表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

007_真実の手紙

社の奥を探すと、小さな桐の箱があった。

蓋には菊の紋様が彫られ、中には数通の手紙が納められている。日付を見ると、十年ごとに書かれているようだった。最新のものは、つい先月の日付だった。


宛名はすべて『愛する妹へ』となっている。

最初の手紙を開いた。


『愛する妹、道子へ

あなたがこれを読んでいるということは、ついに真実にたどり着いたのですね。どれほどの年月が経ったでしょうか。私がこの階段を昇ってから、もう十年が過ぎました。


許してください、何の説明もなく消えてしまったことを。でも、あの時の私には、これしか選択肢がなかったのです。


階段を昇って見えた無数の可能性の中で、最も強く輝いていたのが、詩人として生きる道でした。日本にいては、女性が文学で身を立てることの難しさを、私は知っていました。でも、ここでは違う。新しい名前、新しい人生、そして何より、自由に創作できる環境がありました』


手紙は続いている。北欧での生活、最初の作品が認められた時の喜び、結婚、子供の誕生。普通の、しかし彼女が選んだ特別な人生が、丁寧に綴られていた。

最新の手紙には、こう書かれていた。


『七十五歳になりました。夫は三年前に他界しましたが、子供たちと孫に囲まれ、幸せに暮らしています。

時々、日本の山々を思い出します。春の桜、夏の蝉の声、秋の紅葉、冬の雪景色。そして何より、あなたのことを。

もし可能なら、会いたい。でも、それはあなたが決めることです。私はここにいます。いつでも、あなたを待っています。


追伸:村の古い言い伝えは、半分本当で、半分嘘でした。確かに私たちは神の国へ行きました。でもそれは、自分の中の神性—— 無限の可能性を見つける旅だったのです』


手紙の最後に、連絡先が記されていた。

メールアドレスと電話番号。

現代的な追記が、この不思議な体験に現実感を与えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ