弐拾壱
ホストと古河さんの娘さんはスラスラと自供した。
兄と名乗る人物から持ち掛けられホストにどやしつけられて娘さんがほとんど準備した。
木村さんのおじいちゃんとは祖父を通じて面識があったらしい。
引きこもりの兄の事で相談したいと呼び出した。
そして兄を引きこもり施設に入れる書類と騙してサインさせたらしい。
ホストはその時は、施設職員として同席した。
それから木村さんと娘さんだけでデートと言って釣り堀へ。
そこで若い子に人気だとタピオカミルクティーを勧めた。
これも娘さんが自宅冷蔵庫の不凍液でできた保冷剤をくすねて中身を入れたらしい。
ホストは娘さんが実行犯だと話し、詐欺と私文書偽造は認めたが殺人に関しては娘さんの単独だと主張した。
翌日、迎えに来てくれた黒田から自宅の部屋で現状を聞く。
「本当にごめんなさい!」杏はほとんど記憶がない。
「いいよ。僕が飲ませたんだし。」黒田としては油断した自分が不甲斐ない。
「でも、そのホストの言い訳は通用しないですよね?確か。」杏が聞く。
「うん、殺人教唆だから同罪か重いくらいだ。
それより結婚してしまったのがヤバいね。
多分、親御さんは相続から2人を外さないだろう。」黒田が深刻な顔をする。
「お兄さんが居るから自分達に何かあった時、世話する人間が要るからね。
引きこもりの兄が相続し、それを娘さん夫婦で後見させる気だ。刑期を10年くらいと見てるのだろう。」黒田が話す。
「そんなあ〜お兄さん、健康なんですよね?
妹夫婦は殺人犯した訳ですから、外されるのが普通でしょ。」人の命の軽さに驚く。
「相続に掛からない殺人だからなあ〜」黒田は痛めた首をさすりながらヒネる。
「古河家のおじいちゃんの事件は、別人の可能性高いし。」
そうなのだ。古河家の奥さんがその時、ホストも娘さんも自宅に居たと証言してる。
おじいちゃんは意識不明の重体だ。
テレビもホストと娘さんより、その謎の宅配美女の話で持ちきりだ。
「警察で、君の任意同行の話しも出たんだが大谷の話しをして防犯カメラ付けといて良かった。」黒田が大谷の予想を話してくれたのだ。
「君は今昼間働いてないから、新しい事件が起こると容疑を晴らす手立てが無い。
あっ、ペットカメラも着けたんだね、良かった。」玄関と居間のカメラを確認した。
「本当は働きたいんですけどね…」杏が唇を噛む。
「どうだろう?警察で働いてみない?」黒田が募集要項を出してきた。
「締め切りが月末なんだが、杏さんなら受かると思うよ。」杏は紙を読む。
「スゴい!こんなのあるんですね!それも公務員じゃありませんか!」警察の用務員の募集だ。
「うん、留置場内の仕事もあるからね。
ちゃんと都の職員扱いになる。身分保障も確かだし
今、三茶署で、欠員出てるから採用されたら三茶署に配属されるよ。
朝ご飯の準備があるから近くに住んでる人を選ばないといけない。」杏は喜ぶ。
「これになれば、もう疑惑の女からも足が洗えますね?」だんだん精神的プレッシャーになってきてるのだ。
特に子供があんな目にあったし。
「うん、人物調査はとことんやるからね。警察のお墨付きになる。」
「やります!受けます!絶対受かります!」杏が立ち上がって、また黒田の手を握りしめようとしたがブロックされた。
「無意識で警官羽交い締めできる身体能力だから、安心だよ。
留置場内に入るから、誰にでも勧められる仕事じゃないんだ。」
杏は小躍りしだした。
「あっ、でも倍率が…3%なんだ。頑張ってね…」黒田が付け足した。
杏は目が点になる。
「あの…それって…」杏がどもる。
「うん、100人受けたら3人合格するって事だ。
警察で最難関だね。倍率だけならキャリア組より高い。
まあ、だから頑張って!」黒田がニコッとする。




