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92.お礼はすぐに伝える。

寝る前にログをチェック。

カーラに貰ったアドレスにアクセスする。


本垢は色彩に溢れていて芸術的な雰囲気だが

サブ垢では女子達から“ディーヴァ”と呼ばれていた。

彼女のファッションやネイルが好評なのだ。

本物のディーヴァ(神々しい存在)だけど。


それからもう一つのアドレスを覗く。

(マハト...カーラのマスターだ)

魔法省防衛局所属のガーディアン。

彼らは事件や事故、災害から街を守る為に

政府から派遣される特別な存在。


最近赴任して来たようだが

この街は魔術の名家ウィンザーが守っている。

別にいなくても支障はないと思うし

俺は役人が少しばかり苦手だ。


とりあえずカーラのログだけフォローして

端末の画面を静かに閉じた。

はしゃぎ過ぎたカレンは隣で先に眠っている。


(へんな名前だな...マハト)


いかにも役人。

いかにも厳しそうな顔をしていた。



日付が変わって金曜日。

いつものように出勤して店内に入ると

今日は南国のように暖かかった。

つまりはそういうことだな。


「おかえりケニー。魔力風邪は大丈夫?」

「見ての通りっ!あの泉に浸かってから絶好調よ」


療養の旅から帰ってきていた。

回復の泉に毎日浸かった効果なのか

前よりも魔力が増した気がする。

ヒーターの熱がやけに暑い...


「みてよコレ!到達証明書を貰ったわ」


一緒に付き添ったマリーは誘惑に勝てず

ケニーを残して遺跡に登っていた。

申請を出してからクライミングに挑戦すると

公式記録として認められるとかなんとからしい。


わいわい...

事務所に置かれたお土産のお菓子を

リンダと事務の女の子達が嬉しそうに選んでいる。

俺もなくなる前にと一つ貰っておいた。


「あ、そうそう。レオナルドに渡さないと...」

「部屋から持ってくるわね」


ケモミミ族から預かり物があるのだという。

(なんだろう...ちょっと期待)


上にある自宅へと取りに行ったケニー。

以前は建物の店部分だけを借りていたけれど

今は彼女が建物ごと買い取って三階に住んでいる。

...戻ってきた。


「はい、コレを渡すように頼まれてたの」


ケモミミ母からの手紙だ。

長いロール紙に毛筆で書かれていた。


“先日は夫と子供達が大変お世話になりー”

“私も不在で申し訳ありませんでした”


あれから勇者(元)と奥さんで

四階に残したポヨポヨは討伐された。

水不足も急速に回復して

地下の水瓶も元の水量に戻ったそうだ。

良かった良かった。


ニトのことに関しては納得していないようで

勇者(元)に対する愚痴が長々書かれている。


“危険な旅を許可するなんて信じられません”

“母は心配で心配で...”


俺に言われても何とも言えないが

彼が母の帰りを待たずに旅立った理由は

間違いなくこの過保護な性格が原因なのだろう。

実家に似たような人がいるから理解できる。


それとは別に重要な話が書かれていた。

まだ確定ではないからと挨拶だけだったけれど

俺はその提案を受け入れるつもりだ。


それからみんなで最後の夜に撮った写真と

会えなかったケモ母と残りの子供達も写った

家族写真が同封されていた。


「アンタの上司って言ったら大歓迎してくれたの」

「綺麗でとても良い人よ。お酒も強いし」


シャノというのがケモ母の名前。

仲良くなって毎晩酒を酌み交わしていたそうだ。


(純血だからケモ度も高いし色々と露出度も高くて)

(勇者が落とされたのも無理はないな...)


「魔術風邪とか言って酒呑んでたのかぁ?」

「俺達が一生懸命働いてる間にいいご身分だぜ」


配達を終えたウィッドが冗談交じりにやっかむ。

でもいつも休みなく働いているのだから

少しは羽を伸ばすことも必要だ。


「じゃあ俺達も酒盛りといくかぁ〜!」

「イイっすねっ」「自分も行きます」


今日の分の荷積みと配達を終わらせて

男衆は昼間から酒場に繰り出していった。

酒の話を聞くと飲まずにはいられなくなるのは

アルコール依存症の始まりだと思う。


「あんな大人になっちゃダメだからね」

「さあ、レオナルドもカレンちゃんも上がって」


彼女がいると仕事の効率が全然違うから

早く家に帰ることができた。

明日からの二連休はクライフさんと西ノ森へ。

出かける準備をしないとだな。


(その前に...)

みんなで撮った写真を居間に飾る。

それからシャノさんへの返答はどうしようか...

あんなに丁寧な手紙を貰ったことがないから

俺は少し困ってしまった。


「礼状・返信・書き方・マナーっと」


パチパチ...カチ...

シャノさんはネットをしていないし

本当は同じように手紙で出すのが正解なのだけど

密林までは封書だと日数がかかるから

イトに頼んでメールで手紙と写真のお礼を返した。

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