻き返し開始】

スパインの槍が閃くたび、アレサの盾に火花が散る。


スパイン「まだ受けるだけですか?」


アレサ「……悪いな。そろそろ“見えてきた”んだよ」


スパインの眉がわずかに動く。


アレサは深く息を吸い、盾を構え直した。


アレサ(心の声)

(こいつの槍筋……最初は速すぎて見えなかったが……

癖がある……!

突きの前に、必ず肩がわずかに沈む……!)


スパインが踏み込む。


スパイン「では、もう一度――」


アレサは盾を斜めに構え、槍の軌道を“先読み”して受け流した。


ガギィィンッ!!


スパイン「……っ!?」


アレサ「読めたぜ」


【スパイン、焦りの兆候】

スパインはすぐに体勢を立て直すが、

その瞳にはわずかな焦りが宿っていた。


スパイン(心の声)

(……おかしい。この男……ここまで対応できるはずが……)


アレサは戦斧を振り上げ、スパインの槍を弾く。


アレサ「どうしたよ。余裕の顔はどこ行った?」


スパイン「……口が過ぎますよ」


スパインは再び槍を構え、連撃を繰り出す。


だが――

アレサはすべてを読み切っていた。


盾で受け、

斧で弾き、

足運びで死角を潰す。


アレサ(心の声)

(だてに何十年も前線にいたわけじゃねえんだ!おっさんをなめるなよ……)


【互角の激戦へ】

スパインの槍が月光のように走る。


アレサの斧が雷のように唸る。


ヒュンッ!

ガギィィンッ!

バチィィッ!


坑道の空気が震え、壁に亀裂が走る。


スパイン「……っ……!」


アレサ「はぁっ!!」


スパインは後退しながら槍を回し、アレサの斧を受け流す。


スパイン(心の声)

(……想定外だ。この男……ここまで強かったか……!?)


アレサは盾で槍を弾き、斧を振り下ろす。


アレサ「おらぁッ!!」


スパインは紙一重で避けるが、頬に浅い傷が走った。


スパイン「……っ……!」


アレサ「どうしたよ。余裕の笑みはどこ行った?」


スパインは無言で槍を構え直す。

その表情には、もう“余裕”はない。


【泥仕合の様相へ】

二人の戦いは、もはや“優雅な槍術”でも

“堅実な盾斧戦”でもなかった。


盾で殴り


槍で払い


斧で押し込み


蹴りで距離を取り


壁を使い


地面を滑り


互いの武器が肉をかすめる


血が飛び散り、

息が荒くなり、

足元はふらつき始める。


スパイン「……はぁ……はぁ……あなた……本当に……格下なのですか……?」


アレサ「お前が勝手に決めつけてただけだろ……!」


スパインの槍が震える。

アレサの斧も血で濡れている。


二人の戦いは、アルトとファングの泥仕合と同じく――

完全な“死闘”へと変わっていた。


スパイン(心の声)

(……こんなはずでは……!私は……ヴァルカと戦うはずだった……!なのに……!)


アレサ(心の声)

(負けねぇ……!ここで負けたら……ヴァルカにも……アルトにも……顔向けできねぇ……!)


二人は再び踏み込み、武器が激しくぶつかり合う。


ガギィィィィンッ!!


坑道全体が震えた。


【南側坑道:イリス vs シャドウ、決着前夜】

シャドウは影の中を滑るように逃げ続けていた。

だがイリスの七色の光は、その逃走ルートを次々と潰していく。


イリス「……逃がさないよ」


シャドウ「……しつこいやつだ」


イリスの矢が壁を跳ね、影の裂け目を貫く。


シャドウは影から飛び出し、距離を取る。


シャドウ(心の声)

(……ここまで追い詰められるとは。…本当に厄介なやつだな)


イリスは冷静だった。

呼吸も乱れていない。

目はシャドウの動きを完全に捉えている。


イリス(心の声)

(シャドウの空間魔法……でも、攻撃の“間”は変わらない……読める……!)


【イリス優勢:光が影を追い詰める】

イリスが矢を放つたび、坑道が七色に染まる。


シャドウは影の中へ逃げ込むが、イリスの光は影を裂き、逃げ道を奪っていく。


シャドウ「……ッ……!」


イリス「もう……終わりにしよう」


シャドウは初めて、イリスを“対等な敵”として見た。


シャドウ(心の声)

(……幹部である私が……ここまで追い詰められるとは)


シャドウは槍を構え、静かに覚悟を決めた。


シャドウ「……いいだろう。お前を“敵”と認めようじゃあないか…」


イリス「最初からそうすればよかったね」


【死闘へ:シャドウの反撃】

シャドウの影が膨れ上がり、空間が歪む。


シャドウ「《シャドウ・ディバイド》」


影が分裂し、複数のシャドウがイリスを囲む。


イリス「……!」


シャドウ「逃げ場はありません」


影の刃が四方から迫る。


イリスは矢を放ち、影を撃ち抜くが――


一体が背後から現れ刃を振り下ろした。


シャドウ「終わりだ…」


イリス「っ……!」


イリスは腕で受け、浅い傷が走る。


イリス「……痛っ……!」


シャドウ「いい表情だ…」


イリスは後退しながら、必死に距離を取る。


イリス(心の声)

(……まずい……シャドウの攻撃が……避けられない……!)


シャドウは冷静に追い詰めていく。


シャドウ「残念……経験が足りなかったな」


イリス「……っ……!」


イリスの余裕が消え始める。


【シャドウの必殺技】

シャドウは空間を裂き、その中に刃を潜ませた。


シャドウ「《シャドウ・リーパー》」


空間の裂け目がイリスの背後に現れ、黒い刃が飛び出す。


イリス「――ッ!!」


シャドウ「終わりだ」


その刃がイリスに迫る――



【南側坑道:アルト vs ファング、死闘の最中】

アルトとファングの剣戟は、もはや“戦い”ではなく“殴り合い”だった。


ガギィィィンッ!!

バチィィッ!!


ファングの双剣がアルトの肩を裂き、

アルトの剣がファングの頬をかすめる。


ファング「ハハッ……いいぞアルトォ……!

もっとだ……もっと来いよ!!」


アルト「……まだ……終わらねぇ!!」


二人の血が床に滴り、

坑道は赤く染まり始めていた。


そして――


その時だった

ヒュッ――


ファングの肩をかすめ、アルトの首元へ“別の剣線”が走った。


アルト「っ……!!」


ギリギリで身を捻り、その斬撃を回避する。


火花が散り、まるで爆撃の様な衝撃とともに、壁に深い切れ込みが刻まれた。


アルト/ファング「……誰だ……!?」


その剣線の先に立っていたのは――


レオン。


無表情で、冷たい瞳のまま、アルトを見据えていた。


【ダイロンの判断】

アルトは息を呑む。


アルト「レオン……!?なんで……!」


ファングも目を見開く。


ファング「はぁ!?てめぇ……なんでここに……!」


レオンは答えない。

ただ剣を構え、アルトへ歩み寄る。


アルト「レオン!やめろ! 俺だ、アルトだ!!」


だが――

レオンの瞳は揺れない。


レオン「……アルト。排除対象」


アルト「……っ!」


ファングは怒りで顔を歪めた。


ファング「おいダイロンの野郎……俺を馬鹿にしやがって……!」


そう――

ダイロンは最初からこう考えていた。


ファングはアルトに勝てない


シャドウの報告は信用できない


確実にアルトを消すにはレオンを向かわせるしかない


だからレオンに命じたのだ。


“アルトを抹殺しろ” と。


【ファング、激怒】

レオンはアルトへ斬りかかる。


アルト「レオン!! やめろ!!」


ガギィィィンッ!!


アルトは必死に受け止めるが、レオンの剣は重く、速く、正確だった。


ファングは歯を食いしばり、怒りを爆発させる。


ファング「ふざけんなよ……!!こいつは……俺の獲物だろうがァ!!」


レオンは無視してアルトへ斬り込む。


レオン「排除……完了する」


アルト「レオン!! 聞けよ!!」


だがレオンの耳には届かない。


ファングの怒りは頂点に達した。


ファング「テメェ……俺を無視すんじゃねぇぇぇ!!」


【ファング、割って入る】

レオンの剣がアルトの胸元へ迫る。


アルト「――ッ!!」


その瞬間、ファングが二人の間に飛び込んだ。


ガギィィィィンッ!!


レオンの剣とファングの双剣が激突し、火花が散る。


ファング「こいつは……俺が殺るんだよ!!横取りすんじゃねぇぇぇ!!」


レオンは無表情のままだ。


ファング「俺は自分の獲物を横取りされるのが許せねぇんだよ!!」


アルトは二人を見て、息を呑む。


アルト「お前……?」


ファング「勘違いすんなよアルトォ!!てめぇを助けたいわけじゃねぇ!!」


レオンは剣を構え直す。


レオン「……まとめて排除するまで」


ファング「上等だァ!!」


【構図:レオン vs アルト&ファング】

三人の間に、張り詰めた空気が走る。


レオン:アルト抹殺のために動く


ファング:プライドを傷つけられ激昂


アルト:レオンを止めたいが一人では確実に死ぬ


なんとも歪な状況下、ダイロンはどこまで予想しているのか……


アルト「……なんだよこれ……!」


ファング「ハハッ……最高だろ?混沌ってやつだ!!」


レオン「……排除開始」


三人の武器が同時に構えられた。


今回は、三戦線が同時に“臨界点”へ到達する回になった。

アレサはついにスパインの癖を見切り、互角以上へ。

イリスはシャドウの空間魔法を読み、追い詰める側へ回ったかと思いきや、

油断から絶体絶命に。


そしてアルトの戦場には、突如レオンが乱入し、戦況は一気に混沌へと傾いた。


誰も余裕がなく、誰も引けない。

次回、三つの戦いがそれぞれ“決着”へ向かって動き出す

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