弐拾参
「色々大変だね。葬儀以来かな?
釣り堀もウォーターサーバーの店もウチの会社だからね〜申し訳ない。」年齢的には60くらいだろうか?
迫力あるヒゲの男が奥のソファに座り、杏はキャバ嬢みたいに横に座っている。
「ママ、アイツ誰?」大谷がカウンターに座りママにコソコソと聞く。
「あれがここらの飲み屋街の地主だよ!
杏に会いたいと話があったから来てもらったんだよ。」
「ホウホウ」大谷がうなづく。
「主人の追悼公演もスポンサーになって下さったそうで。ありがとうございます。」ウオッカをお湯で割った物を勧める。
「いやいや、良い役者だったからね。」杏が作ったお酒を美味そうに飲む。
「余計な味がしないのが好きだな。」そう言いながらグラスを置いた。
「言い訳ではないが、配達員が目を離した隙に車ごと消えてたんだ。で警察に届けて戻ってきたら車が戻っていたらしい。」オーナーがごま塩頭をかく。
「犯人がワシの店ばかり狙うから、なんか意図があるのかな?と思ってね。」オーナーが杏の手に自分の手を重ねて頭を下げる。
「わざわざありがとうございます。オーナーの店と言ったら、ここら辺全部そうなりますよ。」杏は手を引っ込めることも出来ず引きつり笑いする。
「あのボンボンオーナー、かなりのやり手なんだけど、なぜか奥さん運が無くて。
前の奥さんも産じゅく熱で赤ちゃん産まれてすぐに亡くなったし。
赤ちゃんはお母さんが見てるらしいけど、もうお母さん90近いからね〜大変みたい。」ママが小声で大谷に話した。
「何か困った事があったら相談してくれ。分かったね?」オーナーが杏の手を強く握った。
「ハア…緊張した。」オーナーが帰った後、肩を回す。
劇団仲間が奔走してやっと捕まえたスポンサーだ。
杏の態度で機嫌を悪くしたら大変だ。
「かなりのホの字だよ〜
うまくいけば玉の輿じゃないか?」ママが浮き浮きと話す。
「いや〜、なんか細身の女が好きだとか話してましたよ。骨太は用なしでしょう。」杏が無い無いと首を振る。
「確かに!若い時から3回結婚してるけど、皆細い女ばっかりだったよ!けど、皆結婚してから病気で亡くなって、やっとお子さん出来た!と思ったら奥さん亡くなっちゃって〜三茶の青ひげと噂されてるからね〜」ママが面白そうに話す。
「でも絶対狙ってる気がするけどなあ〜」大谷が疑う。
「そうか!赤ちゃんを安心して預けられる人を探してるのかもよ?
杏さん、3人も育ててるし!
春日局みたいな乳母役探してるのかも?」
「それならアンタ適役だよ!それか!」ママと大谷さんで合点してる。
確かに中学の100周年式典で娘が式辞読んだり、息子が水泳で国体行くから横断幕が掛かってた話しされた。
「娘と息子見たらしくて褒められたな…」杏が呟く。
ママと大谷が、ウンウンとうなづく。
なんか複雑な気持ちだ。




