何故か気になるあの子
エルドはルシアが市井に赴いたと聞いて思わず足を運んでいた。その理由は何故かーー
自分でもわからないままに。
※エルド視点です。
人混みのざわめきが重く沈んでいた。
夕刻の市井は、昼よりも陰影が濃い。路地裏から吹き抜ける風は冷たいのに、妙にざらついた空気が肌にまとわりつく。
「まったくあのお嬢様は……何故こんなところに来た」
呟いてハッと気付く。
……それは私もか。
私は思わず前髪をぐしゃりとした。
何故かあの子が気になるのだ……ほっとけない。
今までの私なら興味もなく好きにさせていたが。あの子は……
私はどうしたというのだろう。あの子の金色の瞳が……照れている仕草が可愛いかったから?
焦りを押し隠すが私の足は無意識に早くなってしまう。外套の裾が揺れ、従者のアキラは必死でついてきていたが、置いてきてしまった。
そしてーー
角を曲がった瞬間、視界が一瞬だけ止まる。
黒いドレス。
赤い巻き髪。
何かの舞台に出るのかというほどの派手な化粧。
孔雀の羽根扇子を目の高さでぱたぱたさせている赤毛の令嬢。
周囲の視線を浴びながら、本人だけが楽しそうにしていた。
(……何をやっているんだ?あの子は……)
その様子があまりに無邪気で、無防備で、何をしたいのかわからなくて……
ただその弾けるような笑顔が眩しかった。
私はまた自分の前髪をぐしゃりとした。なんだ、この気持ちは……これでは私がまるでルシア嬢の事をーー
その時だった。ルシア嬢と侍女のフウカのすぐ後ろに、不穏な距離で立っている男たちが二、三人……にやついた顔つきで、まるで値踏みするようにルシアを見ていた。
その瞬間、考えるよりも先に私の足は真っ直ぐルシア嬢の元へと向かっていた。
地面を蹴り、風を裂くように間を詰めていた。
「ルシア!」
自分でも驚くほど強く、しかし滲む焦燥を抑えきれない声が出た。
ルシアが振り返り、ぱっと目を見開く。まるで私がここにいるのが信じられないといった顔だ。
ーー当然だ。私も何故ここに来てしまったのかわからない。
何故ルシア嬢がこんなに気になるのかも。
何故あんなに焦燥感を露わにした声が出たのかも。
何もかもわからない。
ーー何もかもわからないのに。
ーー今は目の前の少女の存在に、安心している自分がいた。
侯爵様これもう完全に恋に落ちとるやんけ!
侯爵様視点だと文章が硬くなっちゃう。キャラに引っ張られてるのかな?
最後まで読んで頂きありがとうございました。




