そういうわけでもあるかしら?
悪役令嬢になりきる誓いを立てたことも秒で忘れたルシアに、侍女のフウカは呆れながら謎アドバイスをするが……
「まぁ……!フウカこれを見て!私が前から欲しかったうさぎの抱き枕!子どもっぽいと思っていらないと思っていたけど実は私、抱き枕がないと寝れないの!」
「……ルシア様。悪役令嬢はそんなはしゃぎ方はしないんじゃないですか」
フウカがすかさずはしゃいでいるルシアに謎助言をする。
「むしろ逆の反応をすると思いますよ。『何この部屋!狭!狭いわ!私の部屋と比べたらクローゼットの方がマシね!』とか言って……」
「そっ、そっか!はしゃいじゃいけないのか!私ったら……フウカ、部屋に入るところからやり直してもいい?」
「もー!諦めてくださいよ!そもそも悪役令嬢はお嬢様には無理ですって!元々素直なんですから。何度やり直しても元の性格が出てしまいますよ」
「いいえ!やり直します!ほらフウカ、私と一緒に扉の前に……」
赤い髪を翻して、ルシアが扉の前に方向転換しようとしたその時……
コンコンッ!
「ルシア嬢、到着しましたか?」
こっ、この声!侯爵様だわ!//
どどどどどうしよう!侯爵様がいらっしゃるというのに私ったら髪もボサボサで、ドレスも適当でちっとも悪役令嬢っぽくない桃色のドレスを着ている!
桃色なんて正ヒロインの色じゃない!私の馬鹿馬鹿馬鹿!
「……お嬢様。開けてもよろしいですか?侯爵様を待たせると失礼ですよ」
「そ、そうね?開けてちょうだい!」
重い音を立てて扉が開く。そこには背の高い、黒髪で銀色の吸い込まれそうな瞳に、黒いスーツの似合う素敵な私の……
「こ、侯爵様……ご、ご機嫌よう」
扇子こそないものの、ルシアは悪役令嬢っぽい話し方をした。
エルドは全く意にも介さず微笑んだ。
「どうかなこの部屋は……君をイメージしてファブリックも小物も揃えさせたんだ。気に入ってもらえると嬉しいのですが……」
さあどう出る?ルシア嬢で行くのか?それとも"悪役令嬢"のルシアで行くのか?
フウカは部屋の片隅で見守る。
「と……」
「と……?」
「とても気に入りましたわ!私のためにここまでしてくださるなんて……侯爵様ってすごく優しい方なんですね!」
「違うだろぉ!?」
フウカが思わず叫んだ。エルドはその様子を不思議そうに見ていた。
「あっ!そうだ!私ったらまたはしゃいでしまった!」
「……?君ははしゃいではいけないのか?」
「い、いえ!そういうわけではなく……そういうわけでもあるかしら??」
ルシアはまたも混乱していた。
「あっ、そうだ!!」
ルシアは思い出したようにぱっと顔を輝かせた。
「このうさぎの抱き枕!ずっと欲しかったんです。ありがとうございます!」
「あ、ああ……気に入ってくれてよかったよ」
(ダメだこりゃ……)
部屋の片隅で様子を見ていたフウカは密かに頭を抱えた。
ルシア様に悪役令嬢は難しそうですね、汗
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