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三茶浪漫  作者: たま


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弐拾弐

外の防犯カメラのおかげで警察の調べからは外された。都会のペンシル型の家なので玄関以外は鉄柵で覆われている。出ることは出来ないのだ。

つまり杏が家に居たことが証明された。

大谷さんと黒田さんに感謝だ。

犯人の思惑では杏は今頃警察に呼ばれていたのだろう。

前みたいに職場のカメラや人の目が無い。

自分の言葉だけで弁明しなくてはいけなかったろう。

また子供達に要らない心配を掛けずに済んだ。

学校でイジメられたりしてないだろうか?

考えるだけで気持ちがふさぐ。

翌日ママが店を夜8時オープンに変えた。

常連おじいちゃん達をしばらく集めないためだ。

子供達とゆっくりご飯を食べれる。


「お母さん、ダメだよ!

私達も学校で頑張ってるんだから!

お母さんが負けたらダメなんだよ!」

ご飯を一緒に食べてると長女の凛がキッとにらんできた。

「俺は元々人の話あんまり聞かないから、コソコソ話してても無視だな。」長男の慶はマイペースだ。

末っ子の宅は…ケガが増えた。子供の世界は残酷だ。

「学校行きたくなかったら休んで良いからね。」杏が言うと凛が怒る。

「宅!アンタはいつまでもお父さんが生きてた時のヘナチョコのまんまだね。

私達はもうそこら辺の両親揃ってるウツケじゃ生きていけないの!

誰よりも強く!賢くならないと!」

お姉ちゃんに怒られて末っ子が唇をかむ。

「僕は人と仲良く生きたいんだ。

だから、ウソつかれたら謝れ!って言う。」お姉ちゃんに言い返す。

兄弟それぞれ、社会を見下したり無視したり調和しょうと各々のやり方で戦っているようだ。

「ごめん!そうだね。お母さんがまず戦わないと!

絶対負けない!

濡れ衣晴らすからね!

真犯人がどんだけお母さんを狙い撃ちしても!」

言いながら涙が滝みたいに流れる。

黒田が迎えに来て驚いていた。


「子供達も大変だね。ゴメン、力不足で。」夜道を歩きながら黒田が謝る。

「どうして黒田さんが謝るんです!

悪いのは犯人ですよ!

黒田さんはめちゃくちゃ頑張ってます!」手を握ると警戒されるので腕を強く掴んだ。

「警察の試験のためにも絶対このヤマは解決しょう。

絶対守る!と言えないのが悔しいよ。」黒田の言葉に杏はまた涙腺に来てしまう。

「やめてください!そんな優しい事言われたら…また…」腕を持ったまま黒田の脇に入る。

泣きながら腕をひねる。

「だから、なんで技を掛けるの?」黒田が自分の肩を守るために杏の頭を脇に挟む。

杏はもがきながら黒田の頬に口づけた。

思わず黒田が後ずさる。

「すみません。私プロレスが好きで〜感情が高ぶると身体が勝手に動くんです。」杏が謝る。

「それは分かったけど…なんで?」言いかけてヤメた。

「とにかく早く解決を目指そう。」杏をスナックへ送り届けるとすぐ黒田は署に戻った。


「なんでウチの客ばっかり狙うんだろね〜?」ママも溜め息だ。

オープン時間の客は、ママにとっても昔からの仲間だ。夫を亡くして子供達を養う為に試行錯誤してた時期から

ママを応援して集まってくれてた客だ。

「木村さんは自業自得な部分あるけど、古河さんなんてね〜何も悪い事してないのに。」杏はどう慰めて良いか分からない。

「違いますよ。このスナックの立地が犯人の狙いなんです。」いつの間にか大谷が店に入ってた。

「どういう意味ですか?」杏が聞く。

「この駅前の繁華街に70.80代で足で通える人は、土地持ちや地主なんだよ。

木村さんはマンション暮らしだったけど、他は皆三軒茶屋駅から10分以内に100坪以上の自宅や貸し店舗を持ってる人達だろ?」大谷が説明する。

「そのホストの兄貴は渋谷の半グレだろ。

で渋谷はすでに土地なんて無いだろ?ビルばかりで。

もうまとまった土地を売買するのは不可能だ。

じゃあ、次にビル用地を目指すなら…どこだと思う?」大谷がビールを飲みながらママの納豆キムチの春巻きをつまむ。

渋谷の発展と共に山手線の隣駅の恵比寿と原宿もビル街になった。

「三軒茶屋?」杏が聞く。

「そう!すでにウチの社も三軒茶屋拠点だけど、渋谷はもうIT系が飽和状態なんだよ。次にデカいビル建てるなら、まだ住宅街な三茶が狙い目なのさ。

大手デベロッパーが買いに動く前に駅前用地を多く押さえておけば?」大谷がアスパラと島豆腐のピーナッツ和えをムシャムシャ食べる。

「大手デベロッパーに高くで売れる?ってか、半グレってそんな仕事してるの?」杏が驚く。

「あいつらは金の動きに聡いのさ。ホストクラブも経営してたけど、この頃色恋営業出来なくなったから

潮時なんじゃないか?

今は転売ヤーとかで儲けてるんだろ。

不動産チームが、そのホストの兄貴の仕事なんだろ。」

言われてみれば…杏のペンシル戸建て6棟も商店街に1番近い隣の家は、

子供の人数分個室が欲しいと引っ越した。

その後、新しい家族は入ってこない。

事務所扱いなのか男が数人出入りしてる。

「そうかあ〜ここも将来的には渋谷や原宿みたいになるのかあ〜そりゃ、不動産買い占めたいよね〜」杏が納得する。

「新宿駅前も昭和には親族皆殺しとか色々あったんだよ。結局は、婿養子の立場だった男が土地を手に入れて大手に売ったりね。確か今はインバウド向けのカプセルホテルが建ってる辺りだよ。」ゲームのために昭和の犯罪も調べてる大谷が笑う。

これから三軒茶屋もそんな開発の為の血の粛清が起こるのか?

「ハア〜この場所賃貸で良かったよ!オーナーだったら殺されてたかも?」ママが笑う。





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