贈り物は扇子ですって?!
やからを眼光だけで蹴散らしたエルドは、ルシアに扇子をプレゼントしようと提案する。
※エルド視点です。
「……街には危険がたくさんあるのだ。先程のような不埒な輩もいる。たまたま私がいたからよかったものの……まったく、今度私の許可なくこんな真似をしたら……」
言いながら、言葉がうまく続かない。
叱りつけたいのに、それ以上に安堵が勝ってしまってしまう。
(何もなくて本当によかった、と……)
「ご、ごめんなさい侯爵様……ただ私は……いつもと違う化粧をしたので、ついはしゃいでしまって」
(言い訳としては間違ってはいないわよね!?街へ出てみたかったのは本当だし!)
「……そういえば先程あなたは扇子がどうのこうのと言っていたな。欲しいのなら買おうか?どれがいいんだ」
「えっ!?」
(悪役令嬢につきものの扇子を、婚約破棄される(予定)の侯爵様が買ってくださるですって!?そんな事見た事も聞いた事もない……)
「遠慮はいらない。君は先程孔雀の扇子を広げていたな。でも私にはこの扇子の方があなたには似合うと思うが……」
そう言ってエルドが差し出して来たのは、孔雀の扇子よりも控えめな、両面金の施しがされた扇子に赤い梅の花が舞い散る様子が描かれた品の良い扇子だった。
「あなたの瞳に似合うと思う」
「えっ……こんな、こんな高価なものを私に?」
その扇子は孔雀の扇子よりも高価だった。
(しかも私のコンプレックスの金色の瞳に似合うですって……?この侯爵様……もしかして私の事が嫌いなのでは……?)
「もちろんあなたが好きな方を買おう」
澄まして言いながら私は自分にイライラしていた。この私が誰かに贈り物をするなど、今まではありえなかった。まったくルシア嬢はどこまで私の心をかき乱すつもりだ。
「いえ、侯爵様が選んだ方にしますわ!そっちの方が私に似合うと言ってくださったから!」
トゥンク……
いやいや、いやいや……ときめいてどうする!?冷静になれエルド・グレイシアード。
お前は鋼鉄の心を持つ、誰の言葉にも揺るがない男だろう。
(侯爵様ったら私が街へお出かけしたのがよっぽど気に食わなかったのね!よろしいわ。この扇子を事あるごとに見せびらかして、余計に嫌われてやろうじゃないの!)
「なんか……お二人ともものすごーくすれ違っているような気がするのは私だけでしょうか??」
それまでほとんど空気だったフウカの独り言が、日の暮れた街中で。誰に聞こえるともなく風に吹かれて行った……
侯爵様のトゥンク……笑
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