名の売れない冒険者
冒険者であるシャルルは目立った実績がないまま日々を過ごしていたが、今回の探索は人生で初めて運が向いているのではないかと思っている。
ノース村南部にある森の奥深く、聖域と呼ばれる場所で隠された洞窟を初めて見つけることが出来たからだ。
見た目は小さな洞穴だが、中に入れば別世界のように広く深い迷宮になっている。
こういう不思議な場所を冒険者たちはシアと呼んでいる。
正式名称はシエンアデンというが、一般的にシアと呼ばれている。
シアには貴重な魔導具や財宝が眠っていることが多いし、魔結晶も入手できるとあって都では重宝されている。
古代文明の遺産を求めてシアに潜っているんだとかいってみるのも悪くない。
新たなシアを発見したという功績も冒険者としては大きいが、さらに貴重な財宝を入手すれば一気に有名になれる。
だが、ハズレのシアを見つけたときは最悪である。
ハズレシアというのは、魔物も宝さえ無いシアのことである。
過去何カ所かそういうシアが発見され、名声が悪名に変わった冒険者は一気に引退する流れが続いていた。
昔はシアを見つけただけで有名になれたが、今はシアを見つけた後もギャンブルであった。
そのため、シア探しはパーティーよりもソロが圧倒的に多い。
ハズレを引いたときに気づかれないように、宝や名声を独り占するためでもある。
シアで財宝をみつける事ができれば、知名度も上がり一流の冒険者の仲間入り。
ついに自分も有名な冒険者になれるかもしれないのだ。
詩人によって奏でられた物語は真情溢れるものであり、人々を魅了してやまない。
その詩に魅了され冒険者を目指した俺としてはとても名誉なことだ。
その一部に自分の物語が語られた姿を想像しながら、つらく厳しい日々も耐えて頑張ってきた。
成人して早4年経過しているが、特に目立った活躍も出来ないまま依頼をこなす生活は、ため息しか出てこないほど地味なものである。
努力はしているが必ずしも結果に結びつくということはないけれど続ける事は大切だ。
辺境の地にあるノース村は森の神を崇めており、月に一度畑でとれた野菜や森で狩った動物を祭壇に捧げる風習が現在も続いている珍しい村だ。
捧げられた供物は一定期間食物庫で保管されたのちに税や祝い事で使われる。
そういった風習がある村の周辺でシアが発見されることが多い。
こう言う村に精堂が建っていないのも既に信仰している神が存在しているからだ。
なんども教会の牧師などが尋ねてくるそうだが、追い払っていると聞いたことがある。
その牧師が重い病気にかかったとか、魔物に襲われたのはきっと偶然だろうが神の怒りに触れてしまったとの噂が広まり教会は沈黙した。
そんなこともあってか、こう言う村には精堂がないのである。
あの強欲どもが簡単に諦めるとも思えないが、現状精堂が建っていないので教会側も手を拱いているのであろう。
俺の他にもシアを探す冒険者が数人村周辺に居たのだが、娯楽も仕事もないとくればすぐに村から去って行っていくのは当然のことだった。
ノース村の特産といえば薬草で、仕事と言えば薬草採取か農耕の手伝いといったところだ。
低賃金で重労働なんて割に合わないどころかやりたくないの一言に尽きる。
冒険者の稼ぎどころである護衛や討伐なんてものはない。
ノース村周辺には魔物が出ない平和な土地なので、急ぐ必要がない馬車も流行らない。
馬車が流行らなければ護衛なんて必要無いと言うことだ。
農耕や狩人などになりたくないからこそ冒険者をやっている人が大半で、仕事がそれしかないのでは話にならない。
きつい仕事を終えてから、パブで飲み食いすることに慣れてしまった冒険者たちにとって、それがないのも致命的ともいえる。
遺跡や洞窟を探すには近くの村人との信頼関係が大切で世間話から思わぬ情報が聞けるなどあると、以前出会った冒険者から教えられていた。
村外からの収入を期待していないのか、この村には宿がなかった。
辺鄙な村には宿屋くらいは最低あったはずだがここはその最低限もない。
野宿の用意がない冒険者は一つ前の村までもどり宿泊していたが、かけた労力の割には得るものが無く数日で冒険者は居なくなってしまう。
野宿なれしてない冒険者は、野宿道具一式を運ぶのに苦労するため依頼であればポーターを雇っている。
シア探しなどは依頼ではないのでポーターを雇えば赤字だ。
日々を過ごすだけでやっとの生活をおくっている冒険者が多いので、ポーターを頻繁に雇う金なんてないのが実情である。
シャルルは、シア探しを中心に活動しているためか一般的な冒険者よりも稼ぎが少ない。
そのため宿代を浮かすのに野宿や狩猟などを日頃から行っていたので、この村の周辺で野宿することに不満は感じなかった。
日頃の貧乏万歳といったところだろうか。
ガルカンズ地方は寒暖差のすくない安定した気候で、野宿に適しているので快適といったところだ。
気をつけるとしたら雨期が長いくらい。
虫除けの呪いも雨に流されてしまうため、雨が降らないほうが都合がよい。
この村は自給自足で生活しているのか野菜すら売ってない。
時々来る商人から商品を買うしかないのでは、村外からくる人にとっては狩猟や採取なしで生活できない。
唯一の店が鍛冶屋だが野菜などの物々交換もやってくれるので、必ずしも貨幣が必要ではなかった。
山菜などを取っては鍛冶屋のおっさんに自分はこの周辺で野宿をしていることをそれとなく話しながら交流をしていたが、おっさんは無口なので俺が一方的に話しているだけになっていた。
鍛冶屋のおっさんは、トーマという名であることや野草だと白根草が好きだなど村人にそれとなく話をふりながら雑談し少しずつだが情報を交換することに成功した。
ナイフで動物を数回捌くと切れ味が悪くなるので手入れは重要だ。
自分で研いでもいいが、町へ戻らないと砥石などが手にはいらないので鍛冶屋に頼むのが一番。
少しずつ話せるようになってくると、取った山菜やキノコを別なものに交換できないか交渉出来るようになった。
村人と物々交換しながら充実した食生活をおくり、遺跡や洞窟を探し続けて半年が経過した。
鍛冶屋で世間話をしていると村長のアルフレッドさんに声をかけられた。
野宿生活は大変そうですねから始まり、一緒に住んでもかまわない住人がいるけれどどうだろうか?と提案された。
テントよりも良い環境で生活できるとくればその話に乗らない手はない。
村長の話はありがたく受けることになりそれからずっと、カインズさん宅でお世話になった。
雨期対策のために木の上で生活出来るよう足場を組んだが使わずに済みそうである。
カインズさんは一人暮らしで寂しかったのか、話し相手が出来たと喜んでいた。
妻を病気で亡くし、息子は街へ行ったきり帰ってこないそうだ。
そういえば家を出たきりで実家に帰ってないな・・・。
カインズさんを親だと思い、手伝いを頑張ろうと決意するシャルルであった。
カインズさんの手伝いは、早朝の畑の世話から始まり森での薬草採取の手伝いをすることだ。
薬草を売って外貨を得ているためとても大切な作業とも言える。
そのまま持ち込んでも良いが、すりつぶすともっと値段が上がるので薬草をすりつぶして壺に入れて売るようにしているという話だった。
週に1度は採取した薬草をすりつぶす作業がプラスされるので、その日は探索を諦めるしかない。
採取したその日にすり潰さないのかを尋ねると、まとめてすり潰したほうがめんどくさくないそうだ。
村人とのつきあいもあり週に1度狩猟を行っている。
村の男性陣全員で行うためチームワークが要求される。
狩猟犬を使い得物を探し、追い立てて仕留めると簡単に言ってしまうとそうなのだが、一人で狩りをして得物を逃がすよりは効率が良いな。
一人で狩りをしていたことが長かったため、狩猟犬が追い立てようとしている獲物を仕留めてしまったりとチームプレイを乱すことが多々あったが、獲物さえ捕まえればどうってことはない!
結果が良ければ多少の失敗も多めに見てくれるだろうと良いように考えていた結果
チームワークが身につかずあいかあらずといった感じだ。
捕まえた獲物の臓物はその場で処理して皆の昼食になり、毛皮や肉など捌く作業は女性中心になって行われる。
その後飲み会があり狩猟の日は丸一日がつぶれてしまう。
ここで飲む酒は、きつい薬草酒かシードルしかない。
ないはずなのだが、次々とみたことがない酒が登場する。
正体不明の酒を自信満々に掲げては酒の説明をしていく男達。
その話を聞き青ざめる俺。
透明な酒に無数に浮かぶものをみて、なお一層気分が悪くなってくる。
この場から生きて帰ることができるだろうか。
飲み会になると自慢げに男衆が作ったであろう下手物酒を飲まされヒイヒイ言っていた。
お願いだから、虫やトカゲなどを入れるのは止めてくれえぇぇ。
いつまで続くのかわからない宴会は太陽が昇るまで続くのであった。
ノース村で生活するようになってから、探索の時間があまりとれなくなっている
その分村人との交流が深まったのは良いのだが、仲良くしすぎてしまったのか村娘のメイナという女性と結婚話まで持ち出されてしまった。
こんな綺麗な子が結婚していないのはおかしいと思ったくらい綺麗だった。
村で一番綺麗いなメイナが今まで結婚できなかったのは、神へ捧げる巫女としての役目を務めているからだった。
といっても、供物を受け取る神など村長すらみたことがないそうで形だけのようなきもする。
もうそろそろ、その務めも終えるということでその話が俺に来たようだった。
村で独身の男性がいそうな気もするがと考えてみたが、そういえば男衆は全員既婚者だった。
メイナを嫁にもらうと宣言していた男たちは、村長の策略にはまり今では立派な父親である。
男達になにが起きたのかは酒のつまみとしておもしろおかしく聴かせてもらったが、背筋が震えたのは気のせいだろう。
実は俺も罠にかかってたりというオチがないよな。
罠と行ってもこの罠は甘い甘い誘惑たっぷりの罠なので、むしろかかってしまいたい。
村の外からくる人間は珍しいので是非とも村に残ってもらいたいという村長の思惑だろうか。
それにこんなチャンスはもう訪れないだろうと思える女性であるが、こんな辺鄙なところで生活すると考えると冒険者の夢は棄てきれず断ってしまった。
村長はいつでも返事はまっているけど、早くしないと相手が見つかってしまうぞと脅してくる。
メイナとは話したことがないが、見た感じではとても優しそうだった。
神の巫女に選ばれると、男と接触することは汚れとされている。
村外から人が来ると家の中に入っていたようで、村で暮らし始めてから見かけるようになったのはそのせいだった。
メイナの父親は、酔っ払うと娘と離れて暮らす寂しさや会話が出来ないことに涙していたのを思い出した。
今でも話を断った事を後悔しメイナの姿を見る度に心苦しくなる。
結婚しちゃおうかなって考えてしまう。
毎晩、夢かメイナかと天秤が揺れては僅差で夢が勝っている状態でこのまま続けば俺は結婚してしまう。絶対に。
美人の奥さん幸せな家庭と脳内で無限ループする呪いの言葉を振り切るために森の奥へ探索へでかけることにした。
森の奥は神聖な場所だと言われているため村人も容易に踏み込まない場所なのだが、危険な魔物が潜んでいないというおかしな場所だった。
神聖だと村人に伝えているところには、大抵凶悪な魔物の縄張りになっていることが多く、その魔物に村人が被害に合わないように言われていることが多い。
そんな不思議な森を村人に見つからないように捜索すること1年にしてようやく茂みに隠れた入り口を発見したのだった。
叫びそうななるくらい興奮してしまったが、喜ぶのはまだ早い。
ここがハズレでないか確かめる必要があるからだ。
周囲に誰も居ないか何回も確認した後に探索を開始することにした。
シアでは基本罠が仕掛けられていることが多いため、冒険者は一通り罠を回避する術を習っている。
冒険者ギルドでは簡単な罠の発見方法から解除方法、簡易の鍵なら開錠する方法を教えている。
冒険者の生存率を上げるためにと無償で技術を教えてくれるギルドは素晴らしい。
他にも戦闘訓練や武器の手入れの仕方など有料で教えてくれるが俺は独学でなんとかしてきた。
講習料も安くないのである。
新米はまだ罠の見極めが甘くトラップに引っかかるが、2年もすれば罠にかかりにくくなる。
複雑な仕掛けになると、機工士や魔導士の協力を得なければならないが今回は大丈夫なようだ。
洞窟内に入ると背筋が凍るような冷たさに襲われ身震いしてしまった。
外は気温が高いせいなのだろうか、シア内の温度は寒気を感じるほどではないのはずだが。
久しぶりのシアに体が吃驚しているに違いない。
カンテラで周囲を照らし、床や壁を何度も見ては、一歩一歩慎重に進む。
苔一つ無い綺麗な壁だが状態維持するための特殊な魔法がかけられているのだろうか。
魔法、魔法言えば。魔法さえ使えれば、カンテラに頼らず暗い洞窟内で歩けるのが羨ましい。
腰に下げると足下しか見えない。視界が狭まるのは命取りなので、手にもつしか無いのだが、片手が塞がるのはよろしくない。
俺みたいな腕力のない冒険者は細身の剣しか持てないので、両手さえ使えればもう少し重い剣も扱えるのにと思うときが何度もある。
不意を突かれて魔物に襲われた時なんて最悪だ。
カンテラを地面に落とすなど壊れてしまうアクシデントも発生してしまうので、本当に魔導士は羨ましい。
魔法が使えたら楽なのだろう。
羨ましい、羨ましすぎる。
無い物ねだりしても何もならないのだが、考えてしまうのはしかたがないことである。
魔導士はなりたくてもなれない。
大昔、魔人と戦争していた頃魔人に犯された人間が沢山居てその子供が魔力を持つようになったと言われている。
昔は汚れた血だなどと差別されたりしていたが、魔法使いの有用性がわかると保護対象になり今や貴族よりも立場が上なのでは無いかというくらい。
すべての魔法使いがそういう立場ではないので、地位が低かったり魔力量が少ない魔導士は冒険者として活躍しているものも多い。
魔法を見る度に羨ましいと思ってしまうのもしかたがないことなのだ。
持たない人間は。持ってる人間を羨ましいと思ってしまう。
そんなことを考えながらシア内を移動しているとトラップを発見した。
一見他の床と変わりが無いように見えるが、ここにトラップが仕掛けられている。
長年の経験と勘で微妙な変化がわかるようになってきてはいるはずだ。
あまり自信が無いのだが。
森であらかじめ拾っていた長い木の枝で、床に仕掛けてあったトラップをつつく。
つついた床の壁あたりから矢が飛び出して来た。
矢は反対側の壁にぶつかり床に落ちる。
接触系のトラップのようだが、床に配置されたのを見たのは新人研修以来だ。
シア内には、徘徊する魔物や小動物などが入り込むので接触系だと暴発してしまう。
ある一定回数罠が発動すると消えるという報告があるため、接触系は床トラップでは使い物にならない。
そのため、床に配置するなら圧力系のトラップが通常で接触系のトラップは見たことがなかった。
色々考えながら進むが、初心者が仕掛けた罠のようなバレバレのものが仕掛けてあり、道もまっすぐと何の冗談なのだろう。
おかしい、おかしすぎるぞこのシア。
まっすぐ伸びる一本道は、まるで処刑台へとつながる道であるかのように感じるほど不気味であった。
冒険者ギルドの演習所でつかわれる仕掛けの数々。
ひねりのない罠に殺傷性が低いトラップが仕掛けてあるだけで危険が感じられない
そして、一体すら出てこない魔物。
まさか、冒険者ギルドが作った施設とか言わないよな・・・。
まさか――。
いや、そんなはず無いよな・・。
そんなこんなで、不安を抱えながら進んでいくと、大きな鉄の扉で道は終わっていた。
施錠はしてあるが簡単なものなので、熟練の冒険者なら数分あれば開けることができるのだが、開錠が苦手なためか新米よりやや早い程度の時間がかかてしまう。
鉄の扉だし、鍵かかかっているからここに宝が眠っているかもしれない。
扉をあけたら部屋一面黄金の山だったらどうしようとかおもったけれど、仕掛けてあった罠からしてあまり期待が持てそうもない。
でも、ここまできたら開けるしか無いだろう。
期待をもちつつ、ゆっくりと重い鉄の扉を開いた。
黄金の山が見えた!なんて思うほど人生は甘くなく、何もないだだっ広い部屋が俺を出迎えてくれた。
「そんなはずはない!何も無いはずは無い、きっと奥まで探せば宝があるはずなんだ・・・・。きっと」
焦っていた、やっとの思い出見つけたシアが外れだと思いたくなかった。
カンテラで照らしながら歩くと光るものを見つけて、焦って足早に近づいたのが間違いだった。
光ったのは水晶ではなく巨大な瞳。
その金色の眼が俺をじっと見つめている。
恐怖心で心臓が今にも弾けそうなほど高鳴りながら、カンテラの頼りない明かりでゆっくり映し出されたのは大きな鱗だった。
徐々に移動させてようやくそれの正体がわかった俺の意識は消えていた。
目が覚めるとベッドの寝ていたようだ。
夢を見ていたのだろうか。
シアを探す事ばかり考えていたからああ言う夢をみてしまったのだろう。
あたりを見回せば大量の蝋燭の明かりに照らされた部屋で、椅子に座っている貴族似にた風貌の美青年がこちらを向いていた。
「いやー驚きましたよ。貴方が突然倒れてしまったのでベッドまで運びましたが、気分はどうでしょうか?」
誰なのかわからないが俺をベッドまで運んでくれたようだ、何故倒れたのだろう。
倒れるような事をしたのだろうかと少しだけ思い出そうとすると、恐怖が蘇りガタガタと体が震えてしまった。
突然倒れたと貴族風の青年が言うのだからその場に居たのだろうと予想を立てるが、あれのそばに人が居て無事なわけがない。
アレの姿がが脳裏にちらつくたびに体の震えがとまらなかった。
アレの姿をみて平気な人間なんて一人も居ないと俺は思う。だが貴族風の青年は穏やかな表情をしていた。
おかしい、アレをみてそんな表情できる人間が居るはずがないのだが、人であってほしいと思い込む俺は自分自身に言い聞かせた。。
「ここはどこですか?あの怪物は近くにいませんよね。」
「ここは僕の部屋ですよ。怪物?あなたの言っていることは難しくてよくわからないです。」
そんな穏やかな笑顔で冗談だろ、俺は夢でも見ていたというのだろうか。
「そうそう、あなたは大変素晴らしい才能をお持ちのようですね。私が仕掛けたトラップをくぐり抜けてきたことに驚きでした。僕は――」
目の前に居る青年はあの化け物の関係者なのだろう。
ながながと話しているが、俺はその話を冷静に聞いていられそうもない。
近くにあの化け物がいると考えるだけで話はきこえてくるのに、内容が頭に入ってこない。
早くここから逃げないと殺されてしまうという恐怖で頭が満たされていた。
慎重に冷静になるんだ、どんなにピンチだって必ずチャンスはある。
まずは落ち着けー、落ち着くんだと念じてようやく少しは冷静になれたはずだ。
「実は――。私の頼みを聞いてほしいのですが。」
「え?頼みですか??」
最後の言葉だけ聞き取れたので聞き返してしまったが、問題ないだろうか。
「賢者様に巣穴作りを教えてもらいたいのです!!」
情熱に溢れた瞳で見つめられても困ってしまうが、なんだ賢者様って?俺は賢くないぞ・・・。
「やはり、僕のような愚か者では教えては貰えないのでしょうか・・・。」
青年が急にしょんぼりしてしまったが、この青年の機嫌取りをすれば、無事にシアからでることができるかもしれないと俺の直感がそう言っている!これはチャンスなんだと!
と自分の第六感を信じてみることにした。
「あ、はい。いいですよ。俺でよければ教えます」
賢者うんぬんはおいといてとりあえず肯定的に話を進めてみよう。
なんて気軽に答えたのが大きな間違いだったのかもしれない。
選択を誤ったことは何回もあったけど、してはいけない間違いなんだと後々気づかされることになる。
「本当ですかありがとうございます!!いやーよかった。賢者様がいれば、私の巣作りも安泰です!」
「え?なんですか、巣作りって・・・。」
貴族は洞窟に巣でもつくるのだろうか・・。
地方の貴族って変わった生活をしているものなんだな。
あはははは・・・。
「いやだなーもう、先ほど話したじゃ無いですか。私はドラゴンのライル・フォンセといいます。先週から巣作りを開始したのですが―――」
ドラゴンって人語話せるんだねー。もうどうにでもなれー。
こうしてシャルルは、ライルの巣作りを手伝うことになったのでした。
初登校いや、初投稿ですよろしくお願いします。
読んでくださった方はありがとうございます、読んでない方はよろしくお願いします。




