なんて綺麗なの?!
エルドが仕事に行ってしまったので今がチャンスとばかりに芝居をしようとするルシア。
「お嬢様落ち着いてください!そんな悪役令嬢聞いたことないですよ!」
「で、私が怪我をしたふりをして。あなたを叱咤するの!これで完璧な『悪役令嬢』だわ!」
悪役令嬢《の役》に夢中なルシアは話を聞いていなかった。
「なんで私が怒られるんですか!?」
「いいからいいから!いつもやってることの延長だと思って!」
ルシアはティーカップを掴む。初めてのことなので若干指が震えている。
(本当はこんなことしたくないけど……『婚約破棄だ!』って言われたい!!)
ルシアがティーカップを落とそうとしたその瞬間ーー
ガチャリと応接室の扉を開いて、エルドが戻ってきた。
「終わりました、よりによって顔合わせの時に時間をとって申し訳ない……」
「あっ……」
驚いたルシアの手からカップがするりと落ちた。
……パリンッ……
カップが割れる音が部屋中に響いた。
「ああああどうしましょう!割るつもりはなかったのに!いえ、あったけどそれはフリだけで決して割るつもりでは……」
ルシアが混乱して慌ててカップの破片を拾おうとする。もうフウカを怒るという考えはどこかに行っていた。
「ルシア嬢!」
風よりもフウカよりも早く、エルドが慌ててルシアの元に駆け寄ってきた。
「えっ、えっ、えっ、えっ?」
エルドはルシアの手をまるで壊れ物のように大事そうに包み込む。
「……怪我はないか?指を切ったりは……」
「えっ、と……えっと……//」
(エルド様のお顔が、整った顔が、心地良い声が……近い。でも不思議……)
不思議、私嫌じゃない?モラハラ男なのに。むしろもっと近くで見たいだなんて……//
エルドはほんの数センチ、息がかかりそうな距離でルシアの指先を確認する。
その眼差しは鋭く美しい銀色ーーまるで宝石の縁をなぞるような吸い込まれそうな輝きを放ち……
(な、なんて綺麗なの……//)
「よかった、怪我はしていないようだ」
そう言ってルシアを立たせると、エルドは軽く微笑んだ。
「……あ、ありがとうございます//」
エルドがそっと呟く。
「君のその瞳、金色に近い琥珀色……美しいな」
「えっ……!?//」
(……何この状況……?お嬢様、もしかして侯爵様にときめいてる?)
フウカは二人の様子を遠巻きに眺めていた。
二人は手を取り合いながらしばらく見つめあっていたが、急に我に返った!
「す、すまない。いきなり距離が近かった。会ったばかりなのに……」
「いっ!いえ!//こちらこそ、心配かけてすみません」
二人はお互いに真っ赤になり、それぞれ反対方向を向きながらその場に固まっていた。
(いや、お嬢様。無理でしょこの状況で『婚約破棄だ』なんて……)
割れてしまったティーカップを掃除しながらフウカは思ったのだった。
ルシア様なんだかんだ言いながらもうときめいてるんですが、汗
最後まで読んで頂きありがとうございました。




