本気で好きになった事がない!
引き続きエルド視点のルシア様。エルドは今まで女性を本気で好きになった事がない??
私は女性を本気で好きになった事がない。理由は幼い頃からずっと両親を見てきて、そのある意味で割り切った関係に「婚姻とはこんなものだ」と、早くから刷り込まれてしまったからだ。
父親は毎日違う女性を連れて歩き、母は母で散財して暮らしていた。
ある日私は母に、父が毎日違う女性を連れて歩くことに不満はないのかと聞いた事がある。
母は笑って答えた。
「それであの人の気が紛れるのならいいのよ。あの人はそういう事で自分の地位を鼓舞してるの。女性はアクセサリー感覚ね」
満足そうに答えた母に、私は愛だの恋だのを経験する前に、利害で関係を考えるようになってしまった。
だからこそ今混乱しているのだ。
ルシアから目が離せない自分に。私以外の男がルシアを視界に入れる焦りに。
そして何より、ルシアに惹かれている自分の心に。
「私は、ルシア嬢を……好きなのか……」
「あははは!アオイはお利口さんね!フウカを乗せても嫌がらないわ」
キラキラとした眩しい笑顔。
私に気付いたルシアがこちらに向かって手を振った。その笑顔がとても……
「……」
とても……
『魅力的なお嬢様ですよね。ルシア様。目が離せないというか』
ああ、お前の言う通りだアキラ。
どうやら私は、ルシア嬢の事が好きらしい。
気持ちを自覚すると、今までの疑問が嘘のように解消されていく。
初めて会った時に覚えた不思議な感覚も、金色の瞳が眩しく映ったのも、カップが割れた時に無意識に走り寄ってしまった事も、ルシア嬢が市井に出たと聞いて焦ったことも、はしゃいでいるルシア嬢を見て安堵したことも……
不審な輩から咄嗟に守ったことも……全部納得がいく。
そうとわかったら、なんだかますますルシア嬢が愛しく感じてきた。
* * *
ーーその後……
「エルド様はやっと自覚しましたかね?いや〜……あの二人は第三者が介入しないとなかなか自覚しないタイプだから苦労しますよ」
「ですよね〜、こっちはこっちで大変ですよ。ルシア様はなかなか一筋縄ではいきませんから……」
「お互い大変ですね!ははは」
「……本当に。まあでもそれがわかっていて仕える私たちも大概ですけどね!」
「ですね!」
エルドとルシアの知らないところで、侍女と侍従がお互いの苦労を労い合っているのを聞いた人がいるとかいないとか……
アキラという名前は思いつきです。私は侍従や馬には和風の名前を付けたいという謎のこだわりがあります。和風、かっこいいですよね……
最後まで読んで頂きありがとうございました。




