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004_階段の真実

私は一つずつ、各段の小石を手に取っていった。


二段目の石は、冷たかった。そこには絵描きの少年の記憶があった。筆を握る手が震えている。描きたいものが見えているのに、技術が追いつかない。もどかしさと絶望が、石を通して伝わってくる。

三段目は熱を帯びていた。楽師の少女が、夜明けまで琴を弾いている。指先から血が滲んでも、完璧な音を求めて練習を続ける。その執念と情熱が、石に刻まれていた。


佐藤は私の様子を、ノートに詳細に記録していた。時刻、天候、私の表情の変化まで。研究者としての冷静さを保ちながらも、その目には興奮の色が隠せない。


「十段目まで来ましたね」


佐藤の声で、私は意識を現在に戻した。太陽は既に頭上を過ぎ、西に傾き始めている。いつの間にか、五時間が経っていた。


十一段目から、記憶の質が変わった。それまでは個人の記憶だったが、ここからは集合的な記憶が現れ始めた。村の祭り、豊作を祝う踊り、飢饉の年の悲しみ。人々の願いと祈りが、幾重にも重なっている。


十五段目の石を手に取った時、私は理解した。これは試練の階段だった。各段の小石は、挑戦者の心を映し、その可能性と向き合わせる。多くの者は途中で引き返すが、最後まで昇った者は、自分の本当の姿を知る。


「見てください」


佐藤が指差した先、二十段目の最上段には、小石ではなく別のものが置かれていた。

油紙に包まれた、小さな手帳だった。慎重に包みを解くと、中から革装の手帳が現れた。留め金は錆びていたが、中のページは奇跡的に保存状態が良かった。

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