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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第一章

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ルシアの印象

ルシアの印象をエルドが語ります。

 ルシア・カルミナートという名を初めて聞いた時、エルドは顔も見ぬ婚約者に対し、一つの期待と一つの警戒を抱いた。


 ーー悪女だという噂。


 冷酷で、わがままで、侍女を泣かせる日常だとか。

 派手好きで、男を惑わせ、他の令嬢からは恐れられているだとか。


(ならば利用価値はある。誰より強かであれば、こちらの意図にも気づくだろうが……それで構わない。情を挟まず政治の駒となるのなら)


 エルドにとって"婚姻"とは政治そのものだった。


 互いに利を共有できる相手ならそれで良かった。

 愛情も憧れも不要。

 むしろないほうが都合がいい。


 ーーだが、初めて対面した少女は。


(なんだ?このオドオドした態度は?噂の"悪女"とは違い、ソワソワして落ち着かなくて……妙に気を揉ませる)


 むしろ、可愛いらしい……?


 幼い顔にはおよそ似合わない真っ赤なけばけばしいドレスを着て、不思議なことを言って立ち上がったかと思うと……


『あっ!えっ!はっ!?いや、これは違うんです。ちょっとドレスの裾が気になっちゃって……』


 一目でわかる嘘をつきながら真っ赤になって俯く。一体何がしたいんだこの子は……そう思うと笑いが込み上げてきた。


「…………」


 何より私の目を引いたのは、真っ赤になって俯いたその様子と、美しい赤色の髪と金色の瞳だった。


(太陽の光……か、私とはまるで違う。それにこの真っ赤な髪……不思議と、どこか懐かしい)


 噂のような悪辣さはこの少女からは微塵も感じない。

 むしろ、自分の前であたふたと視線を逸らす姿は子鹿のようで、慎ましく、警戒よりも守ってやりたい衝動の方が先に立つ。


(は……?守る?私が?誰に対しても心を開くことのなかった私が……初めて会ったこの少女を守りたいだと?)


 ……酔ってしまったのか?エルド・グレイシアード。この婚約も所詮政治。女などお飾り。


 無意識に心が傾くのを自覚し、エルドは無理矢理思考を断ち切った。


エルドはどうやら愛とか恋とか信じないタイプのようですね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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