93.少量の毒は体によい。
バンッ...
早朝にクライフさんが迎えに来た。
「おはようクライフさん」
「出発が早くて悪いな。さあ乗って」
車に荷物を積み込んで西ノ森へと出発。
俺は到着まで少し眠ることにした。
彼は稼いでいるし無駄にガチャを引かないから
揺れの少ない高級車に乗っている。
とても快適だな。
「そろそろ到着だレオナルド」
「うぅ...あ、もう着いたんふぁあ...」
昨日までの疲れで完全に寝落ちしていたから
瞬間移動したような気分だった。
村に車を停めて徒歩で森に向かう。
途中でクライフさん手作りの昼飯を食べてから
西ノ森野生植物研究所へ。
パカ...パッカ...パカ...パッカ...パカ...パッカ...
パカ...パッカ...パカ...パッカ...パカ...パッカ...
「ウマそうなモリジカだな」
「だめっ!お友だちなんだからっ!」
素通りしたポッカリ草原から
カレンの後をつけてきたモリジカの群れ。
ちゃんとカレンのことを覚えているようだ。
「子鹿は肉が柔らかくてー」「わぁぁぁ!!!」
「香草のバターソテーだな」「やだぁぁぁ!!!」
わざとからかっているのか
次々とモリジカ料理を列挙するクライフさん。
カレンは耳を塞いでワーキャー言っているけれど
実際にモリジカは美味しい高級食材である。
パカパカパカパカパカパカッ.....
クライフさんの言葉に殺気を感じたのか
カレンのただならぬ悲鳴に驚いたのか
モリジカ達は一斉に草むらへと逃げ帰っていった。
「そんなに怒るなって。ただの料理人ジョークだ」
「むぅ!絶対に食べないでよっ」「はいはい」
その薄っぺらい返事に不安を覚えるが
所詮この世は弱肉強食だ。
強いものが喰い、弱いものが喰われる。
どこかで聞いたセリフの桶売りだけども。
さて、そろそろ研究所が見えてくる頃か。
木々を抜けると広いガーデンに人影があった。
教授とブルーが屋外研究をしているようだ。
「サンプルをもう少し蒔いてくれないか」
「成長速度はどうしますか教授」
「そうだねぇ...なるべく細胞分裂させずにー」
ニョキニョキ...
彼女が土に手をかざすと植物の芽が伸びてきて
あっという間に豆のような実をつけた。
これも彼女の能力なのか。
「それはミルク豆ですね」「おや?」
研究の手を止める教授。
とても不思議そうな顔をしている。
「教授、今朝も客人が来ると伝えましたが」
「ああそうだった。どうも」
土まみれの右手を差し出す教授。
さすがのクライフさんも苦笑いして戸惑ったが
すぐブルーに嗜められた。
「教授、マナーと衛生管理がなっていません」
「おっと...これは失礼 (ゴシゴシ)」
ブルーが渡した葉っぱを両手で擦って
手を洗うような仕草をする教授。
ムクムクと泡になって泥汚れは綺麗に落ちた。
殺菌作用のある植物の葉なのだとか。
「触ってみてカレン」
「うわぁ〜!しっとりモチモチしてるぅ!」
女子達のテンションがあがった。
女神や精霊は美しい存在であるにも関わらず
美意識が高いから美容には熱心だと聞く。
(透き通る白いモチモチ肌なのに...)
なにもしなくても綺麗だと思うけど
きっと男の俺には理解できない次元の話だ。
「はじめましてクライフ。私はブルーム」
「よろしく頼むよ。薬草には詳しくないんだ」
さっそく研究所の中に入って
教授を質問責めにするクライフさんだけど
自分の分野だから教授も嬉しそうに答えている。
オタク談義は夕飯の時間まで長く続いた。
「君がこの子達を助けた精霊なんだって聞いたよ」
「今晩は礼も兼ねて料理を作らせてくれ」
マイ包丁(武器)を取り出して
手際よく調理を始めるクライフさん。
教授から聞いた薬草の毒抜きを試しているけれど
毒抜きが必要な時点で食べるのが怖い。
「そう怖がるなって」
運んできた鍋の蓋を開ける。
薬草の香りが強烈で鼻がもげそうだったが
食べてみると苦味とかは全然なくて
癖のあるモリシシ肉の臭いも見事に消されていた。




