カタログ
逃げだそう逃げだそうと思いながら巣作りを手伝うことになってしまったシャルルだがライルが人型をしているのは精神衛生上非常に助かる。
正直あのショックはなかなか抜けないというか心神喪失してしまいそうなのでしばらくやめてもらいたい。
ドラゴン形態だとエネルギーを多く使う。
そのため、人型になるとエネルギー消費が抑えられると誰かに教えてもらったようで、シアに侵入者が居ない場合は常に人型をしているとのこと。
誰に教えてもらったんだよ、そいつに巣作りをきかなかったのだろうか・・・。
ライルが色々と自分のことを話してくれていて、俺はその話を黙って聞いていた。
ライルは村で一番の馬鹿だったが、両親はとても可愛がってくれていたそうだ。
ドラゴンは生まれた時に結婚相手が決まっているため、結婚相手を選ぶことができない。
まあ、こっちも小さな村だと家同士が結託して結婚させるから似たようなものか。
そんな彼の結婚相手が村の中で一番強くて綺麗なドラゴンだというのだ。
周囲にはお前にはもったいないと散々言われている相手なんだとか。
女が強いの?とか疑問に思ったが雌のドラゴンは雄の10倍以上強いらしいです。
ライルですら恐いのにそれよりも恐いドラゴンなんて想像もつかない。
雌ドラゴンの機嫌を損ねないために、豪華絢爛な巣を雄ドラゴンが命がけで作らなくてはならない。
巣作りがうまくいかなければ、命は無いだろうし相手の居ない雌は巣作りがうまい他の雄ドラゴンの元へ行くそうだ。
許嫁はいるけれど必ず結婚できるわけじゃ無いよとか複雑な気分だな。
ライルの場合は、美人さんと結婚できるわけだから気合いが入りそうな気がするが、当人がこんな感じではなんとも期待が持てなそうである。
何もかも足りないライルが巣をどうやって作れば良いのだろうと困り果てたときに現れた救世主が俺ということだそうだが・・・。
この!俺に!何をしろって言うのだぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
一生懸命考えてえ作ったシアに最強トラップが突破された??嘘だろ!?冗談だといってくれ!!
何をどう考えれば一本道のシアができるというのだろうか。
実際、死刑台に続く一本道だったけどさ・・・・。
まさか、シアを見つける側から作る側にまわるとは思ってもみなかった。
というかシアはこうやって作られていたのかとおもうと過去に見つかったシアもライルのようなドラゴンが作ったとでも言うのだろうか。
巣作りに協力している間は俺の身安全は保証されたわけだが、ライルを騙して逃げ出そうという気が起きなかった、むしろ巣作りを手伝ってあげたいと思ってしまったくらい駄目ドラゴンである。
だって可哀想でしょ?一生懸命作ったトラップがあれですよ?初心者の練習シアですよ。
「ライルさん、どうやって洞窟を掘って罠をしかけたのでしょうか?」
いくらライルが馬鹿でも言葉は出来るだけ丁寧に話しておくのに限る。
何時なんどき怒りを買うかわかったものじゃないからな。
まずは、これを聞いておかないといけないな。
「えっと。このカタログ?という本を使って、魔人族の商人から色々と教えてもらいました。」
魔人と言えば北に住んでる恐ろしい種族のことだ。
心配事が増えてしまった。
ライルが見せてくれたのは、本なのだろうかとても分厚く重そうである。
ライルが軽々と片手で持っていたが、両手じゃ無いと持てそうも無いぞ・・・。
背表紙にはカタログ1と記されていたが、読めると言うことは魔人族の言葉じゃ無いのか・・・
カタログをテープルに置いてもらうが、テーブルが支えられる重さなのでそれほど重くはないようである。
さっそくカタログという本を開くとそこには魔族や魔獣などの絵が描かれていて、簡単な説明などが記されているもので絵の下には値段が書いてあったが○が沢山並んでいることはわかった。
冒険者として文字は必要最低限覚えなければならず、依頼品リストや依頼内容の確認などは読めないと話にならない。
それ以外の文字は読み書きできないが、そんな俺ですら書いてある文字が何かわかるのだから、カタログという本はすばらしい。。
「賢者様、このベルをならすと商人を呼ぶことができますが、用事のない時は鳴らさない方がいいと言われました。」
テーブルに置いてある小さな鈴がそうなのだろう。
うっかりならさないように気をつけようというか、ベルを鳴らすと金がかかると教えてくれる魔人の商人は親切である。
魔人は凶暴だと聞いて居たがすべての魔人が凶暴じゃないのかもしれないな。
「ありがとうございます、それと俺はシャルルというので、今度からはシャルルと呼んでください。」
「そうですか!シャルル様というのですね、よろしくお願いします!」
様はつけなくてもいいと訂正しようとおもったけれど、賢者じゃないとバレると殺されるかも知れないので訂正できない、勘違いさせたまま頑張ろう。
とてもいい人、いや、良いドラゴンである。
「では、僕はそろそろ寝ますので、またよろしくお願いします。」
と部屋を出て行ったが、寝るって今何時なのだろうか、もうそんなに遅い時間なのだろうか。
ドラゴンの巣作りは、宝物庫をお宝一杯にすればいいらしい。
お宝一杯ってなんだよ・・・。なんなんだよ。
カタログというどでかい本は素晴らしい。
魔物、家具、魔導書など一通りそろっているのだ。
値段はものすごく高いけれど・・・・。
お宝一杯にするためにドラゴンってどうやって稼いでるんだ?と想起するのは詩人の詩である。
街や村を襲っていたドラゴンを――。と何度も繰り返し聞く有名な竜殺しの英雄の話ではあるが。
そうなのか、”襲う”のか街や村を・・・・。
当然ながら、町や村を襲えば討伐隊が出るわけで、折角奪ったお宝を守らなければならない。
ドラゴンがシアを作らないといけない理由がわかったような気がした。
単純構造のシアでは簡単に突破されてしまうだろうから、構造を複雑にしてトラップを仕掛けて攻略時間を長引かせてさらに魔物も徘徊させないと――。
いくらライルが恐ろしく強くても大人数で攻められれば、お宝を守り切れないだろう。
村を襲うのはライルだし、俺じゃ無いけど、手伝ってるし・・・。うーん、考えるのはやめよう。
巣作りを教えるといっても、人にものを教えたことが無いのでどう教えれば良いのやら。巣作りなんてそれこそ教えられるものでは無いだろう。
俺も手探り状態だし俺のやっているところをみて巣作りを理解してもらう方向性でいってみるしかないか。
それにしてもこのカタログという本は本当に面白い。
一生懸命カタログを読んでいたら、結構時間が経っていたようで
「シャルル様おはようございます!さっそく色々と教えてください」
とライルが挨拶をしてきた。
「ライルさんはどこで寝ていたのでしょうか?もう一つ部屋があるのですか?」
「部屋は一つしか無いので、大広間で寝ていましたよ。」
これは大変なことになった、俺がライルの部屋を奪ってしまったらしい。
「この部屋はどうやって作ったのでしょうか?」
「商人から買いました。」
部屋まで売ってるのか・・・。
部屋中にある蝋燭の火も結構明るいし、そういえば蝋も溶ける気配がないな。
消えない明かりか・・・素晴らしい。
蝋燭の交換や在庫補充に悩む心配がなくなった。
「まだ資金に余裕有るんですか?必要なものが結構あるので確認をしようとおもっていたところです。」
「はい、まだ宝物庫に残っているので有るだけは使えますよ」
「あるだけですか・・・。」
ということで宝物庫をのぞいてみると宝が山のように積んであった。
山といったら山なのだ、宝の山なのだ。
あまりの額に頭が真っ白になってしまった。
あの山以上の山なんて築けるのだろうか・・・・。
金があったということだけ意識して金額は出来るだけ考えないようにしよう。
処理しきれない情報は混乱するだけである。
始めにやることと言えば、あのまっすぐな道を改善することだな。
空間?を買うことができるらしいが、高いので穴を掘れる魔物を買ってみよう。
収入が無い状態での出費は出来るだけ抑えた方がいい。
「ライルさん、土を掘れる魔物を購入したいのですが、いいでしょうか?」
「もちろんです!賢者様のは好きなものをかってください!」
購入理由とか聞かないのか・・・・。
村一番の馬鹿は強ち間違いじゃ無いというか商人に騙されて高い買い物させられたかもしれない。
ライルが馬鹿のままのほうが俺としては助かるようなきもするが、最低限度の警戒心だけは持ってほしい。
俺一人で何でも決めるのは良くない誤解されることや意見の相違もあるかも知れない。
ライルの機嫌を損ねればそこで終わりなので、慎重に話を進めなくてはいけない。
好きなものを買えというがライルと相談して、穴掘りが得意そうな魔物を選ぶとするか。
カタログで探してみると穴掘りが得意そうなのは、ミルミ、ルヴルフ、マドレぐらいのようだ。
ミルミはアリに似た魔物で値段は安いがヴァスィミルミという高価な魔物を買わないと繁殖できないようだ。
高い割には、同額の魔物と比べると弱そうだ、繁殖数の多さが特徴といえるのだろうか。
そう考えると、モグラなルヴルフかイタチに似たマドレになるのか。
ルヴルフは戦闘力がマドレより低いが穴掘りに特化しているので、マドレよりも安い。
戦闘力が高いほど値段が高くなるようである。
ライルに尋ねると、「全部買えばいいのでは?」と返ってきた。
後先考えないで購入して破産しちゃう子だ!危ない!ライルにお金を持たせちゃいけない!
冒険者にも居たなー、その日受け取った依頼報酬をすべて使ってしまうので、依頼が受けられないときはよく騒ぎを起こしていたな・・・・。
懐かしい日々の思い出が浮かんできたが、ライルをあんな感じの人にさせてはいけないと使命感が出てきてしまった。
保護欲が出てしまうほどの駄目さがライルの魅力なんだと思うんだよね・・。
俺がそんな事を考えているとは知らずに、笑顔のライルさんであった。




