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三茶浪漫  作者: たま


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参拾肆

小さい頃は良く母に連れられたスーパーの店内に入る。夕方のかきいれ時で店内はにぎやかだ。

でも、精肉用の店員入り口は静まり返っている。

本当に朝一で商品を出すみたいだ。

凛と慶は父に似てホルモン好きなのだ。ココだと大手スーパーに無いサガリにシビレ、ウルテがあるので母はいつもここまで買いに行ってた。

牛1頭で1パックくらいしかない、希少部位なので競争みたいだ。

店員入り口から中に入ると廊下の明かりまで落とされてる。横の精肉加工場には巨大なフックが掛けられていて人間でも吊るせそうだ。

奥には巨大な冷凍庫の扉が見える。

丁度その横が店長室の入り口だ。

暗い廊下を進む。扉を叩くと「どうぞ」と言う声がした。

もう入り口で渡して帰るつもりだったので、そのまま待っていた。が、来ない。

何だか嫌な感じがする。扉のガラスの部分には内側から布が貼られてる。が廊下が暗いので中に複数の人が居るのが見えた。

本能的に店員入り口に引き返した。

「どうして帰るの?」両肩を掴まれた。が、その人は店長じゃない。

グラサンの明らかチンピラなお兄さんだ。

「君は大事な交渉材料だからね。中にどうぞ〜」抱えて部屋に連れ込まれた。

店長がこっちに背中を向けて座っている。

「さあ、そろそろ高嶺さんも目を覚ます時間だ。

売買交渉といこうか。

あっ、もうすぐお母さんも来るから心配ないよ。」と振り返った店長は声も顔も別人だった。

「…誰、ですか?」思わず凛が聞く。

「寂しいなあ〜昔から知ってる店長だよ。」と笑うがやはり全然似てない。

年も…若い。テレビで見た捕まったホストに似てる。店長は40くらいのはずだ。

テーブルにはメイク道具が並んでる。

「始めの計画では新しいパパになるつもりだったんだけどね。残念。なり損ねたよ。

交渉が決裂した時は、横の冷凍庫で休憩してもらうからね。

ママにアピールしてね。」携帯を取り上げられてチンピラが電話する。

昨夜の末っ子の話を思い出す。

『私が王将だったんだ…で、飛車のお母さんを私が呼び戻すんだ。これが飛車取り王手かあ〜』なぜか冷静に凛は大谷の将棋盤を思い出した。


夕方、修斗に夕食と入浴を済ませていると黒田から電話が。

「やっと高嶺さん目覚めたよ。会社から大谷が迎えに行くから一緒に来てくれ。」

玄関に大谷が来た。

今夜の帰宅はさすがに無理だろ。修斗の紙パンツやミルク離乳食、着替えをマザーリュックに詰め込む。

山登り出来そうな荷物になった、久々だ。

昔はリュックを背負い、宅を前抱きし慶をベビーカーに乗せて、ベビーカーの足掛けに凛が乗ってそれを押してご飯の買い出しに出掛けてた。

おかげで手のひらに常にベビーカーだこが。足の裏にも2人乗ったベビーカーを押す為踏ん張るのでタコがあった。

もう、しばらくすると自転車で背中にリュック、前後に宅と慶を乗せて、凛が自転車で後ろを付いてきた。

補助輪が外れないとカーブとか道路の段差が危ないのだ。

いつの間にか、手と足裏のタコが消えてる。

子供達が成長したのだと感慨に浸る。

「ねえ、急ごうよ!高嶺さんから、昨夜の事早く聞きたいし!」大谷が急かす。

「チッ、男は、気楽でエエのお〜」と主人に良く言ってた嫌味が大谷に出た。


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