拾陸
「生命保険会社にも渡してくれ。会社の人間を装ったのは悪かった。」黒田にコピーを渡す。
「無印カフェだから、すずらん通り入り口の防犯カメラにモロ映ってると思うよ。」渡しながら黒田が怒ってるのが分かる。
「無茶するなよ!それも杏さん巻き込んで…」コピーを聞きながら眉間のシワが深くなる。
「でも、このままじゃ彼女はどんどん疑惑の女として
生きづらくなる。
そしてお子さんまで学校や生活に支障が出るだろ?」
大谷が黒田に説明する。
黒田が深く溜め息をつく。
「毒物は不凍液だ。どの家の冷凍庫にあるシロモノだ。女と一緒にタピオカミルクティーのような物を飲んでたのが目撃されてる。
釣りをするのに女にジュースを渡してしまってスーパーの袋で女が持って帰ってしまってる。
言われた通り、犯人が絞れない。
相手はこの街の防犯カメラの位置を把握してるみたいだ。
保険の方から探るしかない。
あのホストの書類は、山田剛と言う人物が代理人で出してる。
しかし、その人物は存在しないんだ。」黒田が俯く。
「…そんなに落ち込まないで下さい!
頑張って下さってるのは、分かってますから。」杏が黒田の手を握る。
「つまり『謎の女』のワードだけ残して未解決で終わる。
最悪だ。」大谷までうなだれてしまった。
「あーーッ、ネガティブ嫌い〜っ!」杏が大谷の天パの頭をまたワシワシする。
「大谷さんが言ってた、木村さんは実験体って事でしょ?
古河さん一家が狙われるのは分かってるんだから、いくらでも予防できるでしょ?
とにかく!あのホストを早く娘さんから切り離して!」大谷は頭をグリングリンされながら力なく言う。
「家族はなあ〜難しいんだ。そして愛情問題も。
娘さんはホストに惚れてる。借金もある。
父親は大手だがサラリーマンだ。800万も一括で返せない。
外から手が出せないんだ。事件が起こらないと。」
「そんなあ〜!」誰かが殺されると分かってるのに手が出せないと!杏がショックで崩れ落ちる。
「杏さん、大丈夫!
大谷のコピーで何とかホストをあの家から引き剥がしますよ。私文書偽造は実刑なんで。
詐欺罪なども付けたら時間を稼げる。
ただ、その真犯人が別ならホストを勾留しても意味が無いかもしれない…まあ、ベストを尽くしましょう。」
杏の肩を抱いて軽く叩いた。
「世間に強く謎の女として杏さんを際立たせるためだけに
木村さんは殺されたんだよ。
若い女に騙されてホイホイと生命保険の書類書いたのが運の尽きだったなあ〜」
大谷がまた何かメモをしだした。
「冒頭は主人公の事件より、ヒロインの女子高生が学校の中で先生の女と誤解され孤立してる事にスポット当てるよ。
主人公は仲間が出来た中盤に犯人によってハメられる…
うん、その方が良いな!」大谷がメモを走らせる。
「オイッ!」黒田が大谷の胸ぐらをつかむ。
「杏さんが苦境なのはリアルなんだ!絵空事描いてる場合じゃないんだよ!」




