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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第一章

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侯爵様は意外とチョロい?

引き続き、侯爵様目線のルシアの印象です。

 そしてルシア嬢がカップを落とした時だ。あの時はどうしてあんなことをしたのか今でもわからない。


 気付いたら体が動いていた……


 思わず手を掴む。なんと柔らかく小さな手だろう。今までこのようなことで驚いたことはなかった。


 お互いの顔が近付き、金色の瞳がまるで私を吸い込むように揺れる。


『君のその瞳、金色に近い琥珀色……美しいな』


 思わず口から出てきたのは、ただただ心からの称賛の言葉だった。私とあまりにも真逆の光に、私は目を奪われてしまったのだ。


 * * *


 しかし私は、まだ心を許してはいない。


 噂が嘘であるなら、なぜそんな噂が生まれたのか。

 ルシアは果たして天性の純朴さなのか。

 

 それとも"演じている”のか。


(人は、見た目や仕草だけでは推し量れない。一時の甘い感情に流されるほど、私は愚かではない)


 私はそう自分に言い聞かせ、目を閉じる。


「…………」


(……本当に、噂の悪女なのか?あの純朴そうな、世間知らずを絵に描いたような少女が?)


 どうしても考えてしまう。

 思わず助けに走った自分。

 距離を詰めすぎてしまった自分。

 あの時見た、金の瞳の揺らぎ。


 どう考えても、ただの政略相手に向ける態度ではなかった。


(まさかこの私が惹かれている?今までどんな女性にも一線を引いて接してきた私が?)


『騙されるな。この女も私の地位や財産が目当てだ。いずれ裏切る。心を許すな。情を挟むな。煩わしいだけだ』


 いつの頃からか、そう思っていた。


 だが私が心を閉ざそうとするたび、ちらりと覗く隙間から、赤い髪の少女が、金色の瞳の少女が、ひょいと覗き込んでくるような……


 妙な感覚だけが残るのだった。


(厄介な女性だな。ルシア・カルミナート……)


 そう呟きながらも、エルドの胸はほんの少しだけ、温かく心地よい感覚で揺れていた。


これもう侯爵様落ちかけてるんじゃ?

頑なな侯爵様の心を一瞬でこんなにも溶かすなんて……


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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