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三茶浪漫  作者: たま


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肆拾壱

外が騒がしい。

「おっ、早かったな。でも引っ掛かってるみたいだな。」刑部が面白がりながら凛と杏を見やる。

「お母さん、ちゃんと分かったじゃん?」凛が小声で聞く。「そりゃ、うちがかしわやの今川焼き食べるのは銭湯行った日だけだからね。昔から」杏が答える。

昼間は人気でいつも並んでるのだ。

世田谷線の乗り場前の広場に1mくらいの窓口だけの今川焼き屋だ。凛はここのクリームチーズ餡が大好きなのだ。

夕方から空くので閉店ギリギリにお風呂上がりに食べるのが杏の家のルーチンだった。

子供が大きくなり銭湯も閉店したので長らく行ってないが。

「看板でこの場所蹴っといた。黒田さんは分かるか分かんないけど、大谷さんは見逃さないでしょう。」病院の中に内通者がいるのは確かだ。話せなかったのだ。

悲鳴が響き渡ったが、しばらくすると静かになった。

「刑部さん、これは?」部下が聞く。

「三茶署が引いただけだ。次はSITのお出ましだ。」刑部が立ち上がった。

「準備だ。そろそろ書類も実相ビル内に入った連絡が来るだろう。」

刑部が杏の前に来た。

「じゃあ、楽しみましょう。普通にするより倍良いですからね。」と言いながら腕に注射を打たれた。

意識が朦朧とする。凛の声が遠く聞こえた。


SITが到着し銭湯を囲むビルの窓からロープで銭湯敷地へ入っていく。銭湯の周りは雑草が鬱蒼と生えて人の腰の高さまで生い茂っている。

携えた木の棒で茂みを突付く。

バーンと音が響いてイノシシ用のくくり罠が木の棒を挟んでいる。

昔は挟まると足が千切れるような罠だったが、中には足を捨てて逃げる獣もいるので今は足を外せない

くくり罠がメジャーになってる。

木の棒で罠を避けて着地したが、また足を上げた。

無数のネズミやイタチ用のマキビシが撒かれていた。

熊手のような器具が運び込まれて、罠は木の棒で挟み熊手でマキビシを払い2m位先の銭湯窓までたどり着いた。

ここまで銭湯の四方から攻めて30分掛かってしまった。窓を割り中に隊員達が入る。

浴槽の中には後ろ手に縛られ目隠しされた凛だけが居た。

杏も刑部も部下も誰も居なかった。


SITが入ると共に246号線の三角地帯沿いの一車線は装甲車やジープ、護送車で塞がれた。

がその前から実相ビルの前だけミキサー車が陣取っていた。

退けるように言われたが、運転手が無理だと説明する。

「すみません!地下で漏水があったみたいで床のコンクリを厚く10cmくらい底上げしてる最中なんですよ〜

なんか地下水が下から染み出してるみたいで。

後もうちょっとなんで〜すみません!」と説明があった。

SITは仕方ないと判断したのだろう。

コンクリを流す管の為開かれた表玄関からスーツ姿のサラリーマンがゾロゾロ出てきた。

5名くらいか。

3名は駅の方へ向かい1名はバス乗り場へ向う。

もう1名は246号線の反対側へ横断歩道を渡り、大きな旅行ケースを押しながらタクシーに乗った。



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