最終話
「ラーシヴァルト! おかえり!」
数週間後。
ライリーレ簡略港に到着すると、たまたま釣りをしていたリスガが俺に抱きつき、出迎えた。おお、元気そうでよかった。
いつものことながらダデラも一緒で、でもやっぱりなぜかむっとした顔をしている。なぜだ。
「ただいま。リスガ。ダデラも。いい子にしていたか?」
「うん! ちゃんと宿題もやった!」
「答えをちょっと写してたけどな」
ダデラに暴露され、オルドゴがぴくりと片眉を上げる。
もちろん、俺も。
「こら、リスガ。分からない問題は白紙でもいいんだ。怒ったりしないよ、先生は」
「……はぁい」
リスガはしゅんとして、黒毛耳が三角に折りたたまれていく。
まったく……怒られるのが嫌だからって。それとも、俺が日頃から怒りすぎているのか、もしかして。そのせいで嫌になったんだろうか。
うーん、子育てって難しい。
「アゼルおにいちゃーん!」
そこへ、どこからかスウェンまでもやってきて、アゼルの方へたたたっと走っていく。
俺たちはぎょっとした。危ないよ! まだ五歳なのに!
「スウェン君!」
アゼルは慌てて自分から駆け寄って、スウェンのことを即座に抱き上げた。スウェンはにこりとご満悦の様子だ。きゃっきゃっとアゼルの腕の中ではしゃいでいる。
アゼルも……なんだか嬉しそうだった。この国に居場所があると実感しているのかもしれないな。
「そっちは何もなかった?」
俺に抱きついたままのリスガが首を傾げる。
俺もまた、リスガを抱き返しながら、笑って答えた。
「まぁ、大丈夫だったよ。思わぬ武勇伝を手に入れられたくらいで」
「ぶゆうでん?」
「強くてカッコイイところを見せられたかもしれない話。客観的に」
「ラーシヴァルトは普段からカッコイイよ!」
屈託のない笑顔を弾けさせるリスガに、俺は不覚にもキュンとしてしまった。リスガ、そんな風に思っていてくれていたのか!
「リスガも毎日可愛いぞ!」
「ふっ、はは! くすぐったい!」
ぎゅーっとか細い体を抱きしめると、リスガは身をよじらせる。黒毛耳はピンと立ち、ふさふさの尻尾がぶんぶんと嬉しそうに揺れている。
ダデラはもう、殺気だった目で俺たちを見つめている。だ、だから、なぜ。
「今日も平和ですね」
「そうですねぇ」
俺たちの後方で、レノスとカザロが微笑み合っている。ザシェーバも「だな」と笑顔で同意した。
イブキはふっと笑みをこぼす。微笑ましげに笑ってそそくと身を翻す。
「はっはっ。若者はいいのぅ」
オルドゴが目尻を和ませ、締めくくった。
空をふと見上げると、そこには晴れ渡った冬空が広がっていた。
……だけど、その数日後。
サーシェ王国からとんでもないことが書かれた書簡が届く。
曰く。
『そちらへの移住希望者の件、許可を取り消す。ただちに我が国に帰還せよ』




