何を必死になっている?
エルドは自分でも意味がわからないままにルシアを追いかけてきた。
※引き続きエルド視点です。
「こ、侯爵様!?どうしてここに……」
言いかけたルシアの手首を、私は反射的に掴んで引き寄せていた。
肩に抱き寄せる形になってしまい、ルシアは目を丸くしていた。
「えっ……こっ、侯爵様……」
「しっ、静かに。あなたは狙われている」
そう言って、こちらを眺めていた男達を睨む。
「……この子から離れろ。今すぐに」
「ひっ、エッ、エルド侯爵!?何故こんなところに!?」
「……い、いいから行くぞ!」
男たちはエルドの鋭い眼光に射抜かれ、一瞬で顔色を変え、路地裏へ逃げていった。
(……危なかった)
男たちが去った瞬間、胸の底で何か重いものが溶ける感覚がした。
安堵と怒りと、どうしようもない動揺が混ざったような複雑な……
(ルシア嬢に何もなくてよかった……)
いやいや、さっきからずっとおかしい。私は何を必死になっているのだ。ルシアは形だけの婚約者のはずだ。
それでもこの腕の中の柔らかい肌を、小さな鼓動を離したくないのは何故だ?
「ルシア。こんなところで護衛もつけずに何をしているんだ。いや……それ以前に、君は……」
(君は私の婚約者だぞ)
堂々と言えばいいのに。その言葉が喉まで出かかって思わず引っ込めてしまう。
私はルシアを政治利用のコマとしか見ていない……はずなのに。
ルシアの金色の瞳が至近距離できらきらと揺れていて、続きが出てこない。
(……弱ったな。こんなに無垢な瞳で見つめられては)
「こ、侯爵様!これには理由があって、これは悪役令嬢の練習で……悪役令嬢といえば派手な化粧で派手な扇子で……」
「は?」
「い、いえ!なんでもないです!!」
そう言ってルシアは、思わず両手で自分の口を塞ぐ。
(ヒィ〜私の馬鹿!手の内を明かしてどうするのよ!!)
ルシアの言葉の意味は分からなかったが……
だが、震える手首を掴んだままの自分の方がよほど意味が分からなかった。
(他の女と同じ、だと思っていたはずだ……それが、何だ。この胸のざわつきは)
ルシアの頬がほんのり赤く染まり、息が近い。
私はようやく我に返ったように手を放した。
ルシア様笑
最後まで読んで頂きありがとうございました。




