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三茶浪漫  作者: たま


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33/46

参拾参

翌朝、杏が高嶺の家に行くと息子くんの泣き声が寝室からした。

「高嶺さん、飲みすぎたのかしら?」背中におぶって飲み歩くようになって、そんなに飲まなくなった。

やはりへべれけにはなれない。

それより話しを楽しむスタイルに変わっていたのに…

「高嶺さん、おはようございます!

修斗くん、泣いてますよ。

何時まで飲んだんですか?」寝室の扉を叩いたが返事がない。

昨夜の末っ子の話もあったので、

「失礼しますね。」と言いながら扉を開けた。

とにかく修斗君を抱き上げ、高嶺さんの身体を揺する。

「起きてください!もう、飲み過ぎですよ!

修斗君、こんなに、泣いてるのに起きないなんて!」と、声かけながらあまりの反応の無さに背筋が寒くなる。

顔を叩きながら、呼吸を確かめる。

息はしてる。でも、おかしい!

急いで救急車を呼んだ。


やはりエチレングリコールの中毒症状を起こしていた。

すぐに黒田が病院に駆け付けた。

「モニター見たけど普通に軽く酔って帰宅してすぐ寝ていた。外で3軒回った店のモニターを今見せて貰ってるんだが、1軒コアな老舗でね〜モニターない店があったんだ。

店主の話では、誰かとかなり話し込んでいたらしい。

だが、じーさん鳥目になってんの放置してたんだ。

客の顔がほとんど識別出来てない!

声は知ってる気がする人らしいが。

高嶺さんともかなり、顔見知りな話をしてたと。

とにかく、高嶺さんの意識が戻るの待つしかないね。」修斗君を連れて高嶺さんの家に戻った。

さっそく家の前が騒がしい。

今朝の救急車で近所の人がやはりと言う顔をしてる。

「この頃、落ち着いてたのになあ〜

はあ〜面倒くさい!」杏は溜め息をつく。

マスコミは報道規制が掛かってるし、次々とニュースは変わっていくので特に流れなかったが、

街の人がやはり大地主の家に救急車が来たことで話題になっているようだった。

大地主の影響力はスゴくて、杏が出入りするようになって誹謗中傷はガクンと無くなった。

しかし、救急車が来たことで、また再燃してしまう。

高嶺さんはまだ若いし、身体に入ったエチルグリコールの量も微量らしい。甘味が強いので辛党の高嶺さんには酒に混入しづらかったのかもしれない。

末っ子が相手の飛車は、杏と同じくらい街に溶け込み

何年も暮らしてる人だと言ってた。

だから高嶺さんと飲んでても誰も気にしてなかった。

人間、違和感には敏感だが、日常に弱い。

普通の暮らしでは注意散漫になる。


中学でも大地主の家に朝から救急車が止まっていた話が流れた。周りでコソコソ凛を見て話してる子達がいる。

「ハア…」もう慣れっこだが、不快感はある。

モヤモヤとしたまま、下校してると歩道横の車に店から出てきたエプロンのおじさんが乗り込もうとする。

「あれ?凛ちゃん?」と声を掛けられた。

見るとハナマ◯の店長だ。

「見ない内に大きくなったね〜お母さん、どう?元気?」凛自身はずっと会って無かったが、お母さんが毎日のように買い物してたスーパーだ。

お父さんが亡くなってからは働きにも行ってた。

しかし、母に容疑が掛かってから休職に。

10日くらい前には、退職の電話を母がしていた。

「はい、ベビーシッター大変みたいです。でも、修斗君すごく可愛いみたいです。」と凛が返す。

「いや〜良い勤め先見つかって、こっちも気が楽になったよ。昨日高嶺さんからも息子が可愛いと話聞いたよ。」店長は大きな焼肉店みたいな取引先には自ら配達するんだなと後ろの将軍焼肉って看板見て思う。

「あっ、店のエプロンと三角巾、家にあるかな?

あれは返して貰いたいんだけど。

お母さん、店に来れるかな?」店長が不安そうに聞く。

そうなのだ。

スナックの往復は刑事か大谷さんが付き添い、高嶺さん家の昼間の通勤も絶対寄り道してはいけない事になってる。ハナマ◯行くのは不可能かもしれない。

宅配するには近すぎるし…

「あの〜私が後で店に届けます。」凛が言う。

「えっ、良いかな?お願いできる?店長室分かるかなあ?」とメモを渡される。

店員専用口の中に入りまっすぐ廊下を精肉加工場を横に見ながら進んだ突き当りだ。

「専用口の中、入って良いんですか?」凛が聞く。

「うん、もう早朝で今日分の加工は終わってるから、

誰もいないし。」このスーパーは一頭買いして店内で解体してパッキングしてるのだ。

「分かりました。後で届けます。」一礼して家へ向う。

店長は車に乗り込みミラーで確認する。

「優秀な子は楽勝だな。」いつもオドオドした店長がふてぶてしい顔で笑った。

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