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三茶浪漫  作者: たま


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拾漆

スナックの帰り道、また大谷に送って貰った。

店の方ではすっかり謎の女が一人歩きし、杏を見ても

誰もその謎の女と思わない。

巻き髪に白いワンピースの麦わら帽子の女が、八尺様のように巷の噂になっていた。

家の方はチラホラ物見遊山が来るが、1月も経つと誰も来なくなった。

だって出てくるのは普通の学生とボブに肩のゴツいGパンTシャツの普通の奥さんだ。

杏の名前と八尺様のような謎の女だけが、人の記憶に刻まれただけだ。

こんな夜中に玄関に人が居る。

「誰だ?」大谷が前に出て聞く。

センサーの外灯が点く。

「お義母さん、お義姉さん!」杏が思わず声を出す。

ズカズカとお義姉さんが近付いてきた。

「こんな夜中まで水商売して恥ずかしくないの?

それも男まで連れて!」

さも自分の方がマトモと言わんばかりに真夜中に人の家に突撃しておいて言う。

「あの…何時か分かってますか?

それに来るなんて伺ってませんが?」大谷の

後から迷惑そうに杏が言う。

「凛ちゃんにおばあちゃんだよって言ってるのに開けて入れてくれないんだよ。

何とかして。」義母は義父や義姉がいないと気の弱い人なのでオロオロしている。

「当たり前です!お父さんの香典をネコババするような人は、身内でも何でも無いです。

ただの泥棒ですから。入れる訳が無いです。」杏がハッキリ言うと大谷が聞いた。

「どうする?警察に連絡する?電話しょうか?」

「ちょっと!親族を何だと思ってるの?

甥っ子や姪っ子が心配で来ただけよ。

人殺したかもしれない女と暮らすくらいなら、田舎の実家で暮らす方がマシだから!連れて帰りに来たのよ!」義姉がまた自分がマトモと言わんばかりにのたまう。

「はいはい、そう警察署で話して下さい。

あっ、通報して下さい。」杏が大谷に頼む。

背中を向けて大谷が電話をかける。

「何よ!この淫乱女!夫亡くしたばっかりで男にデレデレして!」言いたい事を夜中の住宅街で吠えて義母と義姉はどこかに消えた。

「すみません、迷惑掛けて。」後ろでポーズしてる大谷に声を掛ける。

「イイよイイよ。どこの家でも変な親族は居るし。」大谷がウソ電ポーズを解除した。

窓が開いて凛が「中に入って貰って。怖いし大谷さん居たほうが良いから。」と小声で言う。

しっかりした口調だが、顔は辛そうだ。

家に入ると居間のソファに泣きそうな末っ子を長男の慶が抱いていた。

杏はその様子に打ちのめされる。

自分より子供達に迷惑掛かってのがメンタルにダメージ来るのだと知る。

「犯人が捕まらないかぎり『謎の女』は消えないんだよ。何とかしないと。

これも真犯人の思惑だと思う。君を追い詰める為の。」大谷が杏の肩に手を置く。

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