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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十三章 ルシアの先祖返り

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エルドの独白

ルシアの踊りを見た後のエルドの独白です。

エルドの感想も書きたくなったので書きました。


※時系列的にはep.93の前です。

 ルシアに向けた拍手がやまなかった。


 割れんばかりの歓声と熱気が、まだ広間の天井に残響している。


 それなのに。


 私の耳には、不思議なほど何も入ってこなかった。


 私の目に映るのはただ一人。広間の中央にいる彼女しか見えていない。


 ルシア・カルミナート。


 赤い髪が、ほどけて肩を流れ落ちる。

 灯りを受けて揺れるその赤い髪は炎のようであり、血のようであり、あるいはーー命そのものの色のようだった。


(……綺麗だ)


 まず浮かんだのは、そんな月並みな感想だった。


 違う。綺麗、などという言葉では、足りない。


 ルシアは……


『存在しているだけで、人の視線を奪う』


 そういう種類の生き物だった。

 ドレスの裾が花弁のように広がり、ぴたりと止まった、あの最後の瞬間。


 時間そのものが止まったのかと思った。


 誰も呼吸をしていない。


 誰も瞬きをしない。


 まるで世界が、彼女のターンに合わせて回転していたみたいに。


(……これが、王の心を掴んだと言われる先祖返り。赤髪の踊り子の踊り)


 川辺で話した時、ルシアは幼い頃からカエルを捕まえたり、一人で庭で踊っていた、と笑っていた。


「私の踊りは、おばあちゃん以外は誰も見てくれなかったの」と。


「きっと私がまたふざけてるって思われてたのね」と。


 なのに。


 どうしてこんな踊りができる?

 どうして、こんなにも人の心を掴める?


 教えられた型ではない。


 貴族の社交ダンスの優雅さとも違う。


 もっと原始的で。


 もっと自由で。


 もっとーー魂に近い。


(ああ……)


 胸の奥が、じくりと熱を帯びる。羨望と誇りと、そして……ひどく醜い感情。


 彼女を見つめる無数の目。


 称賛の声。


 男たちの熱を帯びた視線。


 その全てが、ひどく気に食わなかった。


(見るな)


 思わず、そんな子供じみた独占欲が喉まで込み上げる。


(私のものだ……)


 私の婚約者だ。私の隣に立つはずの女性だ。


 なのに。


 どうしてこんなにも、世界に見つかってしまう。


 どうしてこんなにも、誰もが彼女に恋をする。


「……まいったな」


 小さく呟く。


 私はもっと冷静な男だと思っていた。政治も、駆け引きも、損得も。常に理屈で判断してきた。

 それ故、感情に振り回される人間を、どこか軽蔑してすらいた。


 それなのに。


 たった一人の女性に、こんなにも心を乱されるなんて。


 いや、もう気付いているはずだ。エルド・グレイシアード。お前はこの女性。ルシア・カルミナートに出会った頃から……


 何度も何度も、噛み締めるほど過ごしてきた。今日までのルシアとの日々を……今さら否定など、できるはずもない。


 あの時からすでに、恋に落ちていたのだと。

普段は大人で余裕ある男性が、好きな人のことに関して内心ではめちゃくちゃ喋る人っていいですよね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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