身代わり君
「期間限定商品ってなんて素晴らしい響きなんだ」
カタログを眺めながら独り言をつぶやいているのはシャルルという名の売れない冒険者であった。
ひょんなことからドラゴンの巣作りに協力しているというか教えると言うよりも俺がメインで巣作りしている気がしてならないが
、カタログマニアになりかけているの間違えでは無いかという疑いも無くは無い。
期間限定商品というカタログは、カタログ1に載っている商品よりも安く買えてしまうのだ。
しかも、安くなる期間が決まっているのでその期間が過ぎてしまうと二度とその値段で買えなくなってしまう。
カタログ1にも載っていない商品もあるので、衝動の赴くままに買い物したくなる。
カタログという本に魅了されつつあるシャルルであるが財布もひもは緩くない!はずだ・・・。
期間限定カタログを見ては購買欲に襲われ我慢するといった日々を送りながら、シアの進行状況の確認とルヴルフに命令が効くかどうかの確認をしながら過ごしていた。
シアの拡張は進んでいるのが、罠の設置と魔物の配置が残っているしライルが外に出て迷子にならないように周辺の地形も覚えさせなければとやることばかりでどれに手をつけていいかわからなくなるほどだった。
食事はライルが持ち込んでいた食材を使い簡単な料理を作っている程度であるが、食料庫がとてもすごいということに気がついたのはつい最近の事である。
食料庫に入れた食材は、腐ることが無く食料庫に入れた状態を保ったままだった。
視察ついでに外で狩りをした獲物を食料庫に放り込んだままにしていた。
そう言えばと思い出し食料庫を確認すると鮮度の良いままだったのだ。
狩った食材を忘れるという失敗はしたものの、食料庫が鮮度を保つ機能があることに気がついたのは良いことである。
失敗も成功の秘訣なのかも知れない。
食料を加工せず長期的に保存できる素晴らしい食料庫だが、これもカタログに載っているのだろうか。
ヴォルヴォロ商会万歳。カタログ万歳である。
この部屋から外へ簡単に出入りができるなら狩猟や採取に出かけたいと思っていたので、いくつかの製品を選んでは考えていた。
ライルに出す食事の量はかなり多い、狩りをしてせめて自分の食料くらいは賄いたいものである。
魔法のスクロールで移動魔法を使う案だが、消費魔力が多すぎて俺には使えなさそうだ。
そもそも魔導士じゃない俺に使える品物では無いので魔力消費とかそんなレベルではないが、魔法を使いたかったので無駄に選択してしまった。
移動距離に応じて魔力を消費するタイプで、発動すれば消えてしまうなんとも贅沢な一品だ。
魔力結晶があれば使えるが、そんな高価なものを持っているはずが無い。
設置型の移動陣を使うという案だが、入り口に指定した陣から出口に指定した陣に移動する事が出来る。
合い言葉で反応するように設定できるので誤作動を起こさないで済みそうだ。
魔方陣が見つかってしまうと優秀な冒険者に解析されてこの部屋に直接冒険者が乗り込んでくるリスクがあると思うとこれも駄目かもしれない。
魔導士と機工士コンビが移動陣の解析に成功、とあるシアの階層をショートカットしたという話題で盛り上がった事を思い出しながら移動も碌に出来やしないと頭を抱えた。
最後に身代わり君というアイテムを使う案だが、マーキングした対象との位置を交換するアイテムで使用回数下限が250回と書いてあった。
250という数字は多いのか少ないかは判断できないが、値段も手頃で使い勝手が良さそうだが、絶対にそんな使い方しない商品だよな。
期間限定カタログにも、アイテムが載っているので購入するなら期間限定商品だろとおもうが、買う前にライルに相談だ。
ライルが眠りから目覚め部屋を尋ねてくまで、カタログを眺めていた。
「おはようございます!シャルルさま!」
「ライルさんおはようございます。新しい商品を購入しようと思うのですが―――。」
ライルに選んでいた商品をカタログで見せながらどの商品がいいのかを相談すると
「身代わり君というアイテムが良いと思います。」
なんだと!あのライルがまともな事をいうだと・・・。、
俺にとっては衝撃だ、是非選んだ理由が聞きたいところだ。
「ライルさんは何故アイテムを選んだのですか?」
「シャルル様に危険が迫ったときに、僕と入れ替われば安全です!」
ライルはとても良い子でした。
本来の目的以外で使おうとしていた俺とは違い純粋に身代わりとして選んでいたようだ。
その言葉に感動したので身代わり君を購入することにした。
とか良いながら、身代わり君以外使えそうもないのでしかたがないのだ。
鈴を鳴らせば、少し頑張った程度に鳴るので、ちょっとは頑張ってるなと鈴の頑張りを評価していた。
「これはこれは、数多の商会から我がヴォルヴォロ商会を利用していただき、誠にありがとうございます。」
ナキアは相変わらずぶかぶかのフードだ、収入があったら服を買ってあげたい。是非とも買ってあげたい!とサイズの合わない服装を見つめた。
「期間限定の身代わり君というアイテムを10個ください」
身代わり君を10個もと思うかもしれないが、10個買ったのには理由がある。
「10個もお買い上げいただきありがとうございます。商品を10個以上お買い上げのお客様にノーマルチケット一枚を贈呈します。」
商品を10個以上買うと素敵なプレゼントが!とカタログに書いてあったのだが、ノーマルチケットがプレゼントなのだろう。
とりあえず聴いてみるか。
「ノーマルチケットは、何に使えますか?」
「ノーマルチケットと交換で、こちらの箱から札を引いていただいきまして、札に書いてある番号の商品を受け取ることがきます。」
カラフルな箱の中央に手が入るくらいの穴が開いている、あそこから札をとりだすのだろう。
「番号ってカタログに書いてある番号ですか?」
「その通りです、シャルル様さすがですね。」
ナキアの声をきいて、ライルが喜びの声を上げていた。
おい、恥ずかしいからやめたまえ。
ナキアも俺を自然に煽って来やがるから油断できない。
買い物をするならノーマルチケットがほしいので、カタログの商品を10コ以上買うしか無いじゃないですか。
商売がうますぎるよ、魔人の商人はとても優秀なようだ。
早速ノーマルチケットを使い、ライルに札を引かせてみた。
「おめでとうございます、アウスグス3体セットです。」
ナキアは魔方陣から、石で出来た大きな彫り物を3体と身代わり君10個を召還した。
「こちらが、アウスグスの書でございます。一度目を通してからご使用ください。」
「買い物は終わりです、支払いはいつも通りでよろしくお願いします。」
「かしこまりました。次回もぜひ、ヴォルヴォロ商会、ヴォルヴォロ商会の利用を心よりお待ちしております。」
いつものように、ナキアが音も無く消えるのを見届けると、小さな部屋を圧迫する大きな石像に目を向ける。
これはどうすれば良いんだとアウスグス3体をみて考えるがうーんという声しか出てこない。
魔物の彫刻のようだがモデルの名がわからないので、あとでカタログを見てみよう。
一体一体が大きくて邪魔である、部屋に置けるほど広くないので移動しないだめだな。
渡された本は分厚くて読むのが大変なので後回しにして、とりあえずアウスグス3体は大広間へと移動して身代わり君の実験をしよう。
アウグスクは、重くて持てないのでライルに頑張ってもらった。
人型でも人間以上の怪力を発揮できるので重そうなアウグスクを軽々と運んでいく。
どんな姿でもライルを怒らせてはいけないとライルをみながら思った。
普通にお願いすれば聞いてくれるライルだが、ドラゴンとしての威厳を主としての風格を!とかおもってみたが今のままの方が助かるので何も言わないことにする。
身代わり君の実験をするため壊れても良さそうなものは無いかと探すことにするか。
部屋や大部屋に無駄なものはなく、洞窟内に何かあるかと探し回るとルヴルフが掘った土のブロックを発見した。
これはいけるかもしれない。
ライルはお昼寝中なので実験が失敗しても問題はない
一応賢者様なので、失敗している姿を見せるのは良くないとおもうんだ。
早速ブロックを洞窟の裏へ運びだし、身代わり君という人形をブロックに押しつけると三角の模様が浮かび上がりすぐに消えた。
これで大丈夫なはずだ。
急いで自室へ戻ったが、洞窟は広いく距離が長いので洞窟の往復は大幅に体力を削る。
直線だった頃と違い複雑な道が出来ているため時間も倍かかる。
部屋に戻ると実験する体力が残っていないくらいつかれてしまったので、休憩を挟むことにした。
ベッドに横になり少し眠ってしまったようだが、大分疲れがとれてきたので実験の再開だ。
登録したワードを口ずさむと入れ替わるらしい。
普段から使う言葉だと誤作動してしまうがアイディアもないので、トゥリノという3をあらわす言葉にした。
「トゥリノ」と声に出すと薄暗い洞窟内からいきなり外に出るもので、あまりのまぶしさに目をつぶってしまうほどだった。
もう一度「トゥリノ」というとまた位置が入れ替わったようだ。
マーキングが消えないもしくは、身代わり君が壊れない限りは使えそうである。
食料はいくらあっても問題無いので運動不足解消にもなりそうだし、迷宮ができあがるまで狩りでもするか。
後から気がついたのだが、アウスグスを運ぶときに身代わり君の実験をすれば良かった事に気がついたが、距離の制限も確かめる必要があるので無駄じゃないよね!
もう少し考えてから行動しようとおもうシャルルであった。




