今度こそあの台詞を言わせたい!
悪役令嬢に憧れているルシア嬢は、今日こそはと息巻いていた!
「こうなったら直談判です!」
ルシアは赤い髪を翻して高らかに宣言した!
「……何の事ですか?」
フウカはまたこのお嬢様のトンチンカンな行動に巻き込まれることを予想してすでにぐったりとしていた。
「エルド様に『お前とは婚約破棄だ!』って言ってもらうのよ!そうすれば私の胸のモヤモヤも解消するはずよ!」
フウカはまたも頭を抱えた。
(心のモヤモヤって……ただ単に侯爵様を好きになっただけでしょう。お嬢様にはまだわからない感覚だったのかもしれませんが……)
ルシアは急いで何かの書類に自分の名前を書いた。
その書類には丁寧な筆跡でこう書かれていた。
『私エルド・グレイシアードは、ルシア・カルミナート嬢との婚約を正式に破棄する』と……
「あのさぁ……」
フウカは呆れて思わず敬語を忘れてしまう。
「この紙を持って侯爵様にお願いしてくるわ!フウカお願い!私が無事に婚約破棄される事を祈ってて!」
そう言ってルシアは鼻息荒く部屋を飛び出して行った。
「祈っててって……ルシア様の婚約破棄を??そんなの聞いた事もないんですけど!?」
* * *
ここはエルドの部屋。ルシアの部屋とは違い、黒くて重みがあり、扉には向かい合う馬のモチーフの彫刻が施されていた。
「エルド侯爵様、ルシア嬢が来てますよ」
従者のアキラが意味ありげにニヤニヤしながらエルドに耳打ちする。
「……アキラ。そのニヤニヤ顔をやめろ。……わかった。お前たちはどこかに行け」
「はーい!ごゆっくり!」
エルドがそう言うと、まるで波が引くように従者や護衛たちがいなくなった。
(先日の扇子の事かな?気にしなくていいのに……)
エルドはあの時のルシアの眩しい笑顔を思い出して思わず微笑んでしまう。
「侯爵様、ごごごごご機嫌よう!?」
「ああ……」
今日のルシアは先日のような派手なドレスも舞台メイクもしていなかった。
(やはりこの方が私は好きだな。ルシア嬢の金の瞳がよく見える……)
エルドの考えをよそに、ルシアはズカズカとエルドに近づき、机の上に書類を叩きつけた!
「侯爵様、何も言わずにこの書類にサインをしてくださらない!?」
エルドが書類に目を落とす。
『私エルド・グレイシアードは、ルシア・カルミナート嬢との婚約を正式に破棄する』
「……なんだこれは?」
エルドがそう言った時、部屋の空気がずぅん、と重くなった気がした。
なんか嫌な予感しかしないのですが……汗
ルシア様の動きは作者も予測不可能です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




