まだ諦めないわ!
結局「婚約破棄だ!」の言葉も聞けず、ルシアは侯爵様の用意した部屋に入ることになるんだけど……
その日の夜。ルシアは自室のベッドの上で一人悶えていた。
侯爵家の元にルシアのお気に入りの家具は何でも持ち込んでいいということで、その準備でルシアはほとんど自分の荷物がない状態のガラガラの部屋に唯一残されたベッドに転がっていた。
「ああ〜!!こんなのじゃ全然ダメ!全然上手くいかない!それどころかこのままじゃエルド様と結婚してしまう!」
『婚約破棄だ!』のセリフも聞けないままに!
……でも、あの時のエルド様。素敵だったな……
『ルシア嬢!』
フウカよりも早く来てくれて、私の手を壊れ物のように優しく包んでくれて……//
ルシアはエルドが触れていった自分の手に触れる。
あったかい手だった。見た目は氷のように冷たい方なのに……
はっ!!
ダメよ!ルシア、絆されそうになってはダメ。あの男は冷酷で非道で女を道具としてしか見てない最低のモラハラ男なんだから!
化けの皮を剥がしてやるわ!このルシアが。悪役令嬢としてね!
高らかに拳をあげ、ルシアは誓った。
私はまだ諦めてはいない!悪役令嬢になるという夢を!
* * *
「ええっ?!こ、ここが私の部屋!?広!ひっろ!ねぇフウカ見て。前の私の部屋この部屋に比べたらまるでクローゼットみたいだわ!」
「ええ、本当に。エルド様のお気遣いが見て取れるようです」
ルシアの部屋は一歩足を踏み入れた瞬間から、「ここに住む人は可愛いものが大好きなのだろう」と一目でわかるものに満ちていた。
大きな窓から差し込む柔らかい光、床には上品なピンクベージュのふかふかのラグ。
部屋の中央に置かれた天蓋付きベッドは、赤髪のルシアによく似合うキナリと深紅のリボンでまとめられている。
天蓋は薄いチュールが重なり、ふわりと揺れて少女の夢を包み込むようだった。
グレイシアード侯爵家の新しい部屋に通されたルシアは、先程の誓いも夢も速攻忘れ、部屋の広さとルシアの心を奪う飾りつけにただただ感動していた。
ルシア様、誓いはどうした誓いは!(汗)
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