深井姉弟、旅に出る。part9
血の繋がった姉弟。
血の繋がっていない姉弟。
さて那知がどちらに分類されるのか。
その答えを知っているのはもう私と母親しかいない。
しかし那知がその答えを知った時どう思うだろうか。
本物の姉弟であることを伝えるべきなのだろう。
本物の姉弟愛がそこにあるはずなのだから。
俺のスマホが振動したのはその直後だった。
「もしもし……」
『司君。同じ部屋だからって変な事しちゃダメだからね』
姉と変な事なんてとんでもない。第一このホテルを取ったのは片瀬さんだ。親睦を深めろと言い部屋を一つしか取らなかった癖に。
「どこからどう見ても普通の姉弟じゃないですか。変なことなんてする訳がないないでしょ」
深井那知と深井友紀那ほど平凡な姉弟はいない。
『……そうね。さっきのは忘れて』
何だよその間。
「私ちょっと出てくるから。留守番お願い」
そう言って姉が退室し、俺一人に。
『ねぇ司君』
「何ですか」
『もしこのコラボ小説が上手くいかなかったとしても私はそれでもいいと思うの』
突然何を言い出すんだこの人は。
『あなた達が姉弟である事に最初気が付かなかった』
「……」
片瀬さんの言う最初、というのは俺が初めて出版社に赴いた時のことだろう。父親の車に乗せてもらって東京まで行っていた頃が懐かしい。無口な父親も少し楽しそうだったのを覚えている。
『あの日隣でよしこちゃんと打ち合わせをしていた人が司君のお姉さんだって知った時は驚いたな』
その言葉が一体何を意味するのか今なら分かる。
『本当にあなた達姉弟は姉弟に見えなかった』
それはそうだろう。似てないし。
『似てないのもあるけど……雰囲気が圧倒的に別物だった』
「雰囲気?」
『あの時の司君世界の全てを憎んでいそうだったじゃない?』
「その話はやめて下さい!」
勘弁してくれ。黒歴史なんて誰にでもあるだろう。
『対して加賀美先生はこの世の全てを愛していた』
「……」
間違いないな。あの人に嫌いなものなんて無いと言っても過言ではない。ただし俺を除いては。
『そんなあなた達がこの旅行で本物の姉弟になろうとしている』
そこまで俺達が姉弟に見えなかったのか。
『それだけでこのコラボ企画というものに意義があったんじゃないかって思うの』
「俺は……少なくとも俺達は成功のために全力を注ぐ。それだけです」
『そうね……私もよしこちゃんもサポートするから。頑張りましょう』
たまに良いこと言うなこの人。
『それはそうと、司君ツイッターってしてる?』
「ツイッターですか?してますけど……」
何となく嫌な予感がした。あの時に似てる。
『加賀美咲で検索してみると面白いかもよ。じゃあ私は用事があるから』
そう言って切られた。一体何なんだ。とりあえず検索してみる。
「ただいまーピザ届いたよ」
「なんだよこれ!!!」
さっきの写真がアップロードされていた。かれぴっぴとホテルなうという爆弾発言を添えて。




