深井姉弟、旅に出る。part12
一流企業に勤めるエリートに一泡吹かせてやった。
俺が3月の5日……つまり早生まれで、姉さんが4月の16日生まれ。某流石で最強の兄妹と同じということだ。
「ただいま」
「おかえり那知」
姉さんはベッドに寝そべりスマートフォンを弄っていた。どうせネットサーフィンだろう。
湯布院で温泉に入っていた姉はそのまま館内着に着替えていた。ラフな格好でゴロゴロするのは至高の行為である。
改めて姉に対して綺麗な女性という認識はない事を自覚した。姉はどこまで行っても姉なのだ。
「ふぃー」
ベッドに倒れ込んだ俺は歩き疲れたからか変な声を出してしまった。
「そんなに歩き回ったの?」
「いやぁ?本当にすぐそこまで行っただけ」
「じゃあ今日一日色んな所に行った疲れが出ちゃったんだね」
思えば激動の1日だった。今更姉弟で遠出なんて無いと思っていた。
冷戦とまではいかないがそれなりに仲は悪かった。もしかするとお互いに心のどこかで歩み寄るきっかけを探していたのかもしれない。
「じゃあ私ホテルのマッサージ行ってくるから先寝てて。おやすみ〜」
自由奔放だなこの人は。
「あぁ……おやすみ」
そうして俺は力尽きるようにして眠りについた。
姉離れを意識したのはいつだっただろう。小学生の頃は同じ学年である以上、家族としての姉ではなく友達として接していたようなイメージがある。
となると中学生頃だろうか。あの頃の俺は厨二病全開で思い出したくも黒歴史の真っ只中に居た。孤独を愛し、この世の全てを憎んでいた……というのは建前でただ友達が出来なくてグレた。姉も音坂榛名も別のクラスで完全に詰んでいた。
前髪が長く完全に陰キャの極みでコミニュケーション能力も低かったため厨二病だったということにした。
しかし周りとの付き合いに割く時間が無い分、小説を書くという能力を向上させたのは間違いない。
俺と姉は中学も高校も近所の公立に通っていたのだが、明るく社交的で絶世の美女とまでは行かないが芸能人顔負けの美人の姉と教室の端で小説を書いてるようなオタクが姉弟だと思われた事は殆ど無かった。
一緒に帰宅なんて小学生の頃に卒業していたし、クラスが同じになることが一度も無かったのが要因の一つだろう。
友達にからかわれたり、親がどうこう言った訳では無い。なのに俺は何故姉から離れたかったのだろうか。
「ん……あぁ……」
目が覚め、伸びをする。
カーテンの隙間から光が差し込み、今が朝なのだと実感させた。
「姉さん……は居ないのか」
隣のベッドで寝ていると思われた姉は姿を消していた。朝ごはんでも食べに行ったのだろう。
時刻は八時。早すぎず遅すぎずのいい時間だ。
さて、今日はどこへ行こうか。
そんなことを考えてながらスマホを起動させると、姉からLINEが来ていた。
【悪い。先に大阪に戻る】
「うっそだろ……」
やっぱり姉は嫌いだ……。




