深井姉弟、旅に出る。part10
ある日私と那知でとある雑誌の取材を受けた。今回のコラボ小説の執筆にあたり、私と那知が実の姉弟であることが公になったのだ。二人で並んで座り笑顔で撮影に応じた。いや、その時那知は笑っていなかったかも知れない。というのも私は未だにその雑誌を読んでいない。似ていない私たち二人が姉弟のように写っているだろうか、それが読者の目に姉弟であるかのように映っているだろうか。考えるだけで不安でしかない。
どうして私は那知と姉弟であることにそこまで拘るか。それは果てしなく愚問だった。
「この後殺害予告を受けるの俺なんだけど」
「ごめんごめん」
他人の金でピザを食いながらも俺は不機嫌だった。
「それに姉さんのセンスもどうかしてる」
姉は注文しておいたデリバリーピザと共にスタバのダークモカチップフラペチーノを持ってきた。ピザとコーラのハイカロリーコンビに代わる新たなハイカロリーコンビだ。需要があるかは分からない。
「美味しいしいいでしょ?」
否定しない。ベースはコーヒーみたいなものだし、意外とピザの生地との相性もいい。
「美味いけどこの後炎上するのかと思うと味が薄く感じられる」
姉のせいで胃が痛い。前に受けた雑誌の取材で姉の顔が世間に広まった。その時に姉は可愛すぎるラノベ作家という事で話題になった。そんな姉が呟いたかれぴっぴとホテルなう、それがどのような形で被害を受けるのか、想像に容易かった。
「可哀そうだよね。那知も十分カッコいいのに」
十分カッコいい(√2点)。どうせその程度の評価、つまりお世辞だ。
そもそも自分は容姿が評価されていることを知っているのにあの呟きはどうかと思う。
加賀美咲ではなく深井友紀那のファンがいるかも知れない。それがあり得る程ネットを騒がせた。
「はぁ……」
今日も溜息が止まらないな。
「めちゃくちゃ寒いな……」
姉をホテルに残し、ここからは単独行動だ。ホテルが博多駅から歩いてすぐという場所にある為こうして夜の博多駅に来てみた訳だが寒すぎる。10月とはいえ流石に夜は冷える。当然と言えば当然だ。
こういう日はホットコーヒーが美味い。適度な苦みが俺の体を温めてくれる。さて、どこに行こうか。
ピザを食べたのもあってあまり空腹ではないのだが、福岡に来て一日目だ。やっぱり何か食べておきたいところ。財布に余裕もあることだしタクシーでも使おうか。美味しいお店知ってそうだし。
「そうと決まれば」
俺の足はタクシー乗り場に向かっていた。
「すみません財布落としましたよ」
不意に後ろから声をかけられて振り向く。
「あぁすみません俺のです」
どうやら財布を落としてしまったらしい。普段はジーパンを穿かないせいでポケットが浅いことに慣れていない。これからはリュックにしまっておこう。
「あれ、もしかして……」
「なんでしょうか?」
財布を渡してくれたサラリーマン(見た目は二十代前半くらい)と思われる男性は俺の顔をじっと見つめてきた。俺の顔に何か付いているのだろうか。
「加賀……司先生ですか?」
姉の影響で俺の顔まで広まっているらしい。




